植えたね。
その目に映りし、新たな大陸の。
「...あれがグアースド大陸、糞じじいがあたい達アースドラゴンや
グリーンドラゴン、その一族のために作った大陸よ。
他に行き場のない竜達も少数いるけど人間達みたく些細な理由で
争わずに共存しているわ。
...約10年ぐらい前、あんたと初めて出会った時は糞じじいがあたいに
初めてのプレゼントとして『イリミルの森』をくれてすぐの事で、
当然あの森もあたいの名前からとられているんだからちゃんと強くなって
いつか取り戻してよね!あんたの故郷だってあるんだから...」
イリミール達は今は海の真上で大陸が前方に見える。
あれから何事もなく休憩もせずにイリミールは約7時間ほど飛び続けた。
もしアルディアが契約をしていなかったら今頃あの龍達に連れていかれた
であろう。
契約をした結果、龍さえも一瞬驚くほどの力を手にでき、その力のおかげで
イリミールの操った木でほんの僅かだがあの龍の動きを止める事に成功したの
だから。
たかが動きを止めたぐらいで...と思うかもしれないが彼は大罪龍の
一体であるとイリミールは言っていた。
大罪龍といえば暴食や色欲、そして嫉妬が既に確認されているが
前者の2体は相手をしたアスルペを何らかの方法で血だらけに戦闘不能にし、
嫉妬はその能力でエルヴィスタの騎士兵達をほぼ壊滅させた。
そんな圧倒的な存在の動きを一瞬でも止めたのは大袈裟だとしても称賛
していいはずだ。
アスルペも少しの間は2体を止めていたが、彼女は龍であり「8番目の
神龍」とも称されるのだからそれぐらいはできて当然のことであろう。
「...ごめん、イリミール...いつ会ったか覚えてないんだ。
だけど僕は必ずイリミルの集落へ帰る!
敵が多くいるとしても抗って必ず取り戻すよ!」
上空から見えるグアースド大陸。
それは町も多かったウォアータス大陸とは異なり見える範囲全てが緑に
覆われている。
「...10年前の事も忘れるってもうボケが始まってんじゃないの!?」
イリミールはそう叫ぶとわざとアルディアを揺らし、ビビらせた。
「...ごめん、イリミール!!!落ちる...落ちるから本当にやめて!
謝るよ...本当に!」
アルディアは焦りながらもイリミールに掴まる。
「...あんた、グアースド大陸に来たなら絶対に『命の樹』へ行きなさい。
あたいはあんたを降ろしたら糞じじいに言われた事やんなきゃいけないから
ついてはいかないわよ。
それにあたいが勝手に契約解除しておくからもうあんたは弱いまま。
...一人で生きなさい。
そうすればおのずと何をすべきかは分かるわ、じゃあ...ばいばい!」
イリミールは突然背のアルディアを振り落とすとアルディアは海へ
真っ逆さまに勢いよく落ちる。
その光景に一瞬笑みを見せると彼女は去っていった。
「...最低だ...イリミール...」
もう全身ずぶ濡れながらも何とか浅瀬にたどり着くと辺りを見回して
思った。
(...ついにグアースド大陸に来たのか...)
見え始めた月がアルディアを大陸へ誘っているように見えた。
「...さて、海だ。
サクリ達はどうするか決まったか?あ、申し訳ないがダモスはこちらで
預からせてもらうぞ。
立派な体格だから私の身近で手伝いをしてほしい」
場面が変わるとアイアス達はウォアータス大陸の海の浅瀬にいて、
月の下でこれからについての話し合いが始まろうとしていた。
「...え!?その話はイアにも相談しないで決めたのですか、アイアス様!」
イアは目の前にいる龍がアイアスでも遠慮なしに口から言葉を放つ。
「お前に話したところでダモスは連れてくよ、イア姫さん」
アイアスは普段イアがダモスによくするような見下した目を真似しながら
言った。
「...イアはそんな怖い顔はしないわ、アイアス様...イアのダモスが
何されるか分かったもんじゃない...当然イアもそっちにつくわ!」
イアは頬を膨らませながらアルマの袖をにぎにぎして離れないアピールを
する。
「...イアのダモスか...どうだ、ダモスよ、イア姫の夫にでもなればいいの
ではないか?」
その言葉にイアとダモス以外の全員が笑い、
「...イイイ!イアの夫!?ダダダダ...ダモスが!!!?あああ...
