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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
52/123

縁。






 ライド家の生き残りとクルーシア兵によるあの戦いの影響は各地に

出始める。






 「...ったく、今回ばかりは疲れた、当分戦いなんてしたかねぇ」


クライズは自室のような場所のベッドで横になっていた。


(...あんなのが龍だと...?龍なんて存在じゃあねえ、バケモンだ)


クライズは氷龍に出会った時のことを振り返る。




 「アルマはとうに死んでいる!!!怯むんじゃねえええ!!!」


氷龍に向かってく者もいれば、怯えて背を向けながら逃げ出す者もいた。


「何を根拠に死んでいると断言した、小僧。

仲間を見殺しにするというこの行為を選んだ貴様に人の上に立つ資格など

ないわ」


前方にいる氷龍の言葉が荒くなるたびに放たれる冷気はより一層強く

なり、剣士たちの剣は彼女の肉体にさえ届かない。

逆に冷気によって周りにいる者達が一瞬で凍り始めた。


(...予想外だな...剣が届かなきゃ傷一つつけられねぇ、

他のクルーシア兵が捕らえてアイアスだと思ってたやつでさえ中々

手こずったらしいが、こいつぁーその上を行く存在だ、なら...)


クライズは氷龍への対策として何かを思いついたのか天を見上げると、


「シャーダクーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


と自分の龍の名を叫ぶ。

すると天が割れ始め、あの龍がすぐさま顔を出し、飛んでくる。

それを見た氷龍は突然後方を振り向く。


「...アルマなんかいねえだろ!!!小細工すんじゃねえ!」


あの行動はクルーシア兵にアルマがいると思わせ、精神的に

なるべく戦わないようにしたいのだろうとクライズは考えていた。


「賢いな、小僧。

だがもし私がただの足止めでアルマは子を救いにいったとしたらどうだ?

それよりもだ、仲間にばかり戦わせて貴様は向かってこないのか?」


その氷龍の発言にクライズは目を見開く。


(...俺に向かってこいと?アルマはいる?...いや、いないはずだ。

だが一応)


離れた場所で戦う仲間達を眺めながらクライズは決断を下す。


「...おい!10人ぐらい今すぐ戻れ!!!

アルマの息子達を死んでも奪われんじゃねえぞ!!!!!」


少し離れて怯えていた兵達に言った。

だがこれがとある悲劇への始まりとなる。


「ケリつけてやるよ...龍はお前だけじゃねえさ、シャーダク、

あいつに重い旋律を奏でてやれ」


彼の言葉に龍は応えるとあの鳴き声を出すのか口をいつも以上に大きく

開く、だが何も聞こえない。

なのにクライズはニヤリと笑みを浮かべ、氷龍は3つ目の龍を見つめていた。


「...悪く思うなよ?一瞬できめてやるから静かにしとけや!!!」


そう言ってすぐさまクライズは距離をつめ、いつのまにか手には

エルヴィスタでロイを貫いたあの槍を握りしめていた。


だが、距離をつめていたクライズの頬に氷のつぶてのようなものが当たる。


(.....は?)


彼は目の前にいる龍は動けないはずだと思っていた。

なら今のは何か。


(...風で冷気が当たっただけだ!)


そう思いながら氷龍に槍が届く範囲まで来ると、その槍を氷龍の臓物が

あるであろう場所へ勢いよく突き刺そうと声を出しながら力をこめる。


「...っしゃあああああ!!!」


名のある龍を捕らえることができると思っていたのだが槍がその肉体まで

あと1cmほどのところで止まる。

いや、止まったのは彼の腕だ。


(...緊張してんのか...俺?動かねえ...)


氷龍が動けないのであれば理由は自分にあると思い、困惑する。


(...ちょっと待てよ、おいおい...なんなんだよ!!!)


少しずつ足、首、体全体が凍る感覚に襲われる。

そしてやっと理解した。


(...動けんのか...?)


唯一まだ動く目で氷龍を見上げると、


「...氷龍と称されるものが1ミリの氷さえ意のままにできなければ

それは恥ずかしい事だろう?

どんな小さな池や水たまりでも私の纏う冷気により氷となり、

どんなに少なくても1ミリさえ氷があるのなら私は負けることが許されない。

少々眠れ、周りで凍っている仲間共々生きるか死ぬかは貴様らの運次第」


そう言うと氷龍は森奥へ戻って行った。




 「...あんなの今は当分会いたくねー、存在だわな...。

30人ぐらいいた中、生きてんのは俺と4人だけだった...

にしてもエルヴィスタに戻らせた奴らは死んで見つかるわ、

アルディアちゃんともう1体の氷龍に逃げられるわ...使えねえ兵は

いらねえんだよなー、ったくやんなるわーーー」


クライズは頭を掻き、瞳を閉じる。






 場面が変わる。


「...」


アルディアは目を覚ますと天井が見え、見渡すと生活感溢れる光景が

広がっていた。

窓から外を眺めると太陽が出ている。


「おう、目覚ましたんなら助けてやった俺に礼を言うのが普通だろうが」


突然扉が開くと薄毛で眼鏡をしていて、髭を生やした老人が入ってきて

そう言った。


「...助けを必要としてはいませんでした...出ていきます」


アルディアはふらつきながらも立ち上がると扉のほうへ向かう。


「...おっと、この家から出す気はねえんだ...罪人の末裔だろ?

お前さんは」


その老人は扉の前に立ち塞がる。


「殺してくれますか?」


アルディアは老人へ問う。


「潔くていいな、だがまだしてもらうことがたっぷりあるから

手伝ってくれや。

その過程で運良ければ死ねるかもしれねえしお前さんにとっても

好都合だろ、俺も人殺しにはりたくねえしそれなら単なる事故死で

済むからなー、で、返事は?」


老人は笑いながらアルディアの返答を待っている。






「よろしくお願いします」


と老人の問いにアルディアも笑顔で返事をした。




 クライズの体感した氷龍の強さ。

それは噂通りに規格外なものであった。

そしてアルディアの未来が今は揺らいでいる。


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