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第9話:ハタカ、抜群の影響力!

 ハタカのキラキラの瞳は実際スゴイ。眩暈を起こす! 的なお話。


 

 ハタカとジュリアがCランク昇級試験を受けたその日のこと。

 夕方になっても戻らない二人をギルドの人間たちは心配していた。


 待てども待てども、日は暮れても二人は帰らない。こんなことはハタカが街に来てから初めてのことだ。


 そうして時間だけが過ぎていく。

 心配そうに暗い顔をした者たちばかりの冒険者ギルド。その入口の戸が勢いよく開かれて一同の視線が向けられる。



「ダメです! 門番にも聞いてみましたが、昼前に出て行ったきりハタカくんたちは戻ってきていないそうです!」


 伝達役のギルド職員の報告に、ギルド内の全員がいっそう暗い顔をする。


「やっぱり、いくらハタカくんが強くてもまだ早かったのかしら……」


 涙を堪えようとしても、それでも溢れてくる涙。美人受付嬢のナタリーは後悔していた。


 彼女はハタカなら大丈夫だと思い、ハタカを送り出した。

 付き添いには、すでに昇級試験をクリアしているジュリアもいたのに、連絡もなく二人は夕方になっても戻らない。


 冒険者の実力にあった依頼を割り振りするギルド職員としてあるまじき失態だと嘆いているのもあるが、それ以上にハタカの笑顔がもう二度と見れないと思うと涙は止まらないのだった。



「いや、ナタリーのせいじゃねぇ!

 オレだって、ハタカは大丈夫だと思って送り出したんだ!」


 まるで鼓舞するようにギルド内を見渡して叫ぶ大男。

 彼の名はゴラン。巨大なハンマーを軽々と振り回す豪快なAランク冒険者だ。


 ギルドトップのSランク冒険者のタロウは、保安部隊の武士団リーダーとしての仕事が忙しい兼業冒険者であるため、そのタロウに次ぐ実力で若手冒険者たちの頼れる兄貴分である。


 そんな彼も、来たばかりのハタカには色々と心配から荒っぽい口調で挑発したりもしたが、それは遠い過去の話。


 今ではハタカが可愛くて仕方がないため、何かしらハタカが騒動に巻き込まれると荒事担当ですぐに出張っていく兄貴なのだ。


 岩をも砕く驚異の怪力ハンマー使いだ!



「だが、Cランクのジュリア殿が一緒だったのに、逃げることすら出来なくなるものだろうか?

 もしかすれば、とんでもないモンスターが出現したのかもしれぬ」


「てめぇ、イジーク! オレの弟分のハタカを舐めてんじゃねぇだろうな!?」


 ゴランの言葉に反論したのは、細身の冒険者イジーク。

 彼もまたAランク冒険者であり、ゴランとは正反対の線の細い顔立ちから女性人気において元№1の女冒険者。そう、男装の麗人というのがイジークの人気の理由だ。


 彼女はレズであり男装が趣味なこともあり、かつては来たばかりのハタカがその可愛さで自分の人気を奪ったことに嫉妬したこともあったが、イジーク自身もハタカと接しているうちに彼の人間性に惹かれた一人でもある。


 岩をも切断する剣技はまさに達人級だ!



「おいおい、冷静になれよゴランにイジーク。

 アタイらがやることはもう決まってんだろ」


「マセルか……」


「ふふっ、あなたもハタカ君には魅せられていますからね」



 ヒートアップするゴランとイジークを宥めるように、震脚で建物全体を揺らした中年女性。彼女の名はマセル。

 ジュリアの育ての母であり、ハタカのことも息子のように可愛がっている徒手空拳の達人だ。


 その握力は炭をダイヤモンドに変える程である。



「どぉやら、オレらのすることは決まったな」


「勿論です」


「アタイらは生まれた時は違えども、死ぬときはハタカのためだ」



 マセルの瞳を見たことで、ゴランもイジークもその意図を察したのだろう。あえて言葉にするまでもない決意を共有した。


 しかも三人だけでなく、ギルド内の全員が心を共有したのだ。


 円陣を組み、声を揃えてハタカ讃美をそれぞれの言葉で宣言する冒険者たち。



「おい、ナタリー!」


「はい、ゴランさん。わかっています。

 Cランク以上冒険者対象の緊急依頼を出します!

 依頼内容はハタカ君とジュリアの救助依頼です。

 報酬は領主様の懐刀のポプリさんが、街の運営資金から今年度予算の三割を出してくれます(決定事項)!」


「ふふふ、時にはシノビのように。時にはニンジャのように。ポプリ……、参上」



 何処からともなく冒険者ギルドの天井裏からズルリと落ちてきたポプリ。彼女も当然のようにハタカのために動く。


 そしてナタリーの言葉を聞いたCランク以上の冒険者たちは己の武具を装備し、電光石火の素早さで街の外へと向かっていったのだった。


 報酬については領主のハーバルがまた頭を悩ませることになるだろうが、まぁ、ハタカの身の安全のためならば街の住人の誰も嫌な顔をしないだろうから問題ないだろう。


 そもそも、救助に向かった冒険者たちは誰もお金など求めてはいない。


 いまや日常とまでなった、ハタカのキラキラと輝く笑顔が見られればそれで良いのだ。


 こうしてハタカ&ジュリア救助隊という街の冒険者たちの最高戦力が結集から即行動へと移ったのだった。


 二人は一体どうしたというのか!?




 お読みいただき、ありがとうございます。

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