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第六話「凍る世界with流氷教室(絶対零度の自己紹介)」


 入学式は特に何もなく閉式しました。

 なんか校長先生から怯えたような印象を受けたけど、ヤッパリ人前に立つのって緊張するのかな?






 教室に帰って皆と話をしてる時にドアが開いた。

 ガラガラッと音がしたからそっちを向くと人が二人入ってくる。

 その内一人は大きな何か、多分机だと思うけど、を持っていた。

「え〜っと、じゃあ、取り敢えず、何処かに席を置こうか?」

「ハッィ」

 少しノンビリした男の人の声に、男の子?が息苦しそうな返事をする。

 アレ?この声、スゴく最近聞いたような気が………?

 男の子は窓際の一番前に机を置いた。

 男の子が席に着いたのを見計らって教卓の前にいた人が話し始める。

「え、え〜っと、皆さん、全員、取り敢えずちゃんといますか?」

 かなり若い声だ。

 きっと先生なんだろうけど、どこか頼り甲斐がない。

 一番前の席に陣取った男の子が挙手をして先生に言った。

「東龍輝が、出席番号二番の東龍輝がいません」

「エ?ア、クッ、ウ〜、き、そうなの?じゃ、じゃあ、取り敢えずどうすれば……………」

 狼狽した先生を助けるようなタイミングでまた扉が開いた。






 なんとか復活した俺は自分のクラスへ急ぐ。

 入学式は出れなかったけど、流石に最初のホームルームには、なんとしてでも出たい。

 軽く深呼吸して、己を奮い立たせ、扉を開けた。

 朝の再現のように、集中した視線が一瞬で逸らされる。

 しかし少しだけ神様からのプレゼントの如く幾らかの、嬉しい相違点があった。

 なんと、三人程この俺から目を逸らさない人間がいた!

 今朝会った美女と先生(ノリがパリッと効いたスーツを着ているから先生と判断。顔はマンマ学生だけど)と喜一だ。

 いや、ホント、メッチャウレシイ!

 目線を合わしたまま逸らさないなんて、最近は親を抜けばそこにいる喜一しかいなかったから、それが三人に増えて嬉しさ三倍だ!

 って、喜一!?

 何故にこの場に喜一が!?

 俺の顔を見て喜一が、考えてる事が分かったのか、片手を挙げながら言う。

「ヨッス!校長と話しつけて、このクラスに来てやったぜ!」

 アリガトウ校長!

 アンタ最高だ!

 そして喜一ホント、アリガトウ!


 絶望色だったお先がほんのり明るくなった。


 今にも踊りだしそうな龍輝に先生が話しかける。

「東くん……………だったかな?取り敢えず席に着いて欲しいんだけど?」

 気の弱そうな面した先生が、俺を上目遣いに近い感じで見ながら言った。

 「遅くなってスイマセン」とわびを入れつつ自分の、前から三番目になった席に座る。

 俺が席に着いたのを確認し、頷いた後、先生が話し始めた。

「え〜っと、取り敢えずこれで皆さん、全員が揃いましたね?」

 その問い掛けへの返事はない。

 お構いなしに先生は話し続ける。

「え〜っと、取り敢えずこのクラスの担任する事になりました、南都成才なんとなるさ22歳です」

 若いな!大学卒業して即この高校に就職したのか?

「取り敢えず皆さんに自己紹介をしていってもらいましょうか。じゃあ、取り敢えず出席番号順にいきましょう」

 それは困る!!心の準備が!

俺は勢い良く挙手し、名指しされる前に喋った。

「先生!心の準備が出来てないので、順番を変更してください!」

「そうですか。心の準備が…………。では、取り敢えず一番の方から順番に」

「ウォイ!!」

 聞いてない!!!

 コイツ、何がなんでも自分のプランは曲げない気だ!!!

「分かりました。取り敢えず一番の方、前に出てユックリで良いから長く話してあげてください」


 言われた一番の女子が前に立つ。

 尤も、龍輝は考えるのに必死で何も見てはいなかったが。


 ヤバいヤバイやばいヤバいやばい!!!!!!!!!!!!!!!

 脳内シミュレーションが上手く再生出来ん!!

 ヤッベェ!

 マジでヤッベェ!

 ヤバいしか言えねぇ位ヤッベェ!!!!


 龍輝が語彙量の底を露見している間に前の女子の自己紹介は終わってしまった。


 ………アア!畜生!!もう俺かよ!!!S・H・I・T!!!!


 確実に何かを呪いつつ、龍輝は教壇に立つ。

 当然、何かを呪うに相応しい表情で。



 そして氷の惨劇は花開いた。






 タッチャンが教卓の前に立つ。

 何?

 そのどっかの覇王顔負けの、気迫に充ち満ちた顔は?

 ワザとなら馬鹿だし、天然なら救い様がない。

 100%後者だと思うけど。

 そしてなんで目が血走ってんの?

 ウサギなら可愛いけどタッチャン(龍)の目が血走ってると化け物チックで恐ろしいよ?

 全員の顔を隈無く見渡した後、自己紹介を始める。

 何かアレだね、アドルフヒトラーの演説を彷彿とさせるね。

「僕の名前は東龍輝デス」

 ストーップ!!

