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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
血筋の復活
34/123

張りめぐされた糸のように。






 その月が、レイディアへ始まりしカウントダウンを知らせていた。






 「...気抜けねえな...グループとは言っても30人ほどいんだから

あんまり離れねえようになっ!」


グレムが騎士兵達へ声をかける。


「グレムさん...ここさっきも通りましたよ...!」


そばにいた騎士兵がそう返答すると、


「...なにーっ!?これもやつの能力かあっ!?」


グレムはキョロキョロ辺りを見渡しながら言った。


「...隊長が方向音痴って...本当に呆れるわねっ!」


隣を歩いていたサクリがグレムへげんこつを食らわせた。


「...いってえっ!!!...お、俺のせいかー!?」


グレムはまさか自分が方向音痴だとは思っていなく、

げんこつを食らって涙目になりながら自分のミスに驚愕した。


「俺についてこいっ!!!

...なんて張り切ってたのは他に誰がいるっていうのっ!」


サクリは呆れ顔でグレムへ言う。


「...おい、あれ...なんだ...?」


グレムは突然道の先を見つめながら指を指した。


「...なにって...私に言われても分からないけど...祠...?」


サクリと騎士兵達はグレムの指を指した方向を見ると祠があった。


「結構古そうな感じだな、調べてみっか!」


グレムが近寄ろうとしたが、


「...待ちなさいっ!誰かの所有物かもしれないじゃない、

そっとしておいたほうがいいわ!」


サクリがグレムを行かせないように腕を掴んだ。


「お宝あっかもしんねえじゃんか...確かに面倒な事はごめんだけどなあ」


グレムは興味深そうに祠から視線を逸らさずに言う。


「...ならちょっとだけよ!

グレムと私で祠を見てきます、他の皆はここで待っててください...!

もし私とグレムが少し経っても戻ってこなかったら近くのグループに

知らせに行く者と祠を調べる者に分かれて行動お願いします!

...では行ってきます!」


そう言うとサクリは先に祠のほうへ行ったグレムを追っていった。


「サクリちゃんはグレムの事好きなんだな」


見送っていた騎士兵の中の老人がポツリと呟く。


「...じっさま!そんなわけないじゃないですかっ!

あんないい子が、あんな口の悪い隊長のどこに惚れるんですか!

あんまりバカな事を言うと怒られますよ!」


老人の隣にいた若い騎士兵が返答した。


「...そうか、そうか...にしてもおめえも何で顔赤くしてんだ?」


老人の言葉に若い騎士兵は顔を両手で抑えると付近にいた騎士兵

の視線が一点に集まった。


「...え...!?...なっ、なんですかっ!?まさか僕はサクリさんの事

好きなわけないですからねっ!?本当に警戒してないと怒られますから

皆してこっち見ないでくださいよーっ!」


若い騎士兵は顔を赤くしながら俯くと騎士兵達は笑い合った。






 場面が変わるとエルヴィスタが遠くに見える距離にクライズと

竜に乗った者達がいた。


「...やっとかぁ...頼む、まだいてくれよな...」


クライズは冷や汗を流しながらも、エルヴィスタの方角を見つめる。


「おいっ!てめえらは村を囲むように散らばれーっ!!!

合図をしたら一気に仕留めっから出遅れんじゃねえぞっ!!!

イアとダモスだけは見かけたら必ず仕留めろ!!!

逃がしたらその場で即処刑してやっから覚えとけっ!

...行けっ!!!」


クライズの言葉に竜の背に乗る者達はスピードを上げ、エルヴィスタを

覆うように散らばった。村の上空に竜の背に乗った者達を見た民間人達はそれが

ヘリサや騎士兵の仲間だと思っているのか逃げたり、気にする様子がない。

上空とは言ってもかなり距離が離れていてクルーシア兵の証である紋章までは

見えないのだ。


「...くっそ!騎士兵の姿もねえか...所詮袋のネズミ...