ありえ...ありえない、ありえないわ...アアア...アイアスさままま!!!」
イアは顔を真っ赤にしながら目を見開きながら言い、ダモスは口を
ポカーンと開け、立って目を開いたまま気を失っているように見える。
「...冗談はここまでだ、お前達がいてくれて何千年かぶりに私も楽しかった、
ありがとう...未来ある若者達。あ、ダモスは若くはないがな。
そしてイア姫は連れては行かない。
お前達はいずれ再びアルディアと再会を果たすはずだ。
サクリとグレム、お前達の主は彼であるのだからそれは当然だろう?
もちろんイア姫もまだアルディアと共に世界を見てみたいというのなら
間違いなく再会するであろう、あ...アルディアが好きって理由でも
全然構わないがな。
そしてアルディアは今、神龍であるグラウンド・アース様のお孫様と一緒に
いる。
そのお孫様はおそらくこれから時間がかかろうとアルディアを育て、
鍛えると私は考えている。
同じ立場なら私もそうすると思っているしな。
その場合彼が一段と強くなってお前達を導くのはそれは嬉しいことだ。
が、お前達が弱いままでは主であるアルディアが不安や迷いに襲われた時に
彼をどうやって救う?口だけなら確かに簡単だがそれだけでは足りないこと
だってこんな世界で生きていれば当然ある。
そのために色んな面で経験を積んでおいてほしい。
主のそばに戻ってから『私じゃアルディア様を救えない』
『俺じゃこんな時どうすればいいかわかんねえ』など私はお前達に
そうなってほしくない。
お前達が本当の意味で強くなって固い絆で結ばれた時に大罪龍や
強大な敵が現れた場合は私達、氷龍族がどんな時でも助けに行く。
そんな時は何よりもお前達を優先して助けに行くよ。
だがそういう異常事態以外では手は差し出さない。
これからアルディアと再会するまでの日々の中で本当の意味で生きるとは
どういうことか、本当の強さとは何か、自分にとっての正義とは何か。
自分で気付き、自分で出した答えに誇りを持ちなさい。
誇れることを誇らないで生きるとこの世界に簡単に惑わされるからな?
他人なりの正義が込められている言葉、その正義を語られても自分の
正義まで揺らがないような誇りを強く持つように...ってわけで生きるのに
適した場所であるグアースド大陸にお前達を降ろし、目標を与える。
『命の樹』と呼ばれる、グアースド大陸の最奥にある神聖な場所へ
たどり着く事。
そこまで無事に行ければお前達は自分自身にとっての誇りとなるべき
答えをきっと出せるはずだ」
アイアスは冗談も交え、話す。
「...命の樹...無事にってことはそう簡単に行ける場所ではないという
事ですね?」
アルマとアイアス以外皆悩んだ表情をしている中、サクリは問う。
「賢いお前もまだ甘いな、サクリ。
答えとは成長しなければ誰もが気付かないものであり、成長も今の
お前達には十分必要なことだ」
するとアイアスは翼を広げ、皆を背に乗るように招く。
「答えは出したいと焦っても出ない。
焦っても勝手な思い込みで自分の中で作られた結果の答えでしかない。
ゆっくりでいいんだ、誰もお前達に今すぐ答えを見つけて立派になれと
までは期待していない。
ゆっくり考えた結果に出た答えを誇って生きて、それが本当の答えで
あるのならお前達を待っている者達はいないと気付くはずだ。
...答えが出てもそれぞれの道は続くのだから」
(成長が必要な種は焦って、花開くことはないだろう?
時間をかけて、ゆっくりとただ自分の信じている陽を待つ。
待ちながらどうしたらいいか試行錯誤する。
その間も種は成長してどんどん大きくなっていき、成長している間の
経験はきっといつか役に立つ。
未来へ希望の花を開かせるために、今は強い根を張って雨や風、
もしかしたらアスルペ様が台風を放つかもしれないが強く、ただ強く、
耐え忍ぶのだ、その先で私は待っている...いつかたくましく、綺麗な
一枚一枚の花びらを見せてくれ、若きライド家と若き未来の姫よ)
氷龍アイアスが植えた3つの種。
それは未来で何枚もの花びらになり、どんな光景を見せてくれるのか。