 なんで最後だけカタカナになってんの!?

 しかも、声がまるで地っていうかそれよりさらに低くて完璧に、恫喝する[やのつく自由業]の方だから!!

 緊張してるのは分かるけど、そいつぁ頂けねぇぜ、タッチャン!

 なんで他の人がDEATHを想像する事言うの!?

 ホラよく見て!次に言う事を悩む暇と時間があるなら、クラスの皆の表情を見て!

 冗談抜きに、俯いたら殺されるっ!!みたいな脅迫観念に駆られちゃってるから!

 学校特有の浮ついた空気が逃亡しちゃってるから!

 張り詰めてて、そのテンションが奏でる音色が幻聴で聞こえ始めたから!

 僕の耳にピーンピキンって、木霊してるから!

 お願いだから気付いて!

 そんな僕の念も虚しく、タッチャンは次なる紹介を話し始める。

「この高校には空手のスポーツ特待生として入学しました。趣味は可愛がる事です」

 らめぇ〜〜!!!!!

 それだけはらめぇ〜〜!!

 なんてトコとトコを組み合わせてんのさ!!?

 その極悪なニヤリ顔だけはチョイスしちゃダメだろ!?

 僕だからそのニヤリ顔が微笑もうとした努力の結果だって分かるけど初対面の人間からしたら、獲物を差し出せや、って脅迫されてる!!!みたいに受け取っちゃうから!!

 タッチャンに余裕がないのは重々承知だよ?

 きっと喋り方と俯かないのを意識してるんだろうけど、顔とか声とか内容とかに気をつけよう!?

 僕が悶えてるのを尻目に更に喋り続ける。

「可愛がったものは皆例外なく壊れていますが、これだけは止められません」

 モウ、イイ!!!!!(以下、反響)



 緊張して言葉が足んなくなるくらいならいっそ喋るな!!

 どうして寝ぼけて叩き壊すとか父親に叩き壊されるとか言えない訳!?

 絶対誤解したよ!?

 まごうことなく誤解されたよ!?

 ワザと?

 ねぇ、ワザとなの?

 応えてよタッチャン!!


 天然なんか滅んでしまえば良いのに!っと喜一が頭を抱えようとしたタイミングで――――


「好きな物は甘い物だけど…………なんか文句あっか?」


 喜一は頭を机に強かにぶつけた。


 なんでそこで、何か質問したい事はありませんかの部分で地に戻っちゃうんだよぉ!!!!

 っと叫ばなかった僕は表彰されるべきだと思う。


 …………質問はないのか?

 ン〜、少し分かり辛かったか?

 前で考え考え喋ってた所為で支離滅裂だったとか?

 ウワ、ソレはちょっとヤベェぞ。


 と、ものの見事にずれた問題点に頭を悩ませる龍輝。

 よくご覧なさい。

 強張った顔を必死で貴方に向ける級友を。


 その時あの美人が申し訳なさそうに手を挙げた。

「趣味が分かりにくかったんですけど……?」

 …………趣味?そんなもん話したっけ?

 まあ、答えとくか。

「え〜っと、趣味は可愛い物とかを集める事で今の所は…………」

 熊太郎は粉骨砕身、ゾウゾウくんは火葬、ピヨ太は巣立って……………。

 皆どっか逝ってる!!?

「あ〜、また太一にクレーンで取って貰おうかな?今の所は誰も居ないです」

 他の質問は無い様なので自分の席に戻る。

 よく考えてみれば俺の自己紹介に質問がきた。

 まさかシュミレーションの最高のやつが出るなんてな。


 龍輝はポーカーフェイスを保つのに必死で、喜一が突っ伏してる事に気が付かなかった。






 周りの視線を感じる。

 どうして私を皆見てるのかな?

 もしかして私、自己紹介の番が近いから、巷で噂の自意識過剰になってるのかな?

 ウン、きっと私の気のせいだよね。


 彼女は周りの、勇者を見る目を気のせいだと軽く流した。


 自己紹介、頑張るぞ!!

私は随分御無沙汰だった学校生活の、最初の第一歩の為にポッペを叩いて気合いを入れた。

 だから、これは気のせいよ、私!


 やはり彼女は周りの驚いた顔をサラッと流した。


 焦らずにゆっくりと教壇に上がる。

 こういう時にはこの目は便利だ。

 こっちを見てるかどうか分からないから緊張しない。

 大きく息を吸った後、私は自己紹介を始めた

「私の名前は咲花舞美です。出身はこの近くで、この高校には自宅から通ってます」

 予め考えておいた事を、速過ぎないように心掛けて喋る。

 一呼吸入れた後、続ける。

「私が目を開けていないのは、私の目が見えないからです。原因は不明です。でも、この髪飾りのお陰で見えているので大丈夫です。好きな教科も苦手な教科もありません。趣味は読書とヌイグルミを集める事です」

 流石に息が切れたので、その息を整える。

 後少し!!

 私は意識的に笑顔になって、最後の一言を付け加えた。

「何か質問はありませんか?」


 素晴らしい速度で男子勢の手が挙がった。

 空気を引き裂く音と共に。


僕に愛の手(感想)を!!!!

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