一人ずつ処刑していけば分かるな...シャーダク、吠えてねずみ狩りの

始まりだとくっそたれ共に告げるがいい!」


クライズは言い終え、シャーダクと呼ばれる龍の首を撫でると、


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッ!!!!!」


村周辺に低く、不気味な音が聞こえた。

それは耳に残る嫌な音響だ。


「これで動けねえはずだ...!唯一動けたのはあの忌まわしいダモスだけ、

行くぞ...シャーダクーーーッ!!!」


クライズが叫び、エルヴィスタへ攻め込むと竜に乗ったライダー達も

続々と村へ攻め入ってきた。


そして間もなく、村周辺は悲鳴と血しぶきで包まれた。


「ダモスさんはどこだーっ!?」

「アルディア様ー助けてくれーーーっ!!!」

「騎士兵達がいない!!!」

「アルディア様と騎士兵達に見捨てられたんだーーーっ!」


民間人達はやっと平和が訪れ安心していたが、その平和も突如終わりを

告げられた。ちょうどよくアルディアや騎士兵がいない事に疑問を持つ者も多数

生まれ、クライズ達もイアやダモス達がいない事に気付き始めた。


「...おいっ!!!よく聞け、ライド家!!!

俺達はクルーシア兵!!!

イアとダモスというクルーシアのもんが最近までここに潜伏していて

急にこの村には当分騎士兵達がいないって伝達してきてなー、

おかげでやーっとライド家を絶やせると思って喜んで駆けつけてやったよっ!!!

前も俺を見た事がある奴らもいんだろ?

...ただ俺らはイアやダモスほど鬼じゃねえからまた言ってやるよ、

俺らの仲間になんねえか!?クライズ様、仕えさせてくださいって

土下座してみろよ!!!

イア達が憎いだろうになあ!!!騙されて可哀そうに...

なんなら一つだけ助けてやる方法があるから教えてやるよ、

簡単な事だぜ?騎士兵かイア達の居場所を吐けば俺達の仲間にしてやるよ、

俺もイア達が急に伝達してきた事に疑問でなー、ライド家裏切ったんだろう

けど本心知りてえから逃がしたくねえんだ...で、居場所はどこだ?」


クライズは民間人が半分程度残ると嘘をつき、ライド家を取り込もうとした。


「...アルディア様達がそんな事するはずないだろう!」


年配の男がクライズへ言うと、


「...あぁ?力の差が分かってねえのか...いや、俺が強すぎて

分かりたくとも分からねえんだな...教えてやるよ...」


 それは一瞬だった。

クライズの腰にあった剣が年配の男の喉を貫いていた。

その光景は残った民間人でさえも今目の前にいる男が只者ではないと

いう事を理解させられた。


「...そういえば王都へ向かいました!!!出向く前に話してたのを

耳にしたんです!

アルディア様やイア様がわざとそういう作戦を立てて、根本を叩くと!」


一人の男が言っちゃいけないような話だったように演技をして何故か嘘をついた

が、クライズにとってその嘘はあってはならないものだった。


「...アルディアってのは誰だ」


クライズの返答に民間人達は戸惑った。

これは答えるべきか、だめなのか。


「...言わねえとそこの妊婦から先に処刑していく...言え...くそ共が...」


生き残った民間人達の中に数名の妊婦であろう者達がいた。

クライズは弱みをつくためにわざと残したようだ。


「...ミラ...、アルディア様は...アルマ様の息子...ごめんなさい、

アルディア様...アルディア様...!」


そのミラと呼ばれる妊婦の隣にいた夫であろう男は仕方なく言うと

泣き崩れた。


「...いたのか...息子が!!!」


クライズは叫ぶと剣を泣き崩れていた男の背へ刺した。


「...シャーダク、やれ」


クライズの指示を聞いた龍は残っていた民間人、妊婦でさえ瞬く間に食らった。


「おいっ!!!てめえらはさっさと王都へ戻って奇襲が本当か確かめろ!

