表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
99/123

真実を見つけ出すために。 ~外伝~






 強き竜達は思った。






 「...アース、私に教えてくれ。

『人』とは一体なんだ...何のためにあんなの創ったんだ?

現状は生かしておくほど彼らに魅力は感じないし、弱すぎだろー」


どこかの森の中で巨龍と幻龍が話をしていた。


「そんな事言うなって...確かに『人』なんて弱いが助け合って生きてんだ。

面白い事があってな、『助け合う』ってのは俺たち竜族とは違うんだ」


幻龍は飽きたような素振りを見せながらも、聞いている。


「もったいぶってないで教えてよー、最近暇すぎるんだよ...本当に。

ちょっと永き眠りにつこうかなって思うほどにね...」


巨龍は笑いながら、


「俺たちはいざとなったら怪我した仲間を見捨てたり、死んだ仲間を

食ったりもするがな...『人』ってのは『諦める』という事を知らない。

怪我人さえも見捨てねえのがほとんどなんだ、びっくりだろ?」


そう言い放つ。

その言葉に幻龍は目を見開き、


「...馬鹿な生き物だな...そんな事して皆死んだらどうすんだー」


と呆れた様子だ。


「死んだ奴らは土に埋めたり、いい意味で言えば仲間想いすぎるわな。

そういう面は竜族も見習わければならないって王様は言ってたぜ?」


巨龍のその言葉に幻龍は返答さえせずに、どこかへ飛んで行った。


「...あいつは本当にマイペースすぎるわ、俺は神だぜ!?

もう1000年生きてんのにまだまだ子供だなー!

それもそうか、あいつは俺達の」


呟いていた巨龍の耳に突然何かが聞こえてきて、口を動かすのを止めた。


「...おう?王様がわざわざ来たかー?」


そう言いながら後方を振り返ると、そこには一体の龍が佇んでいる。


「久しぶりだ、アース。

だが元気ならそれでいい、我は様子を見に来ただけだ。

いつ神の心に宿りし、忌まわしき龍共が騒ぎ出すか分からないからな。

...たまには様子を見に来ておいたほうがいいと思ってな」


その龍は全龍オール・クラウン。

彼の発言からしてこの時代は現代よりも前、神龍大救出戦よりもずっと

前だと分かる。

アスルペが1000歳ということは、レイディアができてからまだ

1000年しか経っておらず、もしかしたらまだこの世界は創り直される

前なのかもしれない。


「...そりゃあ、ご苦労なこった。

アスルペが飛んでったのは王様が来たからかー!

あいつまた逃げたんだな?」


そう問うと巨龍は大袈裟に笑う。


「...我の説教は不要らしいがマイペースすぎるのは直してもらいたい

ものでな、今追っているんだが...あの子に風を与えたのは間違いだった、

速すぎてとても追いつけん...」


王の疲れたような表情に巨龍の笑いは止まらない。


「...アスルペとは2時間ぐらい話してたぜ?

お前が来るまで休憩がてらに俺と話しに来たんだな...神を暇つぶしに

使えるのはあいつしかいねえな。

...あ、そのアスルペの事なんだがな?『人』が好かないようで、何で

創ったのか聞いてきた。

王様の意見も聞いておきたい、答えてくれねーか?」


真剣な表情で王へ問う。


「...好かないというのは共通点が見つからないからだ。

生き物とは共通点の多い存在に親近感を抱くらしい。

人と竜では歩き方、食、思考、何もかも違うだろうからな...だが竜よりも

素晴らしいと思うのは仲間想いな面だ。

おそらく我達が創った命の中で人間のその面は断トツであろう。

だが時代の流れはその面を人間達から奪いつつある...嫌な流れだが、

我は人にこの世を任せたのだから手は出さん。

彼らが自分で気付いてほしいものだな。

...集団で助け合って生きるのは悪くないのだが、そういう生き方の場合

リーダーの意見が全てになってしまい、それは個々の意志が必要ないと

言っているのと同じだろう?

それでもリーダーが間違った選択をしてもついていくような者じゃなく、

きちんと意見のできる生き物であってほしいと我は常に思っているんだ。

力で争うのは人よりも知能の劣る生き物だけでいいが、知能のある優秀な

生き物である人には力だけじゃなく、違う解決方法もあるんだと我達に

意見してほしいと期待して創ったのだよ...さて、我はアスルペを追う。

達者でな、じーさん」


そう言い、王は幻龍に追いつくために飛び立つ。






「...俺でじーさんならお前もじーさんだろうが...にしても神に

愛されし生き物、知能のない生き物を救うための存在、それが人...」


 巨龍は呟くと森の奥深くへ戻って行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