送り主を求めて 後編
朝日が立ち止まった場所えお見てみると生徒会室だった。
「なんで生徒会室?」
岡崎は誰に聞くでも無く呟いた。
「ここに俺に会いたいという人がいるからだよ。あ、ここでも暫くは静かにしててね。約束できないのなら連れて行きませんが?」
二人は頷いて肯定を伝える。
「破ったら、・・・・・・・・・・・・フフフッ」
言葉を途中で切って、なにかを考えるそぶりをしてから不敵にほほ笑んだ。
そして、ドアの前まで行って部屋をノックすると、
暫くして中から「どうぞ。」という男の人の声が聞いて、
「失礼します。」とだけ言ってすぐに入っていくのを見て二人も遅れて朝日に続いて入って行った。
「生徒会の残りの人はお帰りですか?」
辺りをキョロキョロと見ながら言った。
「そうだね、僕以外は特に残る必要はなかったからね」
生徒会のメンバーは彼以外にもあと3名いるのだが、他の人はもう先に帰り一人で残っていた。
朝日は近くにあった回転椅子に座って、足を組み膝の上に肩肘を乗せながら言う。
「初めまして、諸菱副会長」
「こちらこそ、初めまして 朝日君。お目に掛かれて嬉しいよ。今日はなんの用で」
少しの間見つめあっていたが、朝日がクックッ、と笑ってからしゃべり始めた。
「呼び出しておいてよく言いますねぇ。まあ、今日は特にすることも無かったので暇つぶし程度にはなりました。一様感謝しておきます」
「フフッ、ゴメンゴメン。それにしても随分早かったね。」
「大体は予想通りだったんじゃないんですか。・・・・・・まあ、予想よりは早かったようですけど、そうじゃなかったらこんな時間まで一人で残ってる必要ないでしょう。どうしてここまで来れたのか説明がほしいのならしますけど・・・・・・・・・・・聞きたいですか?」
それまで朝日の眼は、部屋を品定めでもするように忙しなく動きまわっていたが、最後の言葉の前にゆっくりと目を閉じて、口が開くのと同時に目を相手の視線と交差させるようにして言った。
思はず動揺して息をのんだが、一息吐くと直ぐに冷静な表情に戻してから答えた。
「じゃあ、聞かせてくれるかな?」
今までも十分なほど笑顔ではいたが、返答を聞いた瞬間にさらに大きな微笑みを浮かべた。
「説明してもいいんですけど・・・・・・・僕も少しは頑張ったんですよ。少しでも何か利益がないと・・・・ねえ?」
「・・・・・・・・・・・」
あごに手を置いて考え出した。
「フフフ、そう難しく考える必要はありませんよ。本当に大した事を要求する訳じゃありません。そこまで手が掛った訳でもありませんし。・・・・・・・・・・どうですか?」
「俺に何をして欲しいんだ?」
「物分かりが良いですね。でも、今は特にやって欲しい事もないんでまた今度ってことになりますかね。それでも良いですか?」
(こいつ・・・・・でも気にはなってることだからなあ。仕方ない)
はあっ、と一度溜息をついてから言った。
「分かった。話を続けてくれ」
フフフフッ、言ってみるもんだな。ここまでスムーズに事が運ぶとは思わなかった。会長の方は意外としっかりしてるって感じだが、副会長の方は少し抜けてるのか?いいとこまではつけそうだけど最後まではいけないって所かな?後、頭の回転は速そうだけど絶対この人口下手だな。考えることはできても言葉が出てこないタイプか。何にしても、この人の分析はあとにするか3人共気になるって顔してるし。
「ふむ、何処から話そうか・・・・・・・・・・じゃあ副会長が紙を入れた時間からですかね。これを話したらもう全てと言ってもいい程解決しますし、ちなみに入れたのは6時半〜8時までの間って所ですよね?」
「正確には分からんが多分そんな所だろう」
朝日は予想通りといったように軽く二、三回頷く。
「まず最初にあの箱のことですがあれを今日見た時はまだ新品同様だったので乱暴に扱われてはいませんでした。そして、簡単にですが固定していました。箱を運ぶ時も慎重にやらせましたし、あれ自体そんなに大きなサイズではありません。以上、4つのことからわかるのは中身が混ぜられたりはしていない、即ち・・・・・・・・・・早いもの順に並んでいるということですよ。
そして、あなたからのLetterは二つ目にありました。な、の、で、前後を調べると漠然とですがなんとその手紙をいつ頃入れたかがわかるんです。」
