表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
83/123

決別。






 弱き者達にとってはこの世界全てが敵同然だ。






 「俺達を食おうってかー!?」


グレム、サクリ、イア達は竜に追われるもどこに逃げたらいいか

分からない。


「...黙って走り続けるしかないわ!」


サクリも必死に走る。


「どこまでも追ってくるなんてイア達をおいしい餌だと思っているの

かしら」


イアは走りながら何故追ってくるのか考えていた。


「...3人バラバラになったほうがいいかもしんねーな!!!

生きてたら会おうぜ!...ってかっこよく言ってみたかったしよ!」


グレムは提案を出すも横からげんこつが飛んでくる。


「隊長様はただそれを言いたかっただけですよね」


サクリのげんこつもかなりの威力だが今は悶絶しているほど

余裕はなく、グレムは涙目になりながらただ走り続ける。


「...ずっと追ってくる...剣も何もないから戦えるわけもないし、

逃げるしかないとは思うのですが...」


確かに今彼女達にできることがあるとすれば、ただ逃げる事しかない

はずだが少女の考えていたことは違った。


(...イアはそれが最善だとは思えない...どうやらこの竜の目的は...)


ふと気付く。

その竜の瞳は自分だけしか見ていない事に。


「...先に行きなさい!

イアは鎖鎌がなくても雷撃で戦えるわ!生きて会いましょう...

グレムさん、サクリさん!」


自分がそのセリフを言ってやったというような表情で少女はグレム達へ

言った。


「...確かにイアさんならあの雷撃でいけるかもしれない...

ここは任せました!無茶はしないでください...」


サクリとグレムはスピードを上げて、森の中を駆けていく。




「...イアに何か用かしら?」


その竜を睨みながら問う。


「あのまま逃げればよかったものを...」


突然、その竜の鬣から一人の女性が顔を出す。


「...!?」


イアは彼女の鎧にホワイトトゥルーの紋章が刻まれていた事に驚き、


「やはり噂は本当だったのですね、イアは騙されないわ」


何かに気付いたのか、鼻で笑う。


「逃げたのはエルヴィスタ班のリーダー、ヘリサの下っ端共みたいね?

あんたと幻竜がいなければもっと早くにアルディア・ライドを捕らえる事が

できたのにってヘリサ悔しがってたわよ?

責任...取ってよね?かわい子ちゃん!!!」


彼女は竜の手綱を引くと勢いよくイアへ飛び掛かってくる。


(...イアは気付いていた...時々だけどヘリサさんから嫌な視線を

感じるのを。

まるでイアが邪魔者みたいに...アスルペ様だって気付いていたと思うわ。

アイアス様、だからイアはあの時ヘリサさんを慕うグレムさんやサクリさん

だってイアを仲間と思っていない可能性が高いと思ったのよ...?)


イアはクルーシアでアイアスに初めて会った時に、


「お前はサクリの仲間か?」


と問われた事を思い出しながら目の前の女が乗る竜へ雷撃を放つ。


(皮膚が分厚い...相性は最悪ね...)


イアの雷撃にその竜はびくともしない。


(...ホワイトトゥルー...束ねている存在を見た者は誰もおらず、

竜の乱獲や様々な実験を行っている悪名高き騎士団。

イアは旅の中でその集団の事を知ったけれどヘリサさんが最初に

ホワイトトゥルーを名乗ったときは驚いたわ。

だけどあのアルマ様が我が子であるアルディアさんを任せたんだから彼女は

いい人なのかと思ったけど...やっぱり騎士団であるのならどうやらもう

イアも彼女達とは縁をきらないといけない。

もう演技はやめなさい、サクリさん、グレムさん。

...イアはこれから一人で生きていく、けど...アルディアさんは渡せない!

ライ・ズ・クロー!!!」


イアが唱えると少女の腕は竜のように太くなり、爪は竜のように長く、

鋭くなって目の前の竜を襲う。


「...ついに本性だしたね!!!イア・ネイラーデ...みーっけ!!!」


その女は突然笑い出す。

雷撃を巧みに扱う彼女をイア・ネイラーデだと確信したのだろう。


「...イアをどうする気...!?」


女へ叫ぶ。


「...あたし達のマスターのヨゲス様があなたの事をお人形ちゃんって

可愛がって、頬にキスしたりしていたみたいなんだけど逃げられて

悲しんでるのよ...。

王家とは1か月ぐらい前かな?手を組んで、同盟関係にあるんだけど

ヨゲス様のあまりにも可哀そうな様子にあなたのママさんはヨゲス様に

あなたを見つけることができたら嫁にしていいって言ったみたいでそれを

聞いたヨゲス様は元気になって世界の騎士団にあんたを探すように命令を

出したのよ、そんでこの大陸の騎士兵のあたしがあんたを迎えに来たの!

...だからあたしと一緒にお家へ帰ろう?ね?」


イアは王家と騎士団が同盟を結んだということに驚愕した。

だがそれ以上に「ヨゲス」という誰かも分からない人物に頬にキスを

されていたという事を聞いて、意識が遠のきそうなほどの気持ち悪さに

襲われる。


「...おかしいわ、騎士団にいるライド家は王家と手を組む事に何も

文句はないってこと?

宿敵ともいえる相手なはず」


敵の前だという事を思い出し、冷静に疑問を問う。


「騎士団は元々ライド家の祖である方が創立してね、その頃は王家とも

親しい同盟関係だったの。

だけどあの忌々しい...罪人ルヴィー・ライドのせいで大半のライド家は

死に、生き残った者は細々と騎士団再興に向けて生きる者と王都に根付いて

死んだ者達が王家と共に守ってきたモノを引き継いで守る者に分かれた。

騎士団は元々王家の味方なの、王家の現在の王や姫であるあなたの

ママさんも知らないだけでね。

...あなた王家なら知ってるはずじゃないの?

てか『あなた自身』と言ったほういいかしら!?

...あー、面白い...ここまで話してあげたんだからあなたは逃がさない!」


女は話し終えると不気味な笑みを浮かべながら竜を放つ。


「ライ・ウィング!」


イアは竜が目前まで来ると呟く。

だがその程度では効かないはずだが...。


「...嘘でしょ...!?」


驚いたのは竜に乗っていた女のほうだ。


「こういう使い方もできるのよ?イアは賢いから」


イアは笑うと彼女の放った雷撃は自分の腰から生える羽のようになり、

跳躍力は1本の木をも軽々飛び越えるほどになっていた。






「...これ以上イアの自由を奪わないでちょうだい?

アルディア・ライドは渡さないわ、彼まで奪われたらイア達が生きたいと

思える世界なんて一生来ない。

罪だとかイアも分からない事ばかりだけどいつかこの世界の全てを

暴いてやるんだから覚えときなさい!

...その後に命乞いなんてしても無駄、イアが姫になったらきっちりと

裁いてあげる」


女へ言うと木々を飛び越えながらその場を去る。




 「ホワイトトゥルー」を知ってしまったイアに、もう彼女達と同じ道を

歩むことなどできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