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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
血筋の復活
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隠し事。






 「分かった、ありがとう...。あ、私達の村にアルディア様達を連れて

一度、帰る事になったから着いたらトーダスも少し休んで!

最近は色々ありすぎて疲れたでしょ...?」






 ヘリサは不安な表情を一瞬見せるもすぐに笑顔をつくった。


「僕は竜だ、人を乗せて飛ぶぐらいはなんてことないさ。

だけどアルマの息子はこれから大変だろう、哀れな子。

そうだ、あのクルーシア人達を主はどう思っているんだい?」


竜は自分の主人や、よほど親しい者以外のことはあまり気にしない。

それぞれ個性はあるらしいが、このトーダスの口調は結構厳しかった。


「トーダスは強いね...私なんかアルディア様達には言えないけど

アルマ様の手紙を読んだ日はずっと布団で泣きじゃくってたよ...。

でもアルディア様は哀れなんかじゃない...希望なのだから私達が持ってる

知識全てアルディア様に引き継がせるのが使命よ!

...それからイアさんとダモスさんはいい人達だと思う...だから

味方かっていうとそこらへんはまだ何とも言えないから様子見かな。

みんなを呼んでくるね!」


ヘリサはそう言い、民宿に戻っていった。


「いつも言ってるだろう、甘いんだよ。ヘリサは...」


静かな丘にその声だけが響く。






 それから少し経ち、丘の上に4人と1体が集まっている。


「空の上で襲われたりしたらイアの魔法でも当たるかどうか...

