第6話:変わり続けるギルドの喧騒に
キャラ名はすでにお気づきの人もいるでしょうが、少し前にハマった牧場物語から付けたキャラが多いんですよね。
そういえば、ふと思いましたが今回のお話は日曜日に投稿できていれば面白かったかも♪
ハタカが冒険者登録をして、あっという間に一週間が過ぎた頃のことだ。
冒険者ギルド・アイバス支部のギルドマスター、チェンは頭を悩ましていた。
「ちょっとこれは洒落にならんでしょ」
年の頃は40を過ぎたばかり。中肉中背で細目に髭面。おっさんだ。
特に強そうには見えないが、盗賊とくべつが付かないような強面で荒くれ者が多い冒険者ギルドを腕っ節で束ねる頼れるマスター。それがチェンだ!
元・冒険者ということもあり、とある依頼の最中に膝に矢を受けて早くに引退したものの、その豪腕は健在。
引退してからはギルドマスターとして若い冒険者たちと接している。
そんな彼だが、一人の新人冒険者に頭を悩ましていた。
「Fランク新人冒険者のハタカ君。身長140センチ。体重35キロ。
愛くるしい顔立ちは笑顔で、常に笑顔が絶えない明るい笑顔の少年。とにかくいつでも笑顔。
……実力は申し分なく、領主様やSランクの保安隊長タロウさんの推薦もある。
しかし、本人がじっくりと修行をしたいと言って依頼でのポイントを貯める正規の昇格以外拒んでいるので、ランクはまだFのまま。
腕の良い冒険者は早くランクを上げたいというのになんという謙虚さだ!」
別にハタカが悪いわけではない。むしろ良い。チェンもハタカのことは可愛く思っている。
キラキラと輝く力強い目をしたハタカは、今時の子どもにしては珍しく謙虚だ。
実際に顔を合わせたチェンも、ハタカの人柄については無条件で信用できるとさえ思っている。
ハタカは、ギルド登録してすぐに全ての冒険者と打ち解けていた。
冒険者と言えばガラの悪く短絡的な者も多くいるが、
ハタカがこの街に来て彼と出会った者たちは皆、人が変わったように真面目で博愛かつ勤勉な冒険者へと生まれ変わったのだ。
まず最初に、冒険者たちはギルドに入る時に挨拶を欠かさなくなった。
おはよう、こんにちは、こんばんは。そして、ありがとう、ごめんなさい。
ギルドは活気に溢れ、依頼を出しにくる民間人もギルドに用がなくても寄り付くようになった。
強面揃いと言っても、心からの笑顔な人間を嫌う者は少ないだろう。
冒険者は街の住民との関係を確実に良い方向へと変えている。
「ハタカ君には感謝している……しているんだが、ちょっと彼は影響力が強すぎるような……」
悪いことではないので注意も出来ず、古い冒険者であるチェンとしてはちょっと面白くない状態だ。
本当にハタカ少年は悪くはないのだが、若い頃から冒険者として活躍してきた彼からすれば、今の冒険者はちょっとおかしい。
これを言えば老害などと言われるだろうし、若い女性職員たちからはバレンタインにチョコレートをもらえなくなりそうだが、冒険者ギルド「らしさ」がなくなったことをチェンは寂しく思っているのだ。
「どうしたものか……」
ギルドマスター、チェンの悩みの種でもあるハタカ少年は今日も明るく、冒険者として活躍をしているのだった。
◆ ◆ ◆
「ただいま戻りました、ナタリーさん。
依頼人さんから完了の書類をもらってきたので手続きをお願いしますね」
「はい、今日もハタカ君は元気ね~♪」
「だって、元気な方が何でも楽しいじゃないですか」
「うふふ、そうね。
はい、カレー食べる?」
「食べます♪」
ニコニコと笑顔でギルドのカウンター席へと座るハタカ。受付嬢のナタリーから差し出されたカレーを嬉しそうに受け取った。
