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紡がれし罪の血と偽りの  作者: サン
命の樹へ。
107/123

役者達。






 2種類の思惑。






 「...本当に都合よく動くね、呆れるよ」


どこか森の中で、トーダスは呟く。

彼の視線の先には駆けていく一人の青年がいた。


「都合いいからよかったよ...使い捨て感ありありだね」


そう言って笑うのは森の奥から出てきたヘリサだ。


「元騎士兵達には都合よく動いてもらわないと色々とめんどくさいから

仕方ないさ。

僕達の邪魔にならなければいい」


トーダスは言い終えると瞳を閉じる。


「...うーん......あ!...いい事思いついちゃった...」


ヘリサは気付いてはいけない事に気付いてしまったかのような表情で

トーダスを見た。


「なに?」


と、トーダスは問う。


「...トーダスが頑張ればだけど...緑龍、ドライズ様をこっち側に

引き込めないかな...?トーダスのおじいちゃんだって捕まってるし、

父のそばにいたかったりは...しない?」


その言葉にトーダスはこれ以上ないほどの呆れ顔を見せた。


「...本当に馬鹿な事ばっかり考えるね...ドライズ様は僕の父の弟だけど

、そこまで親しいわけじゃないから引き込む理由が見当たらないよ」


このトーダスの発言から、やはりトーダスもアースの血を継いでいる事が

分かる。

緑癒のドライズとトーダスの父、アースの子は2体いたのだ。


「......イリミールちゃんをどうにかできないかな...」


ふとヘリサがそう呟くと、トーダスは何かを閃いたように目を開く。


「...そうか...ヘリサ、簡単な事だ。騎士兵達のように都合よく...」


そう勿体ぶったように言うと、ヘリサも何かに気付いたように

目を見開き、頷いた。


「ちょっと僕はドライズ様のところに行ってくる、後の処分は任せたよ」


トーダスはどこかへ飛び去っていくも、彼の言った「処分」とは何の事か

...彼の言葉を聞いたヘリサの視線は縄で手足を拘束されている大勢の人々へ

向けられていた。






 場面が変わる。


「早急に探し出し、息の根を止めずにここに連れてきてくれる?」


ここは王城の中、廊下で一人の青年がクライズへそう言った。


「フェディオ様、イア姫の居場所はもう分かっているので?」


その青年をクライズは「フェディオ」と呼んだ。

暴食達が兄と言った、「あの龍」と同じ名。

それが意味する事は...。


「グアースド大陸のホワイト・トゥルーから目撃情報は入ってるけど、

なんだか最後の生き残りと噂されている『正統なライド家』の青年も

一緒にいるみたいなんだよ...けどあっちにいる騎士団と一緒に

連携すればたかが2人ぐらい、簡単に捕らえられると思うから頑張って。

今回は本気で捕らえにいく気ではあるからヴァレーとヴァリーにも言っとく。

幻影と地さえ抉る怪力があれば楽ちんー楽ちんー楽ちんーちん」


フェディオはそう言いながら、どこかへ行った。


「...ガキかよ...」


クライズはうっかり心の声が出てしまう。


「...お?何か言った?」


かなり小声だったが聞こえたのか、フェディオは突然立ち止まって、

振り向かずに問う。


「い、いや...なんでもないです...!」


クライズは一瞬得体のしれない恐怖を感じ、早々にその場を後にしようと

足を動かす。


(...だめだよー、お仲間なんだから悪口はだーめ)


とフェディオは思いながら振り向き、去っていくクライズの後姿を見つめた。






 場面が変わり、アルディアがいる。

月の下、草原の中で身を伏せながら一点を見ていた。


(あそこから顔を出すはず)


彼の視線の先も草原だ。

それから約40秒後。


突然、一人の少女が顔を出した。

彼女はイアだ。


(...)


その姿を見ると無言で、静かにアルディアは弓を構える。


(...)


矢を引き絞り、少女の首へ狙いを定めた。


(...10、9、8、7、6...!?)


数を数え、タイミングを見計らっていたが少女は突然姿を消す。


(...焦るな...イアさんは姿を消すような魔法は持ってない...

なら、これは一時だけライ・ウィングで飛び、俺の視界から外れて

いるだけ!...上か!)


アルディアはすぐさま真上を見る。

すると月光を遮るように少女の影が迫っていた。


(...イアさんは身軽に動けるから1本じゃ足りない...なら、これは!?)


青年は矢を3本取り、引き絞る。


「ライ・ウィング!」


それを見た少女は再び高く跳躍し、


「...過去最高の動きだったわ、毎回こうであるように...ライ・ット!」


と叫ぶ。

すると腰から生えていた羽状の雷撃が空中にいるイアの手元に集まり、

一定の大きさになると網状になってアルディアに降りかかってきた。


「...イアさん、これはずるい...」


アルディアはそう呟くと、その場に寝転がる。


「...降参って事?イアがもし敵だったら、この時点であの世行きね」


青年の様子を見たイアは網状の雷撃を消し、言った。


「...イアさんは敵じゃないから大丈夫、続きは明日で...俺はイアさんの

実践並みの稽古がほぼ朝から晩まで、毎日でクタクタだよ...稽古を

お願いしたのは一応俺だけど...」


イアは毎日アルディアを特訓していたようだが、彼女の特訓には無茶も

多く、アルディアは疲れているようだ。


「もう稽古は終わりだから安心するといいわ。

明日からは実践、世界に対して抗うっていう意思と力を本格的に

見せていかないと仲間なんて増えない」


その言葉にアルディアはポカーンと口を開き、


「でも、何と戦うつもり?」


と問う。

その問いに少女は、






「騎士団、ホワイト・トゥルー。

イア達を襲ってきた奴らから少しずつでも減らしていくのよ。

それはきっとこの地に住む竜のため、この大陸のため、いずれ世界のために

さえなるって賢いイアは確信できるの」




 彼らの劇が今、幕を開ける。


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