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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
災厄のパズル
45/123

信じた先に。






 そのために彼女は彼と繋がらず。






 (...ムーンイーター、すまないな。

せめて嫉妬の鍵の子さえいれば状況は変えられるが、あまりにも...)


アスルペは色欲をその場に留まらせることに精一杯で、エルヴィスタの

争いが気がかりだった。

暴食は奇声を発しながらその場に倒れていて、立ち上がれないようだ。


「...あなたは暴食でしょお!しっかりなさい!!!

...それにしてもかの有名な幻龍アスルペ・テミルス...8匹目の神龍とは

大層な呼ばれ方ねえ、足止めで精一杯ならただの龍で十分じゃなあい?

少なくともあんたにかつての争いの時のような仲間がいればこの争いも五分五分で

もうちょい長引いただろうに、所詮力不足なんて...哀れねえ?」


色欲は舌をチラチラと出すような特徴的な話し方をする。

時折アスルペの額間際まで舌を伸ばしてきて不愉快だが、今のアスルペには

どうすることもできない。


「...とある誓約があるのを貴様らは知らないのだろうー?今は強き龍達は

故郷で子供達をたくましく育ててるさ、貴様らを完膚なきまでに消滅させる

ためにな」


色欲の発言に敵意剥き出しで返答する。


「氷姫アイアス、雷電王サンダリアン、緑癒のドライズ、闇狼シャーガン、

地主サイドア、天主パルミア、心眼ヴァルゴ。

これからお話することはまだ起きない出来事なんだけどーお、もし起きたら

あなたはどう思うか教えてほしい...ニャン」


そう言うと色欲はアスルペの額を舌で舐めた。


「...その7体の龍達が力を合わせれば1体の神龍に匹敵すると竜族の中では

言われているわねえ。けど彼らがもしあたし達のお仲間さんになったら

あなたはどうするーう?」


アスルペは色欲を睨みながらもその発言から不気味さが消えなかった。

実際そうなることはない。

そう確信を持っていえるほどあの7体は力のある龍だとアスルペは信じていた。


「安心したまえよ、それは起こるはずがない。彼らを慕う者達も合わせれば

かなりの大群を相手にすることとなる、それは7大罪龍の貴様らとて、容易に

手出しはできないであろう、ましてやたかが3体...すぐ片付いてしまう。

それともまたかつてのようにわたしたちを敵に回す気なのかね?」


 かつて約7000年前に起きた戦争は今現在レイディアに住む者達のなかで

「悲劇のレイディア戦」と呼ばれている。

それから5000年後、今現在レイディアに住んでいる者達からすれば

2000年前に起きた「神龍大救出戦」と呼ばれるかつての争いがあり、

その内容は5体の神龍が大罪龍に呑まれ、世界の至るところで暴れまくった。

それを1体の神龍、ライド家、農民、アスルペ、上記の強き7体の龍達、

レイコ、鍵の子と呼ばれる者達が協力し合い何とか神龍を救うことに

成功したのだ。

だがそれでは6体しか神がいない事になるが、あとの1体、ライトニング・サン

は6000年ほど前から現在まで行方が分かっておらず、時折その姿を

見たという情報がちらほら出ている事で神達もさほど心配はしていなかった。

そしてライド家の一部はその救出戦も罪人の末裔である者の仕業だと噂を

広め、その噂を聞いた他のライド家達や王家、農民さえも少しずつ、

今まで以上に罪人ルヴィー・ライドの末裔達から距離を置くようになって

しまった。


「みくびるんじゃないよ、本当に恐ろしいのはこれからなんだからねえ」


色欲はボソっと呟くと微かに口角を上げた。

真っ暗な夜の中うっすらと不気味に輝く...俯いた色欲と倒れていた暴食の

目が合った。






 場面が変わる。


(皆...皆お願いだから一人にしないで...!私を置いて行かないで!)


クルーシア兵を相手しながらサクリは涙目ながらも戦い続けていた。


(誰が敵で誰が味方か分かんないよ...どうしてヘリサ様はダモス様を刺して

いるの...グレムは一人で暴れてるし...見えない敵でもいるの...?

本当は...私だって怖いのに...ここは最前線で見えないけど奥のほうにいる

アルディア様はご無事だろうか...。せめて私が守らないと)


サクリはさすが最前線を任されただけはある。

剣の扱い、体の使い方を熟知していて分類で分けるとすればパワー型というより

テクニック型だ。


「サクリ!」


ふいに横のほうから声がして、顔を向けるとブルードが駆け寄ってきた。


「...ブルード!グレムは何をしてるの!?」


周りに敵がいないか確認し、息を荒くしながらも話す。


「...俺にも分からないが、味方の一部様子がおかしい...お前は無事な様子

だったから声をかけたが本当になんともないか?無理するなよ、

調子悪いのなら下がって、アルディア様を守りに行け!」


サクリはひとまず目の前のブルードを見て安心し、その声に自然と涙が

溢れてしまうほどの安心感を覚える。


「...ううん、私は大丈夫...。だけどヘリサ様がダモスさんを刺したり、

グレムが...周りの皆もどうしちゃったの...」


頬を大量の滴が伝う。


「...お前に似合わない涙なんて流すな」


ブルードは優しくそう言うと人差し指で涙を拭った。


「...ヘリサ様もグレムも俺が様子を見てくる、お前は最前線から一旦退いて

アルディア様のもとへ向かえ、ダモスさんの連れてたお嬢ちゃんも姿が

見えないから安否の確認を任せる。

...いいか、サクリ。

悲しみや不安や迷い、そういう涙はお前の選択を混乱させるものだ、

お前の信じた仲間であるヘリサ様やグレム、もちろん俺だってお前の目には

弱く見えるのか...?

だとしたら俺はそれが悲しいよ...。お前の涙は守るべきものを守って、

自分の選択した行動、信念が正しかったって証明される時、つまりどんな困難

さえも乗り越えた暁に流す自分を称える祝福の涙であってほしいって...

少なくとも俺はそう思ってる。そういう涙なら拭う側もいい気分になれるだろ?

...ほら、行けよ。あの丘までの道は俺達が作ってやる」


ブルードは後方からこちらへ向かってくる数十名のクルーシア兵に気付いたようで

サクリに早くここを離れるように促すと騎士兵を周りに呼ぶ。

大半は一人で暴れまわっている者が多いが、なかにはその呼び声に

気付く者もいて20名ほどの騎士兵がブルードとサクリの後ろで整列した。


「前方の丘までサクリを護衛、その後周りのクルーシア兵を倒すぞ!!!」


ブルードの掛け声に騎士兵達は士気が上がり、サクリはブルードと数秒見つめ

合い、お互いの選択を信じた。






 「進めーーーっ!!!!!」


自分の選択を信じる者はその声と共に駆け出していく。




 信じた以上迷わない。

それが彼女にとって正しい選択であると証明するために。


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