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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
59/123

開かれていく道。






 その足が止まることはなく、その想いが揺らぐこともない。






 「メドリエ様ー!一大事にございます!!!城内にて一人の大男が

メドリエ様を探し暴れまわっていて、その男は拷問部屋に閉じ込めていた

ダモス・へデヴフィンでありました!!!

看守のギルの姿がなく、隙を見て何らかの方法で鍵を開け、彼を

殺害して隠したのかと思われますがどういたしましょう...!?」


城内の廊下を焦りながら走っていた警備兵が一つの部屋に入ると

その部屋の主へと報告した。


「どうせイアはどこだとほざくのであろう...物好きめが、イアの本性を

知ってもなお本当に忠誠を誓えると彼は申すのだろうか...?

いいさ、彼は我が相手いたそう」


メドリエは派手な椅子から立ち上がると警備兵に案内させ、部屋から出た。

彼女が通った後は全ての明かり、電気が消え不気味に暗くなる。

外も夕日が沈み、光が入ってこない。




 「...頼む!通してくれ!!!通してくれれば手は出さない!

わたしが誰か分からないか!」


ダモスは襲ってくるクルーシア兵を体術でなぎ倒していく。

中にはダモスの事を知っている者もいるようで迷いを抱えているのか

少し離れたところで複雑な表情で見守っていた。


「...裏切り者が何しに帰ってきたー!?」

「捕えろー!!!」

「ライド家に手を貸しやがった男だ、皆手加減などするなー!」

「...ダモス様、お願いです...またクルーシアに忠誠をーーー!」

「メドリエ様に迷惑かけるなー!」


色々な言葉が飛び交う中、ダモスは自分の意思を強く持ち、前へ前へ

メドリエのいる場所を目指す。


「...もうよい!誰も手を出すな!」


突然、真後ろから声がした。

すると長い廊下を突き進んでいたダモスの真後ろに一人の警備兵と

共にその女はいた。


「...メドリエーーー!!!」


ダモスは自分を押さえつけようと掴んでいたクルーシア兵を振りほどき、

敵意の宿った目を女にぶつけながら叫ぶ。


「...相変わらずいい体格をしておる、だが我が愛しき娘をたぶらかし

ライド家に寝返るとはいい度胸じゃ。

ダモス・へデヴフィン、今更我に何用じゃ」


メドリエは歩み寄りながらダモスの顔へその細い手を伸ばしながら問う。


「地下の...あれはなんだ...」


ダモスは目の前に迫ってくる手を拒絶し、振り払いながら返答した。


「何を今更...今いるクルーシア兵は皆それを守るためにライド家を

殺戮しつくしている、元は貴様もだろうが?」


メドリエの血走った目が非常に不気味だ。


「...わたしは知らなかった...てことは今もそれが分からないまま権力で

従わされている者達も...もしやいるのではないか!?」


ダモスは周りにいるクルーシア兵を見ながら言う。


「...ふふふ、おかしなことを言う。

あの頃の貴様達で最後だったのだ、それを知らなかったのは。

今ここにいる兵も、兵舎にいる兵も皆あの事を理解したうえで我に忠誠を

示しているのじゃぞ?

元々あれを知った者は貴様らの時同様、皆で殺しつくした。

貴様と共に反逆した者は探し出し死で償ってもらったが貴様だけは

見つからなかったからヒヤヒヤしていたところイアと共にライド家側に

いると知らせが入り、絶好の機会だった...イア共々殺せるとな」


メドリエは笑いながら言い、ダモスは怒りで噛みしめながら聞いていた。


「...それでも母親か!娘の命を望んだのはあなたでしょう!?

望んだ命さえ自分勝手に終わらせる資格があるとでも!?

王家なら...偉ければ何をしても罪に問われないと...?

ばかな!...所詮あなたにとってイア様の命さえおもちゃに過ぎないんですね」


ダモスは呆れた表情でメドリエを睨む。


「我が作ってやったのだから我に従わねば娘ではないだろう...いつもいつも

イアは我に逆らい、反抗し、生意気で...本当に産まなきゃよかったと

常に思っていた。

可愛くもない生き物なんぞ、欲しけりゃ貴様にくれてやる。

あー、そうだ...ダモスよ、貴様はイアがただの人間だと思っているのか?」


メドリエは謎めいた言葉をダモスへ放つ。


「イア様は物じゃない...!

わたしの娘となんら変わらない一人の可愛らしい女の子ですよ!」


ダモスの発言にメドリエは膝から崩れ落ちると突然大声で腹を抱え、

笑い始め、周囲の一部のクルーシア兵もクスクスと笑っていた。


「貴様は幸せじゃろう?

何も知らないとは...何年もクルーシアにいて何故気付かない、

貴様や反逆した者達以外のクルーシア兵は何をしていた?

我の事も貴様は何も分かっていないようじゃ...ついてきなさい、

イアの本性を見せてやろう。

貴様の命もそろそろ朽ちそうだから、最後に我からの長年クルーシアに

忠誠を示してくれた事の感謝のプレゼント代わりにな」


そう言うとメドリエは警備兵を引き連れ廊下の脇にある階段を下り、

ダモスが「何か」を見た部屋のほうへ向かって行った。


(命が朽ちそう?...あの女は何を言ってるんだ...!

あっちの部屋は.....まさ...か!...あれがイア様...だと言う気か..!?)


