第五話「トイレの○○○○とコンタクト」
更新がメチャメチャ不定期でスイマセン。
おこがましいと重々承知ですが、感想・評価・応援の程を何卒宜しくお願いします。
トイレ(個室)
「ヴヴヴ、ギッグ。ヴヴヴヴ、ズズッグゥ」
バイブではありません。
泣き声を押し殺した龍輝の声です。
おどろおどろしいを体現しています。
こんなのありかよ、中学よりヒデェじゃん!
周りの壁が、不可視の壁が実体化してたじゃん!
初めてだよ、メシア(救世主)みたいな事体験したの!
龍輝はそのまま始業式に行かずに泣き続けた。 もっとも、始業式の事など頭から抜け落ちていたが。
始業式(体育館)
「龍輝は何処だ?」
体育館の何処にもタッチャンはいなかった。
グットニュースを伝えてあげようと思ったのに。
何とか校長と話をつけて、二組になる事が出来たのに(顔写真を見せて煽れば一発だった)。
その時、団子状の一団が新たに体育館に入って来た。
どうしよう、こんな風に固まってたら迷惑だよね。
でも、そんな事皆に言って、嫌われたら嫌だし、ホントにどうしよう。
咲花舞美はどうするべきか分からなかった。
その時天の助けとも言える声が聞こえて来た。
「オイ、楽しそうにしてるトコ悪いがな、邪魔だ。散れ」
その声は男の子だと思うけど、少し高くて、でも本当に苛々してるのが分かる声だった。
「それと、ここ何組だ?もし二組なら東龍輝は何処にいるか知らないか?」
ここは二組だけど、そんな名前の人いたっけ?
私の疑問を代弁するみたいに空野さんが言った。
「東クンなんて二組にはいなかったと思うけどどうしたの〜?」
少し、何だろう?
ネットリとした?声を空野さんが出した。
対する苛々した男の子の反応は御世辞にも柔和とは言えなかった。
溜め息でも吐きそうな風に喋る。
「クラスの人間の名前を知らんのか。背が高くて、怖そうで、序に言うとかなり繊細なヤツだ」
顔は分からないけど、背が高くて繊細な人…………あの人かな?
私が見当を付けてる間に肌に感じる位、体感温度が下がった。
アレ?皆どうしたの?
「東クンってもしかして…………」
「思い当たるヤツがいたんだな。多分そいつだ。どこにいる?」
「さ、さぁ?カバンを置いたら、どっかに行っちゃったから」
空野さんが言い淀みながら言った。
「悪いけど…………自分の席に行くね?」
そういうとそそくさと行ってしまった。
ソレに追随するみたいに他の人も自分の席に行く。
皆の変化に付いていけず、取り残されてしまった。
なんで急に皆、急ぎ出したんだろ?
私が首を傾げてると男の子が話し掛けてきた。
アチャ〜。
話を聞こうと思ってたのに、苛々してたら逃げちゃった。
こんな性格じゃなかったんだけどなぁ。
やっぱり喋り方とか結構影響するんだ。
まあ、良いや。
一人残ってるし。
「お前は?お前は龍輝がどこに行ったか知ってるか?」
「え〜っと、その、よく分かんないんですけど、トイレかな?何か、何かすごい急いでるみたいだったし、カバン置いたら我慢し切れなくて………と思うけど?」
惜しい!所々合ってるけど、でも遠い!!
顔をよく見てみれば、いやよく見なくても美人な人だった。
100人いれば100人全員が好意を持つだろう美人だ。
但し……………
「なんで目を閉じている?」
何故か美人は目を閉じていた。
こう聞いてみても開ける素振りは見せなかった。
ま、どうでもいっか。
「エ?あ、コレ?これはね」
大した抵抗もなさそうに自分の目の事を彼女は話し始めた。
「私、目が見えないんですよ。子供の頃は、見えていたんですけど、小学………三年生の時に急に見えなくなってソレからはずっと」
自身に関する重い話なのに美女の口はどこまでも軽く、そしてためらいがなかった。
無機質に感じられるほど。
「でも、お父さんがこの髪飾りをくれて」
そういうとその美女は黒髪に同化してるカチューシャを触った。
真っ黒で大きな三日月みたいなカチューシャだ。
黒曜石みたいなソレは美女にピッタリだった。
「これがあるとね、骨組みみたいに周りが見えるんだ。だから、ちっとも不自由じゃない」
何で無機質に見えるか、分かった。
彼女がその部分の心を凍結して、変化しないようになってるからだ。
そう思った時には既に僕は話し始めていた。
「止めたら?そういう、誰かの為に凍らす必要のない自分の心を凍らせるの。キミのやってる事は欺瞞だよ?ソレも誰も得しない、見え透いた、キミに関わる全ての人を傷付ける最悪の嘘だ。初めてキミと会った僕ですら不愉快なんだ、他のキミに近しい人間なら不愉快じゃ済まない。キミは良いかもしれないけど、周りはキミが素直に生きてるよりずっと傷付くんだ。きっとキミ、下手な暴言よりも誰かを傷付けてるよ?」
言い切ってから、マズい、と思った。
言い過ぎた。
でも、前言撤回やさっきの言葉を翻すような事したくない。
おかしいな。
僕初対面の人にキツい物言いするような性格じゃないんだけどな。
ホントにおかしい、と僕は内心首を傾げた。
気まずくなった僕はサッサと会話を切り上げる。
「ゴメン。僕にこんな事言う資格ないよね。……………じゃ、僕自分の席に戻るから」
回れ右をした後に、僕は言っておきたい事を思い出した。
もう一度回れ右をする。
「あ、後、モシ本当にタッチャンが怖くないなら仲良くしてあげて欲しいんだけど。タッチャンは普通に紳士で良い人だから」
言い終わった僕は心持ち早歩きでその場を離れる。
離れてる最中に僕は、話し方が地に戻っていた事に気付いた。
賢い事を自認していた喜一にとって、それは初めての事だった。
ホントのホントにおかしい。でも、悪い気はしない………。
なんでかな?
一番書くのに苦労しました。