第4話:ギルドランク!それは熱き冒険者たちのロマンである!
ギルドに登録するだけのお話。
やんややんやと宴会騒ぎ、とまではいかないものの。無事、天才魔法少年ハタカはアイバスの街に受け入れられた。
そして彼はこの街で魔法の修行を積み、世界最強となることを目指して冒険者になろうと決意したのだった。
「いいか、ハタカ。
この世界の冒険者ってのは、ようは魔物退治や街の雑用で得た報酬と素材を用いて武具の強化をしながらランクを上げていく簡単な仕事だ。
とは言ってもこれは戦士職に言えることであり、魔法使いのお前は別に武具がなくても戦えるのだろう?」
「はい。僕は師匠から修行を受けているのでこの街と同程度の大きさのドラゴンくらいなら魔法でも拳でもどちらでも倒せます!」
武士リーダーにして保安部隊長のタロウの案内によって冒険者ギルドへと向かう道すがら、冒険者についての説明を受けるハタカ。
「私のように魔法無効化体質を持っている者も魔物には少なからずいるので魔法一辺倒だと上位には上がれないが、お前ほどの肉体的にも強い少年ならば問題はないだろう」
「いえいえ、そんな僕なんてまだまだ青二才に過ぎません。
師匠は僕よりも強かったですから」
はにかむように照れ笑いを浮かべるハタカ。
そんな様子に思わず口角が下がるタロウだったが、それを責めるものは誰もいないだろう。
同行する他の保安部隊の武士隊員たちも、通りすがりの街の住民たちも、皆がハタカの愛くるしい笑顔に揃って目を細めているのだから。
そして領主館から10分ほど歩いたところで、目的の冒険者ギルドへとたどり着いた。
「さて、それではここが冒険者ギルドだ。
ちなみに私も冒険者登録をしているぞ。
ちなみにちなみに、ランクは最上位のSランクだ!」
「へー、すごいですね♪」
見た目は華奢な少年とはいえ、見る者が見れば保有魔力がありえない程に高いハタカが感心しているのだ。
人によってはタロウを馬鹿にしているように取れなくもない発言だが、ハタカはその人柄から嘘は言わない。心からタロウを一人の大人として尊敬しているのだ。
ギルドの戸を軋ませながら中に入ると、ガラの悪い連中が一斉に視線を向けてくる。
タロウには羨望と嫉妬、他には恐怖などの感情が混じってよそよそと逃げるように裏口から出て行く者もいるが、タロウの本業と性格から痛い目を見た者たちだろう。
続いて入ってきたハタカに向けられたのは奇異の視線。
なぜ脳筋のタロウ隊長が? 魔力量おかしくね? Sランク冒険者と親しすぎね?
などなど、こちらも様々な感情で視線を向けているが、それに気づいたハタカがニパっと笑い返すと、いかつい顔をした冒険者たちもふにゃふにゃと頬を蕩けさせてしまった。
あぁ、これならば仕方がない。タロウ隊長が親しげに話すのも当然だ。この少年とえっちしたい。
とまぁ、好意的な視線に早変わり。
男であってもそうなのだから、女性の冒険者たちの視線はとんでもない食いつきだ。
当然、受付に座っている女性スタッフも目を輝かせている。
「おぉ、いつもサボりまくりのナタリーが今日は珍しく仕事しているようだな♪」
「……ハッ! タロウさん、私はいつでも完璧にして瀟洒な受付嬢です。
まるで普段はサボリ魔みたいに言わないでください(キリッ)」
タロウが声をかけたのは受付カウンターにて、頬に垂れた涎を拭いながら体裁を整える女性。
彼女の名はナタリー。髪の先から指先まで、体裁を整えてしまえば完璧なまでに隙のない美女である。
また外見こそ確かに隙はないが、彼女は本質的にサボり癖があり、帳尻合わせが得意なために普段はサボりまくりのギルド職員だ。
「紹介する。こいつはハタカ。
今日からこの街で冒険者として修行をすることになった魔法使いだ」
「よろしくお願いします」
タロウに紹介され、これまたニパーと花が咲くような可憐な笑みを浮かべるハタカ。
あまりのキラキラを直視してしまったことで、ナタリーは心を奪われてしまった。
「ハハハ! 早速ナタリーを攻略したようだな♪」
「ちょっ、タロウさん! 私は出会ったばかりの少年相手にいきなり恋に落ちるだなんてそんなこと……」
「ナタリーさん、よろしくお願いします♪」
慌てふためくナタリーに対し、今度は仏のようなアルカイックスマイルで施無畏印の構えから握手を求めるハタカ。
シェイクハンドは友情の証。そして直接触れ合うことで異性ならばラブは突然にして必然!
その時点で、ナタリーは完全に落ちたのだった。
「(あぁ……私、この子に将来抱かれる気がする♪)」
頬を赤らめながらも小さく柔らかなハタカの手のぬくもりを嬉しそうに握り返すナタリー。
これが後の歴史書で語られることとなる最初の“ハタカ守護聖女”の一人、聖ナタリーとの出会いであった。
ハタカくんの歩いたあとにはヒマワリの花が咲き乱れる……、かもしれない。
登場人物たちの名前の元ネタ的な意味で。
お読みいただき、ありがとうごいざいます。