そこらへん何か対策はしているのかしら?」


イアの心配事にも


「空で襲われる事はまずないので対策なんてありませんが、そうなったとしたら

トーダスの判断に任せます!」


少女は少々呆れた表情で微笑し、


「イアはまだ死にたくはないわ、竜さん任せた!」


そう言うと一番乗りで竜の背に乗った。

それにアルディア、ヘリサ、ダモスの順で乗ると、


「それじゃ行こう!トーダス、エルヴィスタへ!」


その一言で背に4人を乗せた竜が空高く舞う。




 空からの景色は絶景だった。

前回乗った時はイアを探していたり、夜だったりで気にもしなかったが

太陽の光に照らされている場所は美しく、目に映る光景が新鮮。

3人は風を浴びながら眠っていた。

ふと気付けばダモスの足は傷跡は残っているが筋が再生されていて、

おそらくイアの魔法により再生しつつあるのだろう。

ただアルディアだけは飛んでる竜をこまなく見ていた。


「僕の事が気になるかい?アルマの息子よ」


唐突に声が聞こえてきた。

その声の主は今自分が見ている竜だとすぐに分かった。


「...君が話しかけてくれたの?...でも契約者以外その声は

聞こえないはずでは...」


間違いなく竜と話している。

夢ではない、現実だ。


「今は僕しかいないだろう、君は知っていたはずだ。どうして小さい頃から

...」


竜の声が急に途切れる。

何があったか周囲を見渡すとヘリサが起きた。

ただそれぐらいで話を辞めるほどの事かとアルディアは不思議そうな顔を

浮かべる。

テレパシーは脳内に声が聞こえ、それに脳内で答える。

ならバレるわけないのにという疑問が浮かぶ。

唯一の例外は神龍だけで人の言語を口にする事が可能。


「...眠いのに...トーダス何か話さなかったー?...そっか、

聞き間違いかー。

あ、もう少しで着くね!...アルディア様どうかしましたか?」


竜に問う彼女をアルディアはずっと見つめていた。


「竜と話す時って他の人が近くにいても問題ないの?」


その質問にヘリサは複雑な表情で、


「うーん...話す時は人により瞳や額、頬、腕、手のひら、背中、太もも、

首、腹などに契約している竜によって形の異なる紋章が浮かび上がりますし

話している間は竜の声以外の全ての音が微かにしか聞こえなくなるので

戦いの最中などにはなるべく話さないほうがいいですね。

契約をすると魔法やテレパシーにも『ドラゴンフュース』という一種の

エネルギーのようなものが必要となり制限されるので常時は使えません!」


アルディアは考え込み、ヘリサはその姿を見ると微笑んでいた。


「竜言の愛もテレパシー?」


その質問にはヘリサも悩みながら、


「竜言の愛は私も身近にいる者も授かっていませんがアルマ様の

祖父様が授かっていた者の中では一番最近の事です。

存在自体が希少なので100年に1人生まれるかどうかですけど

ルヴィー・ライドの絶望の血を継いだ者から多数出たってのは

有名で、その血が持つ能力って事でその能力を『神龍からの呪い』とも

言われていますがそろそろ生まれ持った存在がいてもおかしくはないですし

もしかしたらアルディア様は血を継いでいますし授かっているかも...。

私はそれを呪いだとは思いませんよ?全ての竜と話せるってのは

この世界では何よりも心強い武器だと思います!」


ヘリサは笑いながら話し、アルディアもそんな能力が自分にあるとは

思わず夢物語だと笑った。

普段から竜が身近にいるわけでもないし、1日の大半は森で読書をしながら

寄りかかる1本の見慣れた木々に挨拶するぐらいしか外にはでなかった。


「そろそろ見えてくるはずで...ん?」


ヘリサが真下を見ると煙が漂っていて、金属のぶつかり合う音や竜の

悲鳴が聞こえた。


「あれは...爺や!トーダス!今すぐ降りて!」


竜は急降下で地へと向かい、イアとダモスも眠そうな目で何が起きたかと

不思議な表情をしつつ下を見ると察する。


よく見ると戦っている者達がいた。


「トーダス、アルディア様をお守りして!イアさんとダモスさんは

私と戦えますか!?アルディア様にはトーダスの背にいてもらいます」


イアとダモスは勿論といった表情で、


「ダモス、傷口は癒えたようだけど集団戦の腕は鈍ってないわね?」


少女は大柄なたくましい男にそう問い、


「まだまだ鈍ってはいられません!闘将ダモス、ここはアルディア様の

お手本となるような戦いぶりを見せられればと」


男も若々しい体をほぐしながら言う。


「大柄なあなたとスリムなアルディアさんでは体の使い方が違うから手本には

ならないと思うわ、絶対。」


身内話をしているとヘリサがやれやれといった表情で、


「お二人さん!会話はそこまで、白装束はエルヴィスタの騎士だから

手を出さないように!何かあれば私の名を出してください!

行きますよ!」


3人は地面まで降りれる距離までくると竜の背から降りてった。

敵、味方合わせて60人ぐらいだろうか。

竜も戦っているようだ、牙はするどいが二足歩行で羽もないところを見ると

どちらかといえば弱い部類の竜だと思った。

アルディアは死んでいる者達の冥福を祈りながらも3人の戦いぶりを

目に焼き付ける。


 急に何か嫌な予感がし、鳥肌が立った。

それは竜の背の後方での何かの気配、その事を小声で竜に話す。


「後ろに気配を感じる...」


気配がした方向からアルディアは物音を聞き取り、振り向くと目前に

刃が迫っていた。


「トーダス!」


その叫びとほぼ同時に尻尾で打ち払われ、男は竜に睨まれると逃げていった。


「...トーダス、ありがとう...!」


あまり竜との会話は慣れていないが声をかけた。


「僕を呼び捨てか...。

それはアルマの子に免じて許すとして、物音がしてからの反応は悪くない。

まずは何か自分に合う武器を見つけて戦い方を覚えるといい。

生きたいのなら学び、精進し、強くなりなよ、アルマの子ならできるはず」


最後の言葉が何か背を押してくれるような温かいものに聞こえた。


「母さん、強くなる...僕も皆を助けたい、救いたい...

けどすぐには強くなれないから少しずつでいいってヘリサさんは

そう言ってくれたんだ...今は戦ってる皆を感じながら学ぶよ」


アルディアは悔しくも、今できる事をしようと必死だ。




「モトメルモノ...ココニアル...ワタシモ...キミヲモトメテイル

ジカンガナイ...チカラアゲル...」


ふと最近よく聞く声が聞こえた。

リュックから見える卵にアルディアとトーダスは同時に視線をやる。


「話す卵なんて僕も初めて見たよ...アイアスも確か卵の時点で話せたって

言ってたけどそれは何を表しているんだ...?アルマといい、君といい

ライド一族には驚かされる...だから楽しませてもらってるけどね。

アルマ・ライドの息子、アルディア・ライド。

せっかくだから力を貰うといいかもね、どういう意味か僕も分からないけど」


竜のトーダスさえ知らない事。

でも強くなれるのなら...と。


「みんなを守れる強さを導いてほしい、誰も失わなくていいように。

僕を導いてくれ...」


そう言いながら、アルディアが卵に触れた瞬間、


卵から天へと眩い光が付近を照らす。






「導かれたのは私のほうだ。待っていたよ、絶望と希望の子。

道化が現れ、神の死に訪れる血と闇が世界を包みし時、繋がりし羽で抗え」




 心は死ぬと同時に新たな心が生まれ、「それ」の前では命など何の意味も

持たないのだ。


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