第14話:大魔法対決
さからららららららら……!! 的なお話。最終回なので二話同時更新の一話目。
さてさて、保安部隊の武士団リーダーにして海老茶色の鎧を愛用するタロウと、何気にロリコンの才能を持ったゴランの二人が揉めながらも、可愛らしい美少女たちと流れで同居することとなった騒動だが、
実はこの時、カライン男爵はすでにアイバスの街にやってきていたのだ。
なぜ彼自身が? それはおいおい語っていこう。
かなりの距離があるというのに一体どうやって? その答えは至極簡単だ。彼は空を飛んできたのだ。
人が空を飛ぶ? それはありえることだ。魔法がある世界なのだから箒に乗る古典的な魔法使いは多い。
尤も、最近は杖も箒も使わないで己の身のみで飛ぶという、“ハタカ式”と呼ばれる飛行術が魔法使いの間では流行っているのだが、ハタカ自身はそのことを知らない。
知ったら照れるだろうという、アイバスの街に暮らす魔法使いたちの粋な計らいというやつだ。
まぁ、それはさておき、暗愚で愚鈍で愚かな典型的な悪徳貴族でありながら、適当に思いつきで人を使って嫌がらせをするしか出来なかった面倒くさがりのカライン男爵は一人でアイバスの街へとやってきた!!
街の住人に感知されないよう、はるか上空から見下ろしながらカライン男爵は美しい街並みに笑みを浮かべている。
「ふむぅ、ここがアイバスの街か。
世界で一番美しい街といっても過言ではないな」
「そうだな。これから滅ぼすのが惜しくなってしまう」
はて、カライン男爵は一人で来たというのに声は二つ。よくよく見ればカライン男爵の背中には巨大な翼が生えているではないか。
「カライン、僕が強力しているということも忘れるなよ」
「わかっているともさ。もう一人の吾輩よ。」
なんということだろう……。カライン男爵の背中から生えた翼はもしや!? これは古の時代に滅びたと言われる龍種ではなかろうか!?
なぜ龍種がカライン男爵と一緒にいるのか!? その答えは簡単だ。二人が出会ったからだ。
「ふふっふふ。吾輩は“カライン男爵”などという昔の名を捨てた大魔法使い。
そうだな……、“大魔法使い”カラインと名乗ろう」
「へへっへへ。僕は古の時代にドラゴンによって滅ぼされながらも復讐を誓って生きてきた龍の系譜。
そうだな……、“大魔法使い”龍と名乗ろう」
この二人が一緒にいる理由は「出会ったから」と説明したが、では何故出会ったのかについて説明せねばなるまい。
そう、あれは今から一時間ほど前のことだ……。
◆ ◆ ◆
アイバスの街が、過去にドラゴン種によって滅ぼされた龍の住処だった土地というのは民俗学者らの研究で割と人気のテーマだが、
肝心の龍種の骨なり生き残りなどが確認されていないために、ただの御伽噺だと世間一般では言われている。ぶっちゃけ吟遊詩人の飯の種でしかない。
しかし龍種は実際にいた! たった一匹だが、それはもう地中深くにクマムシめいてしぶとく生き残っていたのだ!!
その地中とはどこか? そう、それこそがハタカがこの世界に飛ばされてきたその日、天高くから自由落下運動そのままに開けた大穴こそが、この龍の乾眠していた場所であり、ハタカこそがこの邪悪なる龍の復活に関係しているのだ。
「くっ、ちょっと力を蓄えようと眠っていたら、凄く時間が経過している気がするな」
目覚めた龍だが、彼は力を蓄えつつ未来での復活を夢見ていた。
だから、陽の光も当たらない地面に潜っていたのだが、そのせいで今の今までぐっすりと眠っていたのだ。
それがハタカが開けた大穴より差し込んだ、偉大なる父のような太陽光で目覚め、ハタカの身に纏う世界と同じ規模の大魔力で活性化。
過去に存在したどの龍種よりも強い身体能力と魔力を身に付けて現代に蘇ったのだ!!
……が、目覚めたばかりでまだ少し眠かったために、地上に出てきても二度寝をし始めたところ、
通りすがりの商人に、龍っぽい岩と思われて、少ししてアイバスの街の特産品となった“触手獣”キャロッシェルの触手液と一緒にヒマワリ王国の北端に送られることとなったのだ。
そうして一時間ほど前にかライン男爵と出会い、意気投合して二人は融合。
暗愚で愚鈍で愚かなことで部下には知られていたカライン男爵だが、ノリで融合したら深夜のテンションもかくやというハイテンションになったので、こうしてやって来たわけだ。
◆ ◆ ◆
「ふふっふふ。手はじめに、吾輩の金で勝手に孤児院を立てて産業スパイとしての職務を放棄したピエーホールを殺そう」
「へへっへへ。僕ら二人分の魔力があれば、この街くらい三日もあれば滅ぼせるだろうからね♪」
この三日という期間は龍の魔力と、カラインが持っているそれなりの権力と金の力を用いてもそれだけ時間がかかる程にアイバスの街が大きいことを示している。
「「融合パワー全開! ふぉぉぉぉぉーー♪」」
大魔法使いカラインが両手に魔力を集め、大魔法使い龍が火属性を選択し、膨れ上がった魔力が解き放たれそうなその時!
