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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
始まりは希望と絶望から
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逃した救い。






 龍ってなんの事だよ母さん...また僕の分からない事を。






 「アルディアさん、今すぐこの森を出ましょう」


そう言うと少女はアルディアの腕を掴み、来た方向へ

足を速める。


 物凄い力だとと青年は思った。

この小柄な体のどこにこんな力があるのか。


「だめだ!母さんの元にいかなきゃ...イアさんはすぐにでもこの森を

出たほうがいい!」


なんとか少女の腕を振り切ると、母のいる家へ向かって走る。


「きっともう始まっている、助けるのだとしたら遅すぎよ。

だけど先に行ってなさい...イアも取り返したらすぐに向かうわ。」


ポツリと呟くとアルディアが走って行ったのを確認し、少女は

大長老の屋敷へと入っていった。


「母さん...母さん...」


と、青年の頬から水滴が零れ落ちる。

最近は心が疲れる事ばかりだった、そしてこの出来事。

成人をした以上、全て受け止めなければならない。

もうアルディアも子供ではいられないのだ。


 ふと周りを見ると、普段は夜でも賑やかな集落に並ぶ民家の灯りはどこも

消えていて、誰もいない様子だった。

不気味なほど静かなのだ。


 ある一つの家を除いては。


 その家の周りを100人ほど人が囲んでいた。

家の前には母の姿が見え、目があった。

母親にもその愛しい自分の息子の瞳が見えた。

子が母に声をかけようとした瞬間、


 誰かに腕を引っ張られる。


「アルマ様の息子ね。今は声を出さずについてきて」


自分を引っ張る赤色のフードをかぶった声の主はそう言うが、


「母さんが囲まれているんだ!一緒に助けて!」


大きい声を出してはいけない状況を察し、そう小声で言う。


「ごめんなさい、時間がないの。あなたの言うことは聞けないわ。

ただアルマ様から息子様へのお言葉は受け取ってあるから今は私と共に

ここを離れてください」


 アルディアに選択肢などなかった。

その人が何か言葉を呟くと1体の竜が空から現れて唸り声を上げ、

威嚇してる間にアルディアを背に乗せ、フードをかぶった謎の女も

乗ると竜は早急に飛び立つ。

離れゆく中で最後に母を見るとアルマ・ライドは優しい笑顔で

我が子を見つめていた。


 竜を見た集団は、


「龍が現れたぞ!」

「やはり貴様も裏切りものだな!」

「この女は大長老様が予言なされた、この集落を滅ぼす者だぞ!」

「捕らえろー!」

「火を放てー!槍を用意しろー!」

「竜が来るぞー!」


など多くの者達が混乱しながらも叫んでいて、

アルディアには何が起きているのか分からなかった。

今すぐ助けたい、だけどそれもできない。

アルディア自身も混乱していた。


「降ろしてくれ!お願いだ!母さんがあそこにいるんだ...まだ間に合う!

...降ろせ!」


青年が暴れ、それを見た謎の女性は少し離れた場所で降りるよう竜に命じた。




 地へ降りると、


「息子様、急なご無礼を申し訳ありません、私はヘリサ・ベーレ。

アルマ様の姪にございます。集落とは違う場所で暮らしており、

今日こうなることは数日前に届いた手紙によって全て把握して

いました。

焦っていたとはいえ、ご意思を尊重させる余裕もなかったことを

どうかお許しを」


片方の膝をつき、服従の姿勢で言った。


「僕はそんな事されるような人間じゃない!姪なら今すぐ母さんを

一緒に助けに行こう!竜もいるし、きっと助けられる...間に合う!」


少し離れた場所とはいえ、走ればまだ間に合うかもしれない。

間に合ってみせると強く青年は思っていた。


「それは伝言を預かった以上、私が許しません。そばにいる以上は息子様を

どんな事からも守り、死守することを誓います」


こんな状況でもその人の瞳は何かを求めていた。


「どうしてそこまで...僕の事を...龍ってのは一体なんなんだ...。

今までそんな話されたことなかった...それは...僕が...愛されて...は...

