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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
87/123

同族。






 集落の見える場所までたどり着いたイア。

彼女の瞳に映るはアルディアと多くの原住民達。






 (...さすがにこれは火あぶり...みたいにされる...?

ちょっと様子見しすぎたかな...。

でもこれからほどいてくれる可能性も...ないか...?)


自分に素直に生きるのは正しい。

だがアルディアが思っているほどこの世界に住む者達は優しくはない。

彼の思いはまだ甘かった。


「オーウ!」

「オウオウオウ!」

「オーオウオウオウオウ!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


突然原住民達は奇声を発しながらアルディアを集落の中心にある

1本の巨大な木へ縛り付けた。


(...どうしてこうなった...。

考えが甘すぎたかな...争いを避ける選択肢はこれが一番最善だと思ったん

だけど...おっかしいなー...てかやばい、抜け出さないと!)


今やっと自分の選択は間違っていたことに気付き、もがくも用意に

抜け出せそうにはない。


「...え、えっと...皆さん!お静かに!僕は、あなた達に、何も、

しない!

だから、離して、ほしい!!!」


アルディアの叫びに原住民達は戸惑った表情で仲間達と顔を見合わせる。

だが必死の叫びも彼らには理解できなかったようで逆に怒ったのか、

槍を高く掲げ始めた。


「...え、えぇぇぇ...だめかー、やっぱりだめだったかー...」


冷や汗が滴るも何も策はない。


「けど殺すなら俺を見つけた時点で普通殺すはずだ、まだ何かある...」


アルディアは意外と冷静を保てていた。




(...あの行動はアルディアさんを殺すためではなく、彼を祀っている。

現時点で彼らは彼に殺意など持っていない。

...やっぱり本当だったって事...?アルディアさんの傷の手当てを

しようとしたあの日から...イアはずっと疑っていたわ、彼はライド家では

ないんじゃないかって。

けどその場合、母であるアルマやルヴィー・ライドの血をどう説明すれば

いいのか...分からない...分からない...ただ、イアの予想が当たってるの

なら言語は通じなくても彼らはアルディア・ライドを仲間だと認識

するはず...)


イアは真剣な表情でその様子を見続けていた。


(...まさかライド家は元々...そういう一族って事...?

確かにそうだとしたらなるべく距離を置こうとするでしょうね...

というか生きてる事自体が罪に問われても全然おかしくない。

...だから王家はライド家を消そうとしているって事...?)


イアの考え方は正しい。

ただそこまで考えすぎないところに真実は転がっていて、割と単純なこと

なのだ。

そして奇声は途絶えた。

と思った瞬間、


(頭を下げ始めた...!?)


アルディアとイアは彼らの行動にこう同じ事を思ったであろう。

何人かはフルーツや虫などを持ってきて、それはお供えのようだった。






 「...それにしても結構な装備だな...」


場面が変わると、サクリとグレムは草原を歩いていた。

周りには多くの同じホワイトトゥルーの者もいるが剣や弓、鎧など

ただ探すだけなのにかなり気合が入っている。


「...私達で話せばきっと大丈夫...。

だから今はイアさんを探す事に集中してください、隊長様」


サクリの言葉にグレムも前方を向き、進んでいく。


ドルルルルルゥ


だが突然真後ろから聞こえた声に2人は驚くと、


「...あたし達も手伝うことにしたよ!

頑張って探そうねー!」


あのヴァイオレットという女性は1体の竜に乗っていて、その後方にも

同じ竜に乗った兵達がたくさんいる。


「...おい、サクリ...。

これ本当に捕らえるだけか...あんな竜、俺達んとこでは扱えなかったし、

かなり気性荒らそうだぞ?

...イアちゃん、恨まれるような事...する子だからなー。

いたずらっ子だし...あ、いってー!」


突然前方からサクリの拳が不意打ちのように飛んできた。


「...恨まれるような事はしないでしょうが、イアさんは意外と

礼儀正しいでしょ!

仲間内ではやんちゃな子かもしれないけど...!」


サクリ自身そう言いながらも心の奥ではイアの性格上、心配だった。


「...イアちゃんは雷撃あるから大丈夫だろうけど、さすがにこの数を

敵に回すのはきついぜ?

同じホワイトトゥルーだし、イアちゃんと話した事もないこいつらから

すれば王家の少女はただの敵だろうしな」


グレムは最悪な出来事にはならないように願うとサクリも頷くが、


「...」


突然何か懐かしい感覚を思い出す。


「なんだろう、この空気...私知ってる」


サクリの言葉にグレムは大袈裟に深呼吸すると、


「...お?いつもと変わんねーぞ?」


と返答した。


(...グレムは鈍感だから...。だけど間違いない、これは...

この風は...!)


何かに確信を持ったサクリはふと立ち止まり、空を見上げた。


(...ご無事ならいいんです)


誰に向けてかは分からないが、その想いを胸にしまい込む。






「...もう行くのかい?相変わらず忙しい女だな、お前さんは...。

行くなら勝手にしな。

だけど次はないぞ...分かってるな...?」


場面が変わるとどこか大きな建物の中で一人の人間の影と1体の龍らしき

影が向かい合い、別れの話をしていたようだ。

そして間もなく、






1体の龍の影は天へ舞った。




 レイディア全体を包みし、そのひと時の風は。


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