あと一秒でも登場が遅れていれば大魔法使い二人の大魔法が放たれていたその時! そう、そんな最高のタイミングで現れた者がいた!!
「僕、参上」
空高く、普通の魔法使いでは来ることもできない高度。そこに彼は現れた。
街の救世主たるCランク冒険者のハタカが強大な魔力を感知してアイバスの街の上空に颯爽とエントリー!
「ふふっふふ。来たな小童。
吾輩は大魔法使いカライン様だ」
「へへっへへ。僕こそは大魔法使い龍様だ」
二人とも魔法使いなのだからハタカの魔力を感知出来るだろうに、それでもこの余裕の挨拶。
「どうも、僕はCランク冒険者のハタカです」
ハタカのこの名乗りを聞いて、二人の意味を持たない殺戮者たちは口元をニヤけさせる
「おい、聞いたか大魔法使い龍」
「あぁ、きいたよ大魔法使いカライン。
こいつ、Cランクなんだってな」
二人がハタカを前にしてこの余裕なのには理由がある。
ハタカがランクC冒険者であるということだ。
冒険者の中では一人前とも言えるCランクだが、まだ上にはS,A,Bのランクがある。つまりハタカを魔力が多いだけの三下と見くびっているのだ。
「僕を馬鹿にするのは構いませんが、一つ、訂正して欲しいことがあります」
「「なんだ?」」
「大魔法使いの称号は僕の師匠が名乗るべきもの。
そして僕が継ぐべきものです。
あなたたちのような邪心にまみれた方に名乗って欲しくないのです」
ハタカは怒っているわけではない。馬鹿にしているわけでもない。
ただ、心の底から哀れんで慈悲の精神をキラキラの瞳に込めているのだ。
だが、そんな言葉も瞳も効かない相手はいるものだ。
「ふふっふふぅぅ~~~~~♪ これは冗談が上手い少年だ。
たかがCランク冒険者如きが、この大魔法使いカラインに意見しようとはな!」
「へへっへへぇぇ~~~~~♪ もう殺しちゃおうぜ、大魔法使いカライン。
こんな魔力が多いだけの邪魔者は消すのがシンプルなのさ」
「そうだな、そうしよう」
「それでこそ貴族と龍の融合した大魔法使いの在り方さ」
哀れにもカラインと龍はハタカの慈悲に気づいていながら無視をするという悪業を進んで行う。彼らは深夜のハイテンションばりにハタカの実力をCランク冒険者程度としか見ていないのだ。
アイバスの街へと放たれようとしていた大魔法は、そのまま向きを変えてハタカにブッ放される!
「(くっ! ここまで邪悪に染まった心の持ち主は初めてです)」
仕方なく迎撃の用意を構えるハタカだが、脳裏に彼が慕う者の声が響いた。
「(ハタカよ……ハタカよ……。聞こえておるか……)」
「この声は!?」
「(儂じゃ。師匠のアラワカじゃ)」
届いた声は、ハタカを嫉妬から異世界へと転移させた師匠アラワカの声だった。
彼はハタカを送り出したすぐあとに死んだはずだというのに。
「(すまんな、ハタカ。儂はお主を送り出してすぐに死んでしもうたが幽霊というのは一晩で山七つ駆け抜けることが出来るという。
せっかくだから、この特性を利用させてもらったのじゃ。
つまり、儂は元々の筋肉を活かし、異世界へと走って来た。お主のためにな!)」
「(さすがは師匠です。ありがとうございます♪)」
ハタカの師匠は“じゃがいもの皮剥き”魔法しか使えないが、魔法で出来るほとんどの事を筋肉で行なえる。故に大魔法使いの称号を持っていたのだ。
「(死んでから儂はお主の慈悲の心に気がついたのじゃ。
ここは一つ、二つの世界の大魔法使い対決といこうではないか)」
「(そうですね。では手はじめに、この自称:大魔法使いの龍人間を倒しましょう)」
ハタカの莫大な魔力と、アラワカの莫大な霊的な筋肉が集約し、二人分の魔力と筋肉が目の前に迫る「当たれば」命の危機となる大魔法を迎え撃つ。
そして、二つの光がぶつかり合い、片方が完膚なきまでに消滅したその時……、最後に立っていたのはハタカであった。
「大魔法」という単語=「大魔法峠」のイメージを持つ私。
最終話の次話に続く。
お読みいただき、ありがとうございます。




