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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
69/123

すれ違い。






 見た目は同じでもその中に潜む想いは真逆であった。






 「...イア...イア...イアーーーーー!!!!!」


メドリエは雷撃を体全身で扱い、イアへ猛攻する。


「...」


イアの雷撃は手からしか放たれずメドリエの攻撃は防げても、

サンダリアンの雷撃は避けるしかなかった。


「貴様にいつあの本を見せた!?幼少期からずっとあの書庫へ

入っていたのか!!!!!」


メドリエのイアに対する攻撃は凄まじくサンダリアンでさえもつい

イアへの攻撃が緩んでしまう。


「...気付かないお母様が悪いわ、イアは退屈な籠の中の鳥じゃないの!」


イアも雷撃を放つも余りにも威力が違いすぎる。


(...イアは何でクルーシアに...記憶が全然ないわ。

それにしても龍さん早く逃げてくれないかしら...お母様の強さはイアがよく

分かってる、だからあなたの元にお母様やサンダリアンが行ってしまったら

イアじゃ救えなくなってしまう...イアの気力がもつ間にどうか早く...)


と思いつつも体がついていかず意識が朦朧とし、倒れそうになる。


(...ダモス...アルディアさん達は...イアは何をしていたの...?)


思い出そうとするも猛攻が辛く、気力もぎりぎり立ってられるほどだ。


(...嫌な夢を見ていたわ、もうクルーシアは散々...ここでお母様を

やれれば...けどイアじゃ無理ね...きっと)


目の前の母は憎悪の瞳を娘にぶつけている。

それだけならまだしも殺意の宿る雷撃までぶつけてきている。

自分の雷撃は母を越えられない...とイアは自分の無力さに俯く。


「イア、誰が敵で母は貴様の何だ?その答え次第では殺さずにまた

あの部屋に戻してやるぞ」


イアが動きを止めたのを見たメドリエはゆっくり近付きながら

問う。


「敵は民を苦しめる王そのもの!それがお母様だとしても

その間違っている行為にイアは目を背けない!!!」


偽りのない言葉を母に浴びせ、それは間違いなく生きる事を自分自身で

困難にさせた。

だがそれでもイアは逃げない。


(...鎖鎌もない...もうイアに残るものなんて何もない...)


イアは俯きながら涙を流した。


「今更後悔しても遅すぎるではないか!母にそんな言葉を放つとは

...そんな子に育てた覚えはないぞ、イア!」


目の前まで近付いてきたメドリエは勢いよく平手打ちをし、イアは

倒れる。


(姫さん、こっわーいわー...あの子も逆らうなよ、めんどくせー)


少し離れたところでサンダリアンはその様子を見ていた。


(...また救えない...ごめんなさい、龍さん...。

イアはだめな子、誰も救えないならずっと一人でよかった...)


イアは倒れながらも前方にいる巨龍だけを見つめていた。






 「妙に静かだな...」


場面が変わるとグレム達は王城内を歩き回っていたがクルーシア兵と

すれ違わない事が気掛かりだった。


「...やはり何か起きてるようですね、おそらく王城内はほとんど

誰もいないのでしょう。

今なら逃げきれそうですよ」


ダモスは周囲に注意を払いながら言った。


「外でアルマ様とアイアス様達を待たせてるから早く見つけたいんけど

ヘリサ様達はどこ...?」


サクリの言葉にグレムとダモスは目を見開き、2人とも彼女を見つめた。


「...アイアス様?」

「...アルマ様?」


2人は同時に言いサクリは呆れたような顔を見せるも、


「2人で話されても困ります!

グレム、アルマ様は生きてるから安心しなさい。

ダモスさん、アイアス様もご無事でしたよ?」


サクリの言葉に二人は安心したような表情を見せ、


「...やっぱ死ぬはずねーよ、アルマ様はよ!」

「...アイアス様...氷姫と称されし彼女がここまで来るとは興味深い...」


グレムは涙ぐみながら言い、ダモスは腕組みし何かを考えているようで

またもや同じタイミングで発言した。


「...あなた達は本当に...」


サクリは呆れるも窓から外を眺める。


「...大きい龍がいる...!」


その言葉にグレムとダモスは同じタイミングで窓から顔を出す。


「...かっけー!あんなのに乗りてーな!」

「...あれはすご...イア様...!?」


ダモスは奥にいる龍を見た後に王城の手前で倒れているイアに気付く。


「...イアちゃんはもう敵だ...」


グレムも気付くと拳を握りしめながら呟いた。


「...なんで?」

「...何故ですか?」


今度はサクリとダモスが同じタイミングで言った。


「...同じタイミングで言うなよ...笑っちまいそうだ...!

それよりもイアちゃんに刺されただろ?その腹...」


グレムは笑いを堪えながらサクリのお腹を指さしながら問う。


「...え?刺されてないよ?イアさんがそんな事するはずないでしょ、

グレムの事だからどうせ夢で見た事を現実だと勘違いしてるんじゃないの」


サクリはグレムを疑うような目で見る。


「...あれって夢か...無傷なら実際に起こってねーって事だしな...

夢でも俺エルヴィスタんとこでクルーシア兵と戦ってたわ!

ブルードに何と戦ってるんだとかって言われてよ、イアちゃんがサクリの

腹刺してたからびっくりしたんだが夢ならいいわ!」


そう言うとグレムは大きな声で笑い、サクリとダモスも笑った。


「それよりもあの女の人は誰だろう...?」


そのサクリの発言にダモスはすぐさまイアの目の前に立っているその女を見る。


「...イア様!」


呟くとダモスはグレムとサクリを置いて走っていった。


「ちょ!ダモっさん、一人じゃあぶねーよ!」


出遅れながらグレムとサクリも追いかけていく。






 「...やっと追いついたな、エルヴィスタにはもうアルディアはいない。

これからはサリーシャへ残してきた仲間を連れて、一度父の元へ向かうぞ」


アイアスは先にエルヴィスタへアルディアを探しに行かせた氷龍達に追いつき、

既にエルヴィスタ付近にはアルディアがいないことを伝えた。


「はい!...そういえばアイアス様、ザイス様とレイラ様はどこへ?」


1体の龍の問いにアイアスは忘れていたかのように、


「すまない、言ってなかったな。

ザイスが傷を負っていたからエルヴィスタ付近の洞窟でレイラに看病させて

いた」


と答えるも周囲の氷龍達は謎めいたような表情を見合わせていた。


「...どうした?」


アイアスはその様子を不思議に思い、問うと、






「...いや、先ほどザイス様とレイラ様とすれ違って...アイアス様を追って

クルーシアへ向かったご様子でしたが...」


その発言にアイアスは驚愕し、アルマはクルーシアの方向を振り返った。




 クルーシアは我が子にとって間違いなく危険な場所。

母の選択はそれを聞いた時点で決定した。


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