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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
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生きれば。






 神の真上では不気味な輝きがいくつも見えていた。






 「余計な事をしやがるから新たな悲劇が生まれてしまうんだ、

俺ももう9000年近く生きてきたがあんなの相手したことねえよ」


グラウンド・アース、略してアースは少女を見つめながら呟くと

空を見上げる。

今現在クルーシアの真上はどんどん暗くっていき、いくつもの雷が見え、

少しずつだが雨も降ってきていた。

そしてクルーシア兵の大軍が少し離れた場所からまた迫っていて、

暴食達もゆっくりだが確実に近づいてきている。

彼らが素直に王城まで行かせてくれるわけもなく、少女の事も気がかりだった。


(...今になって俺は思う、神とはなんだ...。

この世界を創った時、俺達は新たな命にこの世界の繁栄を任せた。

本気でやれば神龍達でなら1年で多くの建物、生き物を創れてしまうが

それでは面白くないと王からの提案だった。

そして他の生き物である哺乳類、爬虫類、両生類を創ってからは予想してた

以上に繁栄していき、その中でも人類の知能、技術のスピードは

恐ろしさを感じた。

だが唯一の弱点として非常に体も心も脆い。

それに気付いた王は人類にならこの世界を任せられるのではないか、

他の生き物との共存も可能なのではないか、自分達の血を引く竜達をも

愛して、助け合ってくれるのではないかと当時の神龍会議で結論を出し、

俺達もそれに賛成した。

それから2000年ほどは間違いなく素晴らしい時代が続いていたと

俺は断言するよ。

だが7000年前から何かが変わったよな、王家は神との交流を拒み、

ライトニング・サンは消息を絶った。

だが何故今あそこに息子である7龍隊のサンダリアンがいる...。

もしやライトニング、お前は...だめだな、こんな考え事は...。

はぁー...普段見えないだけでいつでもそばにいるし、神っつったって

所詮単なる一つの命だぜ?

死ぬ時は死ぬし、生きていれば腹は空くし、昼寝だってするし、うんこだって

小便だってする、テレビだって見るし、風呂も入るし、可愛い女の子には鼻の下

伸ばすわ。

生きてるお前らと何にも変わらないんだが欲張りは何を欲するってんだ、

お前らの命を創ったのは好き勝手に殺し合いしろって思って創ったんじゃ

ねえ、自分のしたい事だけして生きろって思って創ったんじゃねえ!

生きていれば色々な出来事が起きる、それを助け合い、愛し合い、

理解し合い、支え合い、乗り越えてほしい...その先で心が満たされる

事の意味を知ったうえで生きるという役目を全うしてほしかったんだ。

生きる喜びだけじゃなく、生き抜くってのはどれほど辛く厳しい事か

理解し、何が本当の生きる喜びなのか、どれが本当の生きる意味なのか、

それをこの世界でお前達が生きる時間の中で見つけ出してほしい...

本当にただそれだけだったんだぞ?

なのにどうしてお前ら、人間は不愉快だからとか気分で他の命を奪える、

王家の何が偉い?

理解も助け合いも知らず、我慢もできねえなんてまだまだ未熟な生き物めが。

お前らはあれからの7000年間で何も学ばなかったのか?

望まれた命の分際で生きてる事に感謝もせず多くの命を奪い、食らって

過ごしているような奴らに俺は生きてもらいたくはない)


その思いを胸にアースは咆哮をあげる。

それは瞬く間に彼の前方の地を抉り、多くのクルーシア兵はその衝撃に

吹き飛ばされ、立てなくなった。


「...やるねえ、おじいちゃん」


土煙の中から現れた龍がいつのまにか近付いて来ていて、振りかざしていた

爪がアースを襲う。


「若いもんにはまだ負けられんよ」


龍の爪を角で受け止め、力比べになった。


「おじいちゃん大きいから僕これじゃあ不利になっちゃうなー」


押し合いはアースが強く、龍はその場に留まる事もできずに

どんどん後ろへ押されてく。


「ちょっと助太刀もありじゃない?...ヴァレー!ミラース!」


龍が叫ぶとアースの視界が一瞬揺らぎ、目の前には色欲がいるように見えた。


「...若いもんは群れる戦い方しか知らんのか?」


アースは力いっぱい押し、薙ぎ払うと龍は勢いよく倒されるが

ニヤニヤしながらアースを見ていた。


「...ハンサムなご老人だこと。あたしのペットになったらいいことして

あげるけど、どうかしら...?」


色欲は舌を伸ばしながらアースへ近付く。


「...おー、ミラーちゃんの容姿で言われるとたまらんわい!

だけどよう、俺はこの巨体だから夜は人一倍激しいぜ?」


アースはそう言うと色欲に近付くも嫉妬の幻影のせいで視界が揺らぐ。


「...ちょっと角が痛い...!...きゃ、ちょっと!!!えー!!!?」


色欲の胸にうずまるように見せかけ、角で上手く持ち上がるように

下腹部まで巨体を沈みこませると勢いよく持ち上げ、色欲を投げ飛ばした。


「...いったあーーーい!...あたしも小柄なほうではないんだけど、

あの力はなによ!フェディオ!どういうこと!?」


色欲は嫉妬ほど大きくもなく、翼もなく暴食よりも小さいが、それでも

龍であるアイアスよりも大きく小柄というわけでもない。

アースは翼のない4足歩行の神龍だが、巨体と角と前足の力は神龍の中で

一番なのではないかというほど。

動物で言うと見た目はサイが一番近く、もっと大きく、額に2つの角が

あるようなものだ。

嫉妬は翼もあり体格も一番大きく、アースと同等の巨体の4足歩行だ。

暴食は4足歩行で翼もあり、色欲より多少大きい程度。


「...僕に言われても困っちゃうよ...体力はやばそうだからなー、

このおじいちゃん...。

早くあなたの心に閉じ込められている僕達の兄弟を差し出しては

くれません?傲慢のあの子を」


嫉妬、色欲、暴食がアースの周りを囲んでいて、

メドリエとサンダリアンは王城へ続く道の手前で誰かと戦っているようだが

よく見るとそれは、






あの少女であった。




 ぶつかり合う3つの雷撃。

少女は味方か、アースの目にはどう映ったのか。


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