俺は用が済んだらクルーシア軍と共に帰還する...

さっさと行けえぇぇぇっ!!!」


付近にいた竜を扱える者へ指示したクライズは、これ以上にないほど

怒りが溢れていた。






 「...もう少しで王都クルーシア...軍は多いのかね?」


場面が変わるとアスルペは王都の周辺を飛んでいた。

北のほうにある王都は死の墓場からの帰り際多少見えるのだ。


「...それにしても静かだな...ザイス達を救えるのなら

行きたいが一人ではきつそうだな」


普段、演習をしているであろうクルーシア軍がどこにもいない事に

アスルペは疑問に思っていた。


「少し前に私たちとぶつかり合ったばかりだというのに既に新たな戦場に

出向いているのか...か弱い雌龍にはとても怖いよー...王都クルーシア」


アスルペはザイスがいるであろう竜舎を探したが中々見つからない。


「...どうせなら近況聞きたいな、ザイスよ...本当にどこにいる」






 「.....はぁはぁ」


場面が変わると息の荒い呼吸をしている者が真っ暗な場所にいる。


「飯だ、アイアス。食って、さっさと怪我を治して王都に服従を示せ」


竜の餌係だと思われるクルーシアの警備兵のような格好の男が竜舎に来て、

大量の肉を置く。


「あとは任せたぞ、見張り番」


警備兵の男はそう言うと竜舎に老人が入ってきた。


「餌の当番も大変なもんだ、ご苦労さんよ」


見張り番の老人の言葉に餌係であろう男はふんっと鼻を鳴らすと

違う竜舎へ餌をやりに行ったようだ。


「...体は大丈夫か?...王都は嘘つきだよな、俺もさっさと出て行きたいん

だが少々我慢しなきゃなんねえんだよな。

...申し訳ねえけどよ、俺は竜の言葉がわかんねえ。

だからこれからの事は独り言だと思って聞いてくれや。

おめえさん、ザイスっていうんだろ?」


男は傷だらけで衰弱しているであろう竜を心配しつつ、名を言った。

真っ暗な竜舎の中、ふと月が照らしたその姿はあの時アスルペと語り合った

ザイスであった。

そしてザイスは自分の名を呼ばれた事に少々驚いた。


「...ライド家との醜い争いで1頭の龍に出会った。

その龍が言ったんだ、友であるザイスという竜と話してみてほしいと

俺も王都が憎い、だがこんな年寄りがここを離れたら生きていけないと

思った...だから嫌でも従ってやってきたがあの龍に出会って

自分の本当にしたい事に気付けたんだ...故郷へ帰りたい...

...ただ居心地のいい場所へ帰りたい...俺の背負っている罪はきっと

多いがまだ罪のない若いもんを偽りのないように育てていつかきっと

ライド家の、アルディア様の力になってほしい...俺がなりたくても

なれなかった分も...。

お前さんだって帰りたいだろ...仲間たちに会いたいだろ...

憎むよな、クルーシア軍を。

だが全員が心から慕ってるわけではない、俺の仲間も王都を憎んでいる。

だからどうか、お前さんとも仲良くなっていつかライド家として

この憎たらしい王都に抗っていきたいのだ、アルディア様達がじき

助けにきてくれる...それまで頑張って強く生き抜いてやろうじゃねえか、

手を貸してくれや?」


老人が竜へ声をかける。


「キュルルルルルルルルーーーッ!!!」


ザイスは氷竜特有の甲高い鳴き声で吠えると、


(もちろんだ、ご老人)


そう思ったのだった。






 場面が変わり、上空をとてつもないスピードで飛ぶアスルペ。


(今の鳴き声は間違いなくアイアス...いや氷龍達のもの!!!

ってことは、そこにいるのか...!






...ザイス!!!)




 絶望の中、一人と一体の意思が強く固まり、その強き意志は強き救いを

引き寄せた。

次話、王都と峡谷で展開が大きく動く。


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