ダモスはメドリエの後ろ姿を見開いた目で見つめていた。






 「おぉ、こりゃたまげた...氷竜の群れが王都へ向かう?...か」


場面が変わると老人は新聞のようなものを呼んでいて、その新聞の表紙には

何体もの氷竜が飛んでいるところを地上から撮られている写真が載っていた。


「...あんちゃん、面白い事になってんぞ...興味はねえのか?」


アルディア達は夜ご飯を食べた後なのかテーブルには食器が

置いてあり、アルディアはソファーで横になっていた。


「...」


アルディアは今日も畑仕事をしたのか顔や手が黒くなっている。


「...興味ねえかい、ただ殺すんじゃつまんねえから死ぬまでは

話相手になってもらうぞー。

...にしても氷姫アイアスは率いてないようだな、写ってないな」


アイアスの姿を探す老人のその発言にアルディアは思い出したくもない

エルヴィスタの事が頭をよぎった。


(あれ...この老人...なんでアイアス様を...?)


唐突にその疑問が浮かぶ。


「...アイアス様とは知り合いですか?」


アルディアは冷めた目で老人を見ながら問う。


「...お、やっと食いついたな?まぁ昔の戦友ってかっこよく言いたい

ものだが、そこまで親しいわけでもない」


老人はアイアスに興味を持ったアルディアに興味を持ち、


「...あんちゃんは今アイアスに会ったら死ねなくなるだろうな」


そう言いながら笑った。


「...エルヴィスタで会ったんです」


アルディアはポツリと呟く。


「...んあ?誰にだ...?」


老人はポカーンとした顔でアルディアを見つめる。


「アイアス様に死んでくれって言われたんです。

僕が弱いから誰もついてこない、生き恥だなーって僕はそれで思いました」


アルディアはつまんなさそうな顔で返答した。


「...アイアスがあの場にいたのか...!

だがあんちゃん、それは本当にアイアスだったのか?

...彼女がアルマの子であるお前に死んでくれと...言うはずがない...。

お前はアイアスの姿、声が分かるか?」


老人は何か疑問を持ったような言い方で問う。


「母さんもいましたし、本で知ったアイアス様の姿と同じでした」


アルディアは瞳を閉じながら言い、どこか寂しそうだ。


「...な、アルマが生きているだと...!?」


老人は驚いた拍子にふらつき足を滑らせ、尻餅をつく。


「あんちゃんはその光景を『見せられた』んじゃなくて、『見た』ん

だな?」


老人は尻餅をついた格好で言い、


「...見せられた...?」


アルディアはその姿を嘲笑うかのような表情で見ながら問う。


「...少し話が長くなるが暇つぶしがてらにでも聞いといてくれ。

7大罪龍の中の一体に『ゼラール・ド・ヴァレー』と呼ばれる罪龍が

存在し、確か王であるオールクラウンが取り込んでいたはず...

彼は嫉妬心からできており自分を崇めない者に対し憎み、嫉妬し、王の

能力を使って幻影を見せる。

そして、それは見せられる側にとっての大事な物や存在に影響し

実際にないことを見せられてしまうんだ。

まぁ...王が死ぬことはありえないし、心も王だけは未だかつて乗っ取られた

事がないからただの思い込みであってほしいんだが最近色々と不思議な

出来事が多く、王家も活発だ...氷竜達も何を考えて王家に行くのか

分からんし、7龍隊も今何をしているか分からんからな...とにかく

嫉妬が復活するということは非常にまずいと覚えておけ。

罪龍共の中で唯一、嫉妬だけは心に攻撃をしてきて、正面からやり合って

しまったら実体が見えない以上、攻撃も届かず倒すのがほぼ不可能なんだわ」


老人はそう話すと、アルディアは興味深そうな顔で見つめていた。


「7龍隊って初めて聞きました...」


その言葉に老人は、


「7龍隊は神龍達の実の子で姿、血、力を色濃く受け継ぎ、永い時を

生きている強き龍達。

彼らは幻龍アスルペが束ねていて、

水や氷を司る神の側近が氷姫アイアス。

火や光を司る神の側近が雷電王サンダリアン。

闇を司る神の側近が闇狼シャーガン。

地を司る神の側近が緑癒のドライズ。

生を司る神の側近が天主パルミア。

死を司る神の側近が地主サイドア。

そして王の側近が心眼ヴァルゴ。

もちろん罪龍共にも7龍隊のような実の子が存在してしまい、

何故心に宿る龍なのに子ができるかというと神の肉体、精神を

乗っ取った状態でなら子を成すことは可能であってしまう。

だが公にその名は知られておらず、なんだっけな...紅眼のシャーダク?

だかってのは何かの子だったはずだ...」


シャーダク。

どこかで聞いた名だ。

ソファーで仰向けになり思い出そうと考え込むこと約5分。


「...あいつが呼んでいた...」


アルディアは勢いよく体を起こし、そう呟く。


「...んあ?」


老人は尻を痛めたのか、優しく撫でながら謎めいた顔でアルディアを

見る。






「...エルヴィスタに攻めてきた僕と同年代ぐらいの人が呼んだ龍が

その名だったんです...!」




 シャーダクという名の龍。

以前見たあの龍は罪龍の子だという。

それなら確かにその力さえも納得ができてしまうものであった。


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