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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
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希望の風。






死なない限り、成長は止まらない。

生きたいと思う事、それは自分自身に限界を決めつけてしまわない事で

あってほしいと。






「...グレム!今は敵わないでしょ...死にたいの!?」


騎士兵達が迫っているも、グレムに追いつき、彼の背へ手を

かけた。


「...止めんな!俺は騎士兵のグレムだー!」


初めてグレムはサクリを睨む。

サクリは予想外の反応に一瞬怯むも、


「そんな事分かってる!今はおふざけなんてしてらんないの!

早く逃げなきゃ、死んじゃうでしょ!?」


グレムの腕を掴んだまま、彼へ怒鳴る。


「...何がおふざけだ...俺は騎士兵のグレムだって言ってんだ!

お前にとっての騎士兵が何かは分かんねーし、お前が何で騎士兵に

なったのかなんて分かんねー。

けど俺は人を守りたくて騎士兵になったんだ、俺なりに忠誠を誓ってる

アル坊が危険な目にあってんなら守っていいだろ?おかしいのかー?」


彼の言葉にサクリは返答する言葉が浮かばない。

確かに彼の言ってる事が正しい、と彼女も分かっているからだ。


「...何もおかしくない、おかしくないよ...!

私だってアルディア様を守りたい...けどもしそれで私達が死んじゃったら、

誰がアルディア様を守るの!?」


二人の意見がぶつかり合う。

その間も竜に乗ってる騎士兵、走っている騎士兵は足を止めない。

草原だからか、すぐ前方にいるようには見えても幸いにも意外と距離が

ある。


「...俺はアル坊を守れなくても、救えたならいい!

この状況で俺らまで逃げたら絶対に奴らはアル坊達のほうを追いかける

だろ!?俺らはただの騎士兵だが、アル坊はライド家の最後の希望と

称されるヒーロー、それにイア嬢だってパイの実はまだ育ってないけど

王家の血を継いでいる姫さんなんだぞ...頼むから、せめてアル坊達が

逃げ切れるぐらいの時間稼ぎはさせてくれ!

って本当は言いたいけどよー、サクリさんは何のために騎士兵

やってんだ?俺は人を守るためにやってる、だからもし今逃げる事を

優先したいんなら、俺はお前が逃げ切る時間だって稼ぐぜ?

困ってんだろ?だったら助けてやるよ、ほら」


言葉は荒いが、グレムは優しく自分を掴んでいる彼女の手を振り払う。


「...そんな事されたくなんかない...!

私だって皆を守りたくて、騎士兵になったんだから...」


サクリは涙目になりながらも返答した。


「...サクリ...なんだか小さくなったか?

今死にたくないって思うのは、それは自分自身のエゴだろ...俺は

今困ってる仲間を助けたいし、救いてーんだ。

人のために生きてんなら、この状況では自分の欲ってのは抑えるしかねー。

俺は生きてる限りずーーーっと成長し続けてんだ!

お前がこんなもんなら遠慮なく突き放してくからな?」


迫っている大軍を警戒しながら、サクリへ言った。


(本当は...怖くておかしくなりそう...このゾクゾクする感じは

エルヴィスタの時と一緒だから...お願い、何も起こらないで...。

ブルード...元気にしてる...?私はいつのまにかグレムに置いてけぼりに

されてたみたい。

言われるまで気付かなかったなんて...私もまだまだだね...何だか

寂しいっていうか、空しいの...こんなの初めて。

それぐらい皆に甘えてしまって生きてきたのかな...)


俯き、もはや堪えきれない涙を溢れさせながら、ふとそう思った。


「...俺はここにいる。

同じ目的を抱えて、これまで何年一緒に生きてきたと思ってんだ...

お前だって家族、奪わせねーよ!

お前が嘆いたら、ずっと一緒にいる俺は所詮その程度の人間だって

言ってるようなもんだぞ!?それは気にくわねー!」


目の前の女性の様子に気付き、彼女の背に自分の背を合わせながら

言った。


(...温かい...そうだ...ごめんね、グレム。

大丈夫だよね、今まで何回もどんな困難だって一緒に乗り越えてきた

んだから...私の仲間、家族は強いんだ...!)


恐怖とは一人だとより大きく見えてしまうものだが、仲間がいるだけで

案外小さなものだったと気付ける時もある。


「...エルヴィスタん時の俺らはどうだった?

月さえ見えない中で、これよりも多い敵を蹴散らしてきただろ?

余裕だよ、余裕...お前がいるから俺には迷いはねーぞ?

不安なんてねーよ?それでもどうだ、怖いのかー?」


彼の言葉に思い出す。

あの時の戦いでは間違いなく、この2倍はいたであろう。

それに気付いたサクリからも不安は消えていく。


「...馬鹿言わないでよね!余裕よ、余裕!

ただ...いや、この敵を蹴散らしたら大事な話があるから...死んだら

許さないから!」


彼女の言葉にグレムはニヤリと口角が上がり、


「...ベ、ベッドも何もねーけど、ご、ご、ごめんな...」


と動揺しながらそう言うも、


「頭でも刺されて、変態でドアホなところが消えるといいですね、

隊長様!」


彼女の言葉と共に真後ろからげんこつが飛んでくる。

つい敵を目前に、悶絶してしまうも、


「...普段のサクリさん...こんにちわ...俺のだいちゅきなサクリさん、

こんにちわ...」


頭を抱えながらもそう返答し、サクリのほうを見てみると彼女は剣を

構えていて、その様子を見たグレムもやる気満々といった感じで剣を

構える。


「ご無事でなー、サクリさん!!!」


と言い放つと、向かってくる騎士兵へ勢いよく走りだした。






「...あの老人どっかで見たんだけど思いだせないのう...」


場面が変わると天を舞う一体の龍の視線の先には、王都クルーシアの

王城があった。

広場のような場所から大きな龍、多くの人間の姿が見える。

だが暴食や色欲は見えず、今はいないようだ。


「...とりあえずお前達にプレゼントをくれてやるから楽しむといい、

これは余興じゃぞ?...訛ってしまって申し訳ないがこれ以上、お前達の

思い通りにはさせられないんだ。

数時間前に出会った氷竜の彼のように、勇気ある者達は常に行動を

している。その行動に私だって、心が救われた気分になった...

だからせめて力のある私はこの世界で生きている者達へ、開幕を告げて

やろうじゃないか。

もう悲観するのは終わりだ...アルディア・ライド」


そう呟くと龍は翼と尾を振り始め、風を纏い始める。

尾からはとてつもない量の毒が出ている。

だがその龍の姿は幻龍アスルペ・テミルス、






彼女ではない。




8体目の神龍と称されるほどの彼女と瓜二つな龍。

その存在は...。


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