真実を見つけ出すために。 ~外伝~
このお腹の中に宿る、愛しき命に捧げる未来を。
「...アルマ、お前を悲しませたくないが悲報だ。
長老はお前に嘘をつき、お前の夫達を殺していたそうだ」
イリミルの森の中、アイアスが若きアルマへ話していた。
「私は奪われなきゃ生きる事さえ許されないのね...」
アルマは膝からその場へ崩れ落ちる。
「私の仲間に追わせていたがかなり離れた場所だったそうだ。
お前の姪のいる、エルヴィスタを通り過ぎた先にある森の中。
...許される事ではないな、私が奴の息の根を止めてやろうか?」
アイアスはアルマへ問う。
「...やめなさい、アイアス...。
私はこの森だって、エルヴィスタの同族だっていつでも助けてきた...。
けれど誰も私と接してはくれない...寂しいけど仕方ないのよね、
私があの血を引いているのが悪いの...。
唯一近付いてきて話してくれるのはヘリサの仲間のサクリちゃんや
グレム君達だけでヘリサもなんだか冷たくて...。
そんなに生きててほしくない?...アイアス、私は生きちゃだめ?」
涙も鼻水も溢れている顔でアイアスを見つめる。
「誰もお前を殺そうとまではしていない。
私を恐れているのもあるだろうが、おそらく大半の者達は長老に
逆らえずにいるだけで、本当にお前が邪魔なら色々と行動を起こしてくる
はずだ。
冷たい態度をされていたのは長年分かっていたはずだ、なのになんで
お前はここまで生きてきた?
何のために生きてきたのか、忘れたのか?」
その問いにアルマは自分のお腹を見つめる。
「...ここまで生きてこられたのは夫の愛に支えられてきたからだ。
名前は忘れたが優しい奴だったよな...お前の事を誰よりも想い、
愛していた。
お前も彼の愛は心地が良かっただろう、幸せな一家だったよ...。
だが彼がいなくなってもお前の中にある愛は消えない。
ただその愛を向ける相手を変えろ、アルマ。
夫を忘れろなんて言わない、夫の分もその腹の子を愛せ。
あいつだって生きていたらお前に与えた分の愛情を子にも注いだはずだ。
今お前が死んでしまったらその子はこの空気を吸えず、母の顔も見れず、
愛さえ受け取れずに天へ帰るしかない。
せっかく宿った命なんだ、お前の好きなようにでいいさ...愛してやれ」
アイアスは額をアルマの顔の元へ近付けると、
アルマは彼女を抱きしめた。
それから約2か月後。
「...にしても腹でかくなったな、自慢話に来たとは...」
アルマはどこかの屋内で老人と話していた。
「...名前はかつてこの大陸に実在したという『7人の王』の
一人、ゼラール・ド・アルカディア様からとって、それをいじって
『アルディア』に決めたんです」
その言葉に老人は一瞬ピクリと反応する。
「...究極の理想を追い求めた王、アルカディアか」
アルマは頷くと、
「...アース様、このたびはお願いがあって参りました。
もしアルディアがあなたへ助けを求める時があった際はどうか、
どうか...アース様のお力で導いてあげてほしいのです」
アルマは椅子に座りながらも手を膝に置き、頭を下げた。
「...神は人に手を貸せねえのは分かるだろ。
助けはしないが助言ぐらいはしてやるさ...お前も親の顔になったな」
老人は優しい笑顔で言うとアルマも笑顔で返答した。
それから約5時間後。
どこか夜景が綺麗な崖の上にアルマとアイアスはいた。
「アイアス...辛くても生きなきゃいけない人は大変ね...。
もう私には何もないと思ってたわ。
私の残りの人生はアルディアが躓かないように歩ける道を作ることに
捧げることにする。
...きっと苦しい人生になってしまうけど私はアルディアを愛してる。
この子がただ無事に生まれてきて、笑顔を見せてくれたらもう
それ以上は何も望まないわ」
アイアスは返事はせずとも優しい表情で聞いていた。
「...あなたの分までアルディアを愛して、守らなければいけないわね。
今までありがとう...ごめんなさい、リオ...。
私はもっと力をつけて、あなたが私を守ってくれていたように
アルディアを守り続ける。
だから安心してて?けどもしよければお空の上で見守っててほしいな。
あなたが先にそっちに行っちゃうなんて思いもしなかったから...
正直明日も明後日も当分、泣いてると思う。
これはあなたのせいよ?だから絶対見守っててよ...寂しいんだから」
精一杯の強がりは、守られる側から守る側に変わった彼女の本心。