ギルドにいた他の冒険者たちも、彼が戻ったことに気づくと近くの席に座っていた強面の中堅冒険者が子ども用の椅子を用意してあげる。
それにもハタカはきちんと感謝の言葉を伝えるのだ。
「ありがとうございます♪」
「お、おぉ、いいってことよ……♪」
耳まで真っ赤にしながら後ろを向いてしまった中堅冒険者だが、そうでもしないと威厳が保てないという男の意地もあった。
ギルドにいるのは依頼に成功して浮かれた者や、失敗して落ち込んでいる者たちだが、そんな彼らの誰もがハタカを見るだけで、ほっこりしている。
ハタカが来てから、ここのギルドは大きく様変わりしていた。
普段はギルド職員たちの忙しさと、豪快な性格が多い冒険者たちは建物の汚れなど気にしないが、
ハタカが見かねて毎朝誰よりも早くにやってきて掃除をしているうちに自主的に掃除をする習慣が付いていった。
重量のある武具を装備した冒険者たちが乱暴に扱うイスやテーブルも、ハタカが大工修理することで貴族が使うような美しい装飾で整えられた一品へとなっていた。
そうなれば誰も武具をぶつけながら乱暴に座ろうとはしない。座布団を使い、静かに座る。
殺風景だと思ったハタカは、街に暮らす画家に頼み込んで一枚で何百万円もするような高価な絵画を何枚ももらってギルドに飾るようになった。
気難しい芸術家肌の画家だったようだが、その画家をしてもハタカとの出会いは値千金の友情に匹敵したのだろう。
花屋にも雑用依頼で出向いて気に入られたら、次の日からはギルド内にお花が増えた。
今日もギルドの中心にはハタカがいる。笑顔の中心には常にハタカがいるのだ。
「あー、ハタカくんったら、また他の人からご飯分けてもらってる!」
ハタカとは遅れて入ってきたのはランクCの女性冒険者ジュリアだ。
「あ、ごめんなさいジュリアさん。
僕、お腹空いちゃって、ハム、ハフハフ、ハフッ!!」
「まったく、も~」
後ろから頭を抱き抱えられうりうりとされるハタカ。
ジュリアとは冒険者登録したその日に出会った縁もあってパーティを組んで仕事をしている。
まだ新人のハタカは最初はソロで活動し、街中での雑用をこなして住民たちとの出会いを優先したいと告げたのだが、それでもいいからパーティを組んでくれとジュリアの方から頼み込んだのだ。
カレーを美味しそうに食べるハタカと、それを慈しむようにヘッドロックしながら眺めるジュリア。
二人の関係は兄弟のようにも見えるが、ジュリアの視線には並々ならぬ愛情があった。
仲間のジュリアからの愛情を一身に受け、依頼達成の手続きを終えたあとはギルドにいる全員でお喋りを楽しむ。
その内、保安隊の面々も現れ、タロウ隊長が冒険者相手に飲み比べをし、酔いつぶれた者たちをハタカが優しく介抱する。
日は暮れ、翌日になれば同じように街中での依頼をハタカとジュリアは受けるのだった。
しばらくそんな状況が続く。
強面で傷だらけの厳ついおっさん冒険者から荒っぽい女性冒険者まで、多くの者たちの心に爽やかな風を通したハタカは街中での依頼だけでランクを上げる。
Eランク、Dランクへの昇格へは問題なく上がった。
アイバスの街の住民でハタカと出会った全ての人々が彼を認めたからだ。
そして、ついに中堅冒険者の壁とも言えるCランクへの昇級試験を受ける日がやってくるのだった……。
何だかサブタイのつけ方がいつにも増して活動報告のタイトルを決める時みたいなノリになっているんですよね。
これもギャグ作品だからか、自身一作目もそういえばこんな感じだったなぁ~、と思うヨイヤサであった。(しみじみ)
お読みいただき、ありがとうございます。