あなたの時間を戻します。2
あなたの時間を戻します2
あなたの時間を戻します。Time2
「俺は時間屋を辞める」
「アキちゃん!」
「アキ!」
「明日には俺は四節市を出る。」
その言葉を最後にアキは二階への階段を駆け上っていった。
「ほっとけ。そのうち戻ってくる。」
「ほんとはアキちゃんのこと、心配なくせに。」
「うっ。」
「幼なじみかあ。」
「アキがそんな事を気にしてたなんてな。」
あれは桜が咲いていた春のこと。
ナツと僕が知り合ったのは幼稚園の頃だ。
「ハルー。お隣に引っ越してきた鮫島さんよ。ご挨拶しようね。」
「……きりさわはる。です。」
「こらっ!緊張しないの~。ごめんなさいね。うちのハルはほんと無愛想で」
「いいんですよ。うちにもハルくんと同じくらいの年の娘がいるから思い出しちゃったわ」
「そうなんですか?」
「ハルくんのことを話したら、きっと会いたがるはずよ~。今度は娘を連れて、またご挨拶しますね」
「あら、よかったわねハル。」
「………」
ナツと僕が出会ったのは次の日だ。
「きりさわなつきですっ!よろしくね!」
その日を境に僕とナツは一緒にいることが多くなり、中学も高校も一緒だった。まあさすがに大学は別れたが。
アキと出会ったのは中学の頃だ。
勉強でトップの僕と運動神経がトップのアキとは犬猿の仲だった。
いつしか一緒にいることが増え、いろんなことをアキと話した。今までナツとばかり一緒にいた僕はアキと出会うことで新しい世界が開けた気がした。
ナツとは出会うのが早かった。アキと出会うのが単純にナツより遅かっただけなんじゃないか。
ナツもアキも僕にとって大切な仲間だ。
友達だ。
やっぱり、今が伝えなくてはいけないときなのかもしれない!
「ナツ!」
「行ってらっしゃい。ハルちゃん。」
「ありがとうな。ナツ!」
いまならいえる!やっぱりアキには辞めてほしくない。僕は階段をのぼった。
アキもナツも大切な仲間だから。
僕を見送ったナツの顔が少し悲しく見えたのは気のせいにちがいない。