「そして、後ろの方の手紙に至っては調べるまでもありません。それは、あなたが入れた紙が俺が朝に箱の側に置いておいた紙とは違ったからですよ。」
ここで諸菱が何か引っかかった。
「ちょっと待てよ。・・・・・・そんな紙置いてあるからって使うもんなんか?ていうかお前より俺が早く来て入れたんなら関係なく無いか?」
朝日は自分の話しを止めるぐらいだから何なんだろうと期待して聞いた割には全然大した事の無い事を聞かれたので残念に思い、一度溜息を吐いてからまた喋り始めた。
「そんなこと聞かれなくてもちゃんとお答えしますよ。あーーじゃあまず紙を使う理由ですけど岡崎、話してあげて。」
「お、おれぇ!!」
もう完全にぼーっとしていて殆ど聞いていなかったのでかなり焦っていたが姿勢を少し正すと落ち着いたみたいだった。
「えーーっとー、たぶん紙のところにこれじゃなきゃダメみたいなことが書いてあったと思うけど・・・・・・・・」
はっきりと覚えている訳じゃないのであたふたしながら言った。
「そう、そういうこと。とりあえず一つ目は分かりましたか。」
この言葉を聞いた時岡崎はとてもほっとした。
「ああ、分かった。」
「で、早くから来たんじゃないかっ、ていうのはないですよ。生徒会長に聞きましたし、あなたの登校時間。」
「あー、そうゆうことか。分かった分かった、続けて。」
ちょっと待てよ、これは演技にも見えんし。生徒会長を今日俺らのところに寄こしたのはこいつじゃあねえのか。俺はてっきり自分の所にたどり着きやすくするためのヒントにでもさせるためだと思ったんだが。こいつはあまり考えたりしないタイプなのか。それか・・・・・・・・クククッ、別の誰かがなんかしているとかな。
「次はあなたの前に入れられた時間ですが、これもかなり簡単でしたよ。本人に直接聞きましたしね。聞くところによると、部活が終わってからと言っていてあの部は熱心なので、恐らく6時半以降です。で、まとめると6時半〜学校が完全閉鎖されるまでに誰かが入れたということになります。最もあなた以外の人なら朝の俺が来るまでに入れたというのもいけるんですが・・・・・・・まず、あの紙から推測するに一般生徒が入れたものでは無いんです。あの紙にこの学校の名前が書いてありましたから。普通にノートの切れ端とかならあなたのものだという可能性はだいぶ低くなりますけど。」
「これらの条件で考えると、もう生徒会の人間もしくは先生ぐらいまでに絞れます。」
諸菱がここでまた何かを言おうとするが、それよりも先に朝日が答える。
「また、生徒会の人間であなた以外なら朝からでもいけんじゃねえのって思うかも知れませんがあなたたちはご丁寧に朝に挨拶をしているので無理ですね。俺はそれよりも今日は早く来ましたから。」
「で、俺はこの考えまで至った時にはあなたが送り主だと判断しました。些細なことでですけどね。俺が会長に昨日最後に帰った人は誰ですかって訊いたらあの人は 彼はやるべきことがある と言って残ったと話してくれました。
ここからは少し自分の勘も入るんですけどね。この言葉ね、言い換えたら分かりやすくなりますよ・・・・・・・・今日は何か特別な用があるから残る・・・・・・・みたいに。俺が思うにいつものように何かやってるような人に対して使うような言葉じゃないと思うんです、会長の言葉は。
こう考えると何で今日に限ってってなるでしょ。それでもしこの人が送って来たんなら、と考えてみて実際ここにきてみたら、・・・・・ドンピシャ、やっぱりあなただったんですよ。まあ最後当たりは今も言ったように勘も入ってるんですけど、当たってて良かったですわ。」
全て一気に喋ってから一息ついて、
「何か口出しするところはありますか?」
と聞いたが先輩もほとんど思うことはもうないらしいので一つだけ、御紋が浮かんできた。
「じゃあ、最後の判断は勘に任せたのか?」
その問に朝日は、ハハッ、と笑って
「勘って結構大事ですよ。」
なぜかこのフレーズには言葉では表せれないような説得感を諸菱は感じて納得してしまうのだった。
本当はこの人が会長を俺の所に寄こしたと思って会長に口出せる人はだ〜れだ、って考えたからなんだけど、どうやら違うみたいだしなぁ。結果がついてきたから良しとするけどな。
ふうっ、もう終わったし、
「先輩、今日の所はもう終わりにしましょう。」
「そうだな、結構時間経ったからな。」
