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夢想の中の真実から。
「...ディア......アルディア」
誰かが青年の名を呼んでいる。
(...誰だろう、今すごく心地いい気分なのに)
そう思いながら眠っていたアルディアは瞳を開けた。
「......誰?...っていうか皆はどこだろう」
自分の名を呼ぶ声が聞こえた方を向きながら呟くも、それよりも周りで寝ていたはずのイア達がいない事が不思議な様子でキョロキョロと辺りを見渡した。
「驚かせてすまない、しばし仲間達にはご退場して頂いた...というか、君だけをあの場から引き抜いた。今この場には私と君しかいない、それに人も龍も大罪龍でさえも私が作ったこの場所には干渉する事が不可能だ。だが、身の安全は保証しよう、君との会話が終えたら仲間達と眠っていた拠点に戻すと約束する」
誰もいないはずの森の中からまたもや先程と同じ声が聞こえ、しかもその人物はアルディアだけを大勢いた中から誰にも知られずに引き抜き、別の空間ともいうべき場所へ連れてくるという常人にはあり得ない事をしてみせた。
「俺にはあなたが敵だとは思えません。初対面の人物相手にこんな事言うのは甘いのかもしれないけど...この場所はなんだかとても心地いい」
姿すら見えず、ただ声のする方を向いて話す。
「...確かに甘いな、だがこの場所が心地がいいと思えるのなら私達は『今だけは』敵ではない...まだ味方とも言えないが、この後に君が現実世界へ戻っても私の事を忘れていなければその時点で私達は仲間だ。だが君が私の事を...いや、私の言葉を忘れてしまっていたらその時点で君と私は共に『運命の分岐』を歩む事になってしまう、とりあえず難しい話はこれぐらいにしておいて本題だ。
短い期間の中で森を開拓し、最低限とはいえ拠点を作ったのはいい判断だが、これから早急に竜と竜人族の仲間を増やすんだ」
その声の主は最近アルディアやイア、グレム、サクリ、ニコル、その他の数十人の仲間達で簡易とはいえ拠点を作った事を知っていた。
「どうしてそれを......それに仲間を集める前にしなきゃいけない事がまだまだあります」
アルディアは自分達の行いが知られていた事に驚きながら話す。
「マスター曰く、『時間切れ』らしい。間もなくもう一つの世界が動くと共にこの地に二体目の大罪龍が上陸し、すぐさま君達の息の根を止めるために破壊の限りを尽くす......悲報で申し訳ないが、これはもう避けられない事で、この『未来』を私は君に告げに来た。心眼の彼が言うには『三人の男女との約束のために紅の姫が傷だらけの竜の群れと共に、癒しと力を兼ね備えた勇気ある者が多くの竜と共に君達と『憤怒』へ抗うとのことだ」
その声の主が言う「未来」が真実なのか、偽りなのかは分からない。だが、大罪龍の一体である「憤怒」がもう間もなく自分達を殺しに来るという。それを聞いたアルディアは口を閉ざしたまま、何かに気付いたように空を見た。
「......マスターっていうのはきっとアスルペの事ですよね?それにあなたの事も知っている気がする...あの日、老人が教えてくれた王の側近、『心眼』ヴァルゴなら未来を視れるはず」
老人との日々を思い出しながら話す青年の言葉に声の主は鼻で笑い、
「勘が鋭いな、確かにこの『未来』はヴァルゴからマスターであるアスルペ様を通じて他人の夢に干渉できる私が君に知らせるようにと指示を受けてきた。つまり仕組みを教えてしまえば私は君と今現在『会ってはおらず』、ただ君の『夢の中で話しているだけ』。だからこそ君がこの『夢』を忘れずに朝起きたら早急に仲間を集めてもらわなきゃ困るんだよ......とは言ってもどっちにしろ、『紅の姫』と『勇気ある者』が仲間を引き連れてくるらしいけどヴァルゴが言うには容姿までは確認できなかったらしい」
「夢に干渉できる」。
それを聞いた時点でアルディアは声の主が誰なのかを理解し、
「..未龍の仔......天主パルミア様...ならこの心地良さはここが『鼓動の揺り籠』だからか!?』
と目を見開きながら辺りを見渡した。
「その名も知ってるなんて物知りだね、マスターかアース様から学んだってところかな」
声の主は「天主」パルミアでこの場所は神器であり、フェディオ達が狙っている「鼓動の揺り籠」らしい。
「さて、もう伝言は言ったから君を戻すよ...私にもこの場所にももうあまり時間は残されていないようだ」
パルミアは現在、未竜族の根城である雲の上の巣から神器である『鼓動の揺り籠』と呼ばれる一見ただの大きな鳥籠の様な空間を通じてアルディアと話していたが、地上から多くの不気味な竜達がこちらへ向かってきているのを遠目から確認して呟き、
「...え、パルミア様のほうも何か異常が起きているんですか...?」
と言う青年の問いに、
「仲間達に異常が起きてる時は私達にも異常が起き、仲間達が戦っている時は私達だって戦っている。異常の根源が『敵』である以上、私達はそばにいなくとも時間も感情も共有し合っている。たとえ人と龍の価値観は違えど『仲間』とはそういうものだと私達、龍族は人から教わったのだよ。だから君達の元に大罪龍が現れるのなら、君達を仲間だと想っている6龍隊やアスルペ様、他のライド家達の元にも大罪龍が現れるはずだ......助けに行けずに申し訳ない、健闘を祈る」
パルミアが言い終え、約数秒後にアルディアは再び無意識に眠りにつく。
場面が変わると、
「君が天主パルミアちゃんだね!!!......美しい。大人しく神器をこちらに渡すか降伏すれば仲間達にも傷一つつけないし、君を僕の妻にしたっていいんだけど!?」
空中からパルミアの姿を捉えた爪の鋭い龍、ゼラール・ド・ヴァリーが叫ぶ。
「薄気味悪い竜達を引き連れて神器と私を奪いに来たのか?...なら私を惚れさせてみせろよ、力任せに爪を振りかざす事しかできないお子ちゃまに私が見合うとは思わんがな?」
パルミアが煽るように目を細めてヴァリーの爪を睨む。
「...あー、イラつくなー......やっぱりいらないよ、君や幻龍のような口が達者なのはこの僕にこそ見合わないからあぁぁぁぁ!!!!!」
煽りを受けた彼はパルミアへ爪を構えて勢いよく翼を動かした。
タイムリミットは突然に。