いなかった...からか...!?」


アルディアは今自分以外何も信じれなくなっていた。


「それはあなたが私達の希望だからです...今はそれしか話せません。

そして龍とは3種類の呼ばれ方をされ、3種類で位が分けられます。

『竜』とは一般的に竜車を引いたり、それなりに身分が低い農民でも

契約のできる比較的若く力も弱い存在です。

『龍』とは『竜』よりも位が高く、希少で力も強い存在で、『竜』が

『龍』になるには長い年月を生き、人と誓いや契約をたてる必要がある。

3つ目の龍は『神龍』でこの存在は伝説上であり、あなたには既に

何度も耳に噂も伝説も入っているでしょう...説明は不要ですね。

そして、あなたへの伝言は『強く生き、守り守られる存在となれ。

その意味が理解できたのなら2~3日後きっとすぐにまた会える』との事。

以上が私が聞いた伝言で、これからの事も何もかも赤髪の少女、イアさんに

聞けとおっしゃっていました。

ですが一言だけ、まだ若いのに『愛』を自分の都合よく扱わないでください。

アルマ様は誰よりも息子様を愛していました、だからこそこうするしかあなたを

守れる方法がないのです...それが...」


 アルディアは頭の中でここ数日の出来事を振り返りながら聞いていた。

彼女の最後に放った言葉が聞こえないほど夢中になってしまったのは

一つの大きなミスであり、その後の運命を変えてしまうほどの大罪で

あったといえるだろう。


「なら...なんでだよ...もう頭の中がパンクしそうだ...

だけどまた会えるのなら...2~3日はかかるって事か...。

今はとにかく母さんと龍との関係を知っているのなら教えてほしい...」


アルディアに頭を抱えそう問われ、ヘリサは一瞬悩んだ末に口を開く。


「このことは話していいか聞いておりませんでしたが、成人した以上

全て知っておくべきかもしれませんね。

アルマ様は普通であれば龍との契約は30年かかるところを成人の日に

契約なされるほど、一族の中でも竜達を扱う事に長けておりました。

その中でも誓いも契約も立てた雌龍アイアスは気性が荒く、主に氷の魔法が

使え、その強さにも定評のある龍です。

それに加えて竜も数十ほどならいつでも呼べますし、敵に回すとしたら戦いに

慣れていない小さい集落では相手にもならないほどの実力者なんですよ...

あなたのお母様は。

契約と誓いの内容は契約者とその龍以外が口にすることは禁忌とされていて

話せないこと、ご了承くださいませ」


自分には分からない事ばかりヘリサの口から放たれる。

でも今やるべきことは悔やむ事じゃない、嘆く事じゃない、

きっと怒ることでもない。

母の伝言通りに何が起こるか全ての理由を知る、赤髪のあの少女を

探すことだ。


「ヘリサさん...僕の頭がいくらあっても全てを今素直に受けきれない。

僕はいい子でも強くもないんだ。

こういう時、母さんなら俯く余裕があるのなら今できる事を探せっていう

と思う。だから赤髪の少女、イアさんを探すのを手伝ってほしい...!

その後にヘリサさんの頼みも何でも聞く!だからお願いだ!」


深く頭を下げる。


「顔をお上げください!それでいいんです...強さとは完璧である事ではない。

何かこれだけは譲れないっていう意思、行動であり、息子様が自分自身で

決めた事ならアルマ様の命のもと、私はどんな事でも喜んでお受け致します!」


頭を上げさせると、自ら服従の姿勢をとった。

ヘリサが望んでいたのはアルディアが怒りや不安に囚われず、自分自身を

見失なわない事であった。






 場面が変わり、ここは大長老の屋敷の中か。

薄暗い部屋の中で赤髪の少女は探しものをしていた。


「きっとこの中のどこかに...イアの物を取るなんて許さないわ」






必死に探す少女の後ろに1つの影がたたずんでいた。




 少女に迫る一つの影とは...敵か?味方か?新たな運命の協力者なのか?

次話、一つの集落がその姿を変える。


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