時計を見てみると最初にここに来た時から時計の長針が反対まで進んでいることが分かった。
「今日は中々楽しかったですよ。では、またの機会に。・・・・・・・・・行こうぜ。」
今回も何時もと同じように勝手に一人で帰るのかと思ったが今回は二人に声を掛けて揃ってから部屋の外に出て行った。
三人が去って行ったあとにはしばしの静寂が生徒会室を包んでいたが、誰かが入ってくることで破られた。
? 「・・・・・・・・・・やっぱり、なかなかやりますねぇ、彼は。たぶん僕みたいな存在にも、もう気ずいてると思いますよ。」
諸菱「そうなんですかぁ?俺にははっきりとは分からなかったですけど?」
? 「彼は凄い、・・・・・・・・いや、凄かったですよ。少し前までは今と全然違ったんですよ・・・・・・・そう、崇拝さえしていた程に。」
男は少し前のことを思って、どこを見るでも無しに目をグラウンドの方に向けた。
諸菱「見てみたいですね・・・・・・・・どんなふうなのか。」
さぞ興味心身と言ったように話しかける。
? 「いずれ・・・・・・・・いずれ見れるようになりますよ。」
そう言ったきり、もう言葉を交わすことはなくなった。
そんな重い空気が流れてる生徒会室とは違って、裁判部部室は溌剌としていた。
「いっや〜っ、それにしても凄かったなあ。お前の推理!!」
岡崎が声量も落とさずに言うと、
「凄かったよね〜っ、先輩の動揺っぷりと君のビビりっぷりは。」
上村が返す。
「し、仕方ねえだろー。いきなり振られたんだから。」
その時の光景を思い出して朝日が大きな声で爆笑しだした。
「はっはっはっはっは、ひー、た、確かに、フフッ、お前の、ビビり方は、以上だったな。」
上村は笑い声は控え目だが、言葉をきつく出した。
「その前から君は皆に何か言われるたびにビビっていただろ。・・・・・・・・・ボソッ(特に中学一、二年の時とか)。」
最後の言葉の直前に皆がちょうど静かになっていたので、声は小さかったが部屋中に届いた。
「へー、興味あるなあ。どんな中学校生活送ってたんだ?」
朝日が言うと直ぐに、
「お願いします。聞かないで下さい。調べないで下さい。お願いします。」
床に両足を付けて両の手を前に付き頭を何度も下げる、いわゆる土下座をしながら頼むので、流石に朝日も、
「分かった、分かった、聞かねえから。・・・・・・・・ボソッ(お前の前では)。」
最後の言葉なんて聞いてない岡崎は「ありがとう。俺の親友よー」と言いながら手を握って縦に数回振り回した。
「ん、そういえば、お前らって何時からの知合いなんだ?」
岡崎に振り回されたのがうっとおしかったから話してから聞いた。
「あーーー、・・・・・・・確か小学校の時からだと思う。」
少し不安になったので上村の方を見ると頷いたので間違いないだろう。
小学生・・・・・・・・・・・・・・・・・・か。あの時までは楽しかったな。別の意味であれからも楽しくは過ごせていたんだが・・・・・・な。
「どうしたんたんだ、お前?」
いつもと様子が違うようにみえたので疑問に感じた。それは上村も同じだった
フッ、まったくこいつら。
「フッ、少したそがれてただけだよ。」
・・・・・・・俺には過去も大事だけど、今を楽しむって決めたんだったよな。ハハッ、一人で考えてたらまた後ろを向くとこだった。
そして、心の中でだけ二人に感謝して、
「おい!!もう遅いからそろそろ帰るぞー。」
部室のカギを閉めて帰って行った。
過去は過去
変わることのない絶対
自分の主観で多少は変わるが変わらない
だからぼくは前を向こう
変えるためには前を見よう
ぼくの後ろは絶壁で
ぼくの前にはわずかな光
だったらぼくはそれを目指してがむしゃらにもがいてもがいてすがりつく
その先になにかがあるんじゃないかと・・・・・・・・期待して
紹介part6
諸菱 一登
役職 生徒会副会長
身長184cm
容姿 上の下 この人よりカッコいい人はまだ学校にいるのだが、たち振る舞いなどを考慮するので、この人はその人達より人気がある。
成績 上の中
運動神経 上の下
性格 あっさりしていて、思い立ったら吉日タイプ
この人の家もかなりのレベルであり、加えてもてる要素の三拍子もありさらに副会長も兼任しており、人気が出ない訳はない。
今回影ながら朝日を見ていて朝日の昔の事を知っている(?)人とコンタクトを取れるようだが・・・・・・・・・・・・・・・?