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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
86/123

余興。






 気付けないまま物事は進んでいく...。






 「...イアさんは無事だと思うけどアルディア様達はどこにいると思う?

隊長様」


サクリは横で目を丸くしているグレムへ問うも、


「...サクリさん...隊長なら何でも分かると思ってるんだろうが

...んなわけあるかーーーっ!!!」


建物内で叫ぶと作業していた他のホワイトトゥルーの者達が顔を出し、

その視線が一点に集まった。


「...あ、あれー?皆さんいらっしゃんですねー...へへ、すんまそん」


周りにいないと思っていたグレムとサクリは恥ずかしい思いをしながら

頭を下げ、その場から離れる。


「...隊長様のせいで恥をかきました...この責任はイアさんを見つける

ことで償ってもらいますので、お覚悟を」


いまにも前方を歩く彼女の拳が飛んできそうな雰囲気だ。


「...へ、へいーーー!」


彼女達はまだ知らなかった。

味方であるはずの少女に避けられていることに。






 「...力の証明...力の証明...」


場面が変わるとアルディアは太陽が照らす大きな石の上に寝転がりながら

考え込んでいた。


「ただ争えば無駄に多くの血が溢れてしまう...俺だけでは力が足りない。

...あの不気味な竜さえ何とかすればきっと分かってくれるはずだ...

いや、あの不気味な竜に一緒に抗っていける仲間達が欲しいんだ...」


今だ希望を見いだせない。


(...あの竜達の巣...森...その先は...。

まだまだ知らない事ばかりだったな、もっと先に進んでみようか)


起き上がると今までに行ったことのない方角へ歩き出す。




(...やっぱり人はいない。

夜はこっちの方角から不気味な竜達の鳴き声がして昼間じゃないと

近付けないから今のうちにどんどん知っておかないといけない...)


奥に進むにつれて木々が生い茂ってきて草原から林、林から森、森から

ジャングルのように変化していくように感じる。

つい数時間前にイアが通ったであろう風景とそっくりだ。


(...ん?)


突然どこからか多くの声が聞こえ始める。

一種の歌のようでもあり多くの者が何か宴でも楽しんでるようにも聞こえた。


「...近付いてくる...!」


それはアルディアを中心に全方位から少しずつ近付いてきている。

獲物を見つけた捕食者が歓喜の歌を歌っているようにも思えてきて

アルディアは予想外の出来事に、


(...やっぱりこっちには何かいる!...何かあるのか!?)


と少々焦る。

近付いてきているはずだが姿は見えない。

歌だと思われる多くの声は正確には聞き取れないがやはり何かを

喜んでいる事だけは分かり、不気味だがアルディアは冷静に弓を構える。

だがどこに狙いを定めればいいかは分からず、困惑する。


(...どこだ...?)


木々がざわめき、その声はもうかなり近い場所で聞こえるも

全く人がいるような気配はない。

アルディアは竜であるトーダスやイリミールの声が聞こえていた事を

思い出す。


(...これは竜の声なのか...?)


そう思い、空を見上げるも何もいない。

青空が広がっているだけだ。

視線を地上へ戻すと、


いつのまにか多くの2足歩行のモノが不気味にアルディアを見つめながら

佇んでいた。


「...うわっ!?」


全く気付かなかったアルディアは驚いて、後ずさりすると背が何かに

触れた。

後ろをおそるおそる見てみると、身長は200cmぐらいはあるように見え、

痩せ型で肌は黒く、目は細くてトカゲのようで犬歯は剥き出し、手と足の指は

5つあるが爪は長くて鋭く、足は3本...いや地につくほど長い尻尾が

生えている生き物が立っていた。

その奥、周りにもかなりの数だ。


(...怖い...)


アルディアではなくとも同じ状況でその生き物と目が合ったら誰でも

そう思うはずだ。


「...コンチニワ」


目の合った生き物は突然そう発すると周りのモノも皆同じ言葉を発した。

その言葉はなんとなく「こんにちわ」と似ているが彼らは到底「人」とは

いえない。

どちらかといえば2足歩行のトカゲ、だが背筋はピーンとしていて姿勢が

よすぎて逆に気持ち悪い。

ならばティラノサウルスやカルノタウルスなどのほうがかなりかっこいい

といえるだろう。


「...こ、ここんこん...こんんにちわわわわわ...」


目の前の生き物が言葉を発した事に驚き、心臓バクバクなまま話した

アルディアのほうが下手くそな挨拶になってしまった。

だがアルディアの言葉を聞いた彼らは笑っているのか、口角が上がり、

長い舌が見える。


「...ワエタツナーマカ!!!」


次はさすがに理解不能な言葉を発した。


「ナーマカ!」

「ナーマカ、ナーマカ!」

ナーマカ!ナーマーカ!ナマーカ!」


周りの仲間達であろう者達も先に言ったリーダー格のようなモノに

続いて叫び始める。


(...なんだこれ...さすがにやばい...かな?

先制攻撃しても絶対あれでやられるだろうしな...味方の可能性もあるし

今の状況が分からない以上流れに任せてみよう)


多くのトカゲ人間のような者達は長く、鋭い槍を片手に持っている。

先の尖った部分には何やら液体を塗っているようで毒の可能性が高い。


「...キーグ!!!オアエル!!!!!」


またも先に言葉を発したトカゲ人間の言葉を聞いた他の者達はアルディアを

縄で縛り始め、一人が青年を抱えるとそのままどこかへ連れ去っていった。






 「...なんて情けないの...やっぱり彼にはイアが必要ね。

面白いものを見せてもらったわ、アルディア・ライド...縄を持ってきて

るのだから縛られるに決まってるじゃない。

抵抗もせずにただ縛られる...というか手を差し出して縛られるのを手助け

さえしてたわよ!...賢いイアでも何を考えていたのかさっぱりだわ」


場面が変わると生い茂る木々の上から青年が連れ去られていく光景を

見ていた少女が笑いを堪えながら呟いた。


「...にしても彼もこの大陸にいるなんて思いもしなかった。

...この弓...かなり使い込まれてるけどよくできてるわ...。

何をすべきか、どうやって生きていくか...理解していたみたいね...」


青年が連れ去られる際に奪われ、捨てられた弓と矢をイアは拾うと

驚いた。

初めて会った当初のお坊ちゃまはもう彼の心にはいないと感じ取ったのだ。






「彼を奪われたら暇になっちゃう...イアを楽しませる存在を返しなさい!」


トカゲ人間のような原住民、原住民のようなトカゲ人間。

はたしてどちらが正解なのかは分からないが彼らの集落を知っている

イアの周囲を火花が散り始めた。




 次話、1人の少女VS約100人の原住民...となるのだろうか。

そしてアルディアの安否は...。


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