表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
109/123

2人分の道。






 全ての始まりに、謎は隠された。






 「...兄などいないはずだ、アルディアはリオとアルマの一人息子なはず。

もし兄がいたらリオが生きていた時に、母であるお前に真っ先に知らせに

来たんじゃないか...?」


アスルペは真面目に話していた。


「...リオの子だと!?...違う、違う違う違う!!!

あいつの血など流れてはいない...これは双子ではないのか......

もしかしたら多少は生まれる時期が違うかもしれないが、間違いなく兄は

いるよ」


老婆は険しい顔で頭を抱え込む。

その様子を見たアスルペは、


(...兄なんていたかね...アイアスなら詳しいだろうか...

双子だとしても兄はどこに行ったのじゃ...あー、もしや...)


何か思いつき、


「おばば、兄は幼少期に亡くなっているとかはないだろうか?」


と問うと、そのアスルペの問いに老婆は頭を抱えたまま、


「それはない、幻鏡の水晶にはちゃんと映っている...生きてるんだよ」


椅子に座る老婆の目の前にある水晶、それをアスルペは見つめると、


(...幻鏡水晶...それは普通の飾りなどの水晶ではない。

おばばのかつてのパートナーである「心眼」ヴァルゴが作った、この世界の

全てを見渡せる力を持った水晶...偽りなど映ることはないが...)


彼女も珍しく悩むような表情を見せる。


「......今はお前の看病が先だ、そのうち調べとくよ。

とにかくアルマには気を付けろよ...アイアスもライド家であるアルマの

嘘に飲まれているのかもしれん...当分彼女らの言葉は容易に信じるな」


老婆はアスルペを見つめ、念を押す。




 「アスルペ様!?...大丈夫か...!?」


ふと気付くとアイアスが心配したような様子で叫んでいた。


「おーーーっと、すまん...考え事してしまっていたじぇ!

...一つだけ聞きたいのだが...」


アスルペは何かを問おうとする。

だが聞きづらいのか、言葉が出てこない。


「...遠慮なく言ってくれ...」


アイアスがそう言うと、


「...アルマに子は2人いないか?」


その問いに、アイアスと彼女の背に乗っているアルマは固まる。

それからしばらくした頃、アルマがアスルペのほうを向きながら

突然フードから顔を出した。


「......だと思ったじょー」


彼女の顔を見たアスルペは一言、そう呟くと安心したような表情を

見せた。






 場面が変わる。


「...2人なら、正面からやり合おうとしなくていいわ。

確実に、仕留めるために隙をつく...これは決してダサい事でも

ズルい事でもない。生きるための立派な行動、隙を見せて生きるほうが

よっぽどダサいじゃない」


そう話すのはイアだ。

アルディアと一緒に、グアースド大陸所属のホワイトトゥルーの拠点

近くまで来ていた。


「...目標はイアの中で決まってるわ、アルディアさんは唯一扱える弓で

イアのサポートに全力で尽くすべきね」


イアは青年の持つ弓を見つめながら言う。


「そう言って、イアさんが即ピンチになったら笑っちゃうな...」


その青年の言葉にイアは見下すような視線を送る。


「...アルディアさんの放てる3本の矢にイアが巧妙なテクニックで

雷撃を乗せてあげれば雷撃を纏う矢なんて最強じゃない?

これはイアのおかげだから、イアに感謝しなさい。

即ピンチなんてありえないのよ?」


彼女は言い放ち、立ち上がる。

それを見た青年も腰を上げた。


「...稽古通りの動きで十分よ、アルディアさん」


イアは突然優しい口調で青年を見つめながら言うと、


「...あれ?今日は優しい...イアさん、何か不気味ですね...」


アルディアは目を丸くしながら返答する。


「だって地味なアルディアさんの動きなんて霞むほどイアが強すぎるの」


......


もはやアルディアは言葉が出なかった。




 それから数分後、イア達は騎士兵の拠点の門付近で既に戦闘の

真っ最中であった。



「...ライ・ット!」


イアの網状の雷撃が多くの騎士兵を襲う。

それに捕らえられた兵達は雷撃のせいで体中に焼かれるような痛みが走る。


 ふと気付く。

イアのこの「ライ・ット」というライ系統の魔法は、以前王都にザイス達を

救おうと救出に行ったアスルペにメドリエが放った網状の雷撃に

そっくりなのだ。

網状の大きさはまだまだメドリエの放ったものには敵わないが、イアも

扱える魔法はやはり豊富だ。


「...イアさん!」


そんな彼女の背後は青年が守っていた。

イアに敵が迫ると、高い門の上にいつのまにか上っているアルディアの放つ矢が

敵を射抜く。

門付近には数十人ほどいたが、アルディアは仲間に知らせにいこうと背を

見せる兵を見逃さない。

増援が来ない門付近の敵は瞬く間にどんどん減っていった。


「...ハァハァ...ハァハァ...いい動きね、バテないように頑張りなさい」


周りの敵を倒し終えるとイアがアルディアの元までライ・ウィングで

飛んで来て、言った。


「...イアさん、息荒いですね...バテてないで頑張ってくださいよ」


アルディアを一瞬睨むと、イアは返答しないまま敵の拠点へ入っていく。






耳を澄ますと、拠点内のほうから警報のような不気味な音がイア達の耳に

届いてきていた。




アスルペが見たアルマと、アルマがアスルペに見せた物、

そしてホワイトトゥルーの拠点内で鳴り響く警報が意味するものとは...。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