第10話:クッキングファイター・ハタカ
ドゴォ、的なお話。
考えて書いていないこの作品を読み返していると、やはり私は触手が好きなのだと実感させられます。
さてさて、アイバスの街でハタカとジュリアが行方不明になったと言われたのは夕方になっても二人が戻らないからなのだが、普通の冒険者ならば時間が依頼が長引くというのはよくあることだ。
モンスターの討伐依頼などは相手の数が多かったり、たまたま道中にダンジョンなり別のモンスターの巣なりを見つけて探索をしたりと、受けた依頼に時間制限がなければ街の外で夜を明かすことも珍しくはない。
しかしCランク昇級試験は“触手獣”キャロッシェルの討伐という、ランクを受けるたけの実力があれば、移動時間を含めても夕方には十分帰ってこられる依頼なのだ。
なのに帰らないハタカとジュリア。これはおかしいと他の冒険者たちが思うのも無理はないだろう。
だが、実際に二人は夕方になっても街に戻らず、まだ街の外にいるのだった。
「まさか本当にキャロッシェルを手懐けるだなんて思わなかったわ……」
「ジュリアさん、物事をなんでも暴力で解決するのはスマートかもしれませんが、良いことではありません。
人が一人では生きていけないように、他の種族とも分かり合う必要があるのです」
そう言って全身をヌラヌラとした触手液で包まれたモンスターを愛おしそうに撫でるハタカ。
彼は初心者殺しで有名なキャロッシェルを手懐けたのだ!!
ぬるべちゃ。ぬるべちゃ。とても粘度の高い体液を皮膚から分泌しているので撫でるだけで手がべとべとする。
「しかもこのモンスター、僕の魔法で調べたところ、牛のように搾乳が出来るようですね。
ちょっと粘っこいですが、これは山芋などに含まれるムチンという成分だと思います」
「……つまり?」
「美味しいってことですよ、ジュリアさん♪」
早速とばかりに、手懐けたキャロッシェルの乳房? と思しき部位から伸びていた触手を一本手に取り吸い付くハタカ。
まるでバキュームカーめいた驚異の肺活量でストローのように触手液を直吸い。
じゅるじゅると粘っこい緑色をした液体が喉を流れ、夕方という時間帯もあってお腹が空いていたハタカのお腹を満たしたのだった。
「す、すごいですよジュリアさん!!
このモンスターの触手液は疲れが吹き飛びます♪」
「え? 嘘、マジ?
じゃ、じゃあ私も吸っちゃおっかな♪」
ジュリアも触手を一本手に取って直飲みしてみると、すぐにその効果が分かった。
確かに見た目こそグロテスクで、怒ったら半端な冒険者では手に負えないほどに強いモンスターだが、その触手液は美味い!
癖のある粘り気も、慣れてしまえばオタマジャクシの踊り食いをしているかのような心地よい感触で口内を楽しませてくれる。
パッと思いつくだけでもこの触手液を用いた料理はわんさかある。
山芋や納豆やオクラといった他のネバネバ食材と混ぜてご飯に掛けても良いだろう。
見た目はアレだが、味も香りも森の恵みを感じさせるパーフェクトハーモニーを体現したものだ。鍋に入れても良いし、麺類の薬味にも最適なはずだ。
今この瞬間、冒険者ギルドの初代ギルドマスターが「手頃に強いから冒険者のランクアップの目安にしちゃおう」とノリで決められただけのモンスターの価値が大きく上昇した!
ハタカはこの異世界において、料理においても偉大な発見をしたのだ!!
「さぁ、それじゃあキャロッシェルを他にも何頭か捕まえて街へと戻りましょう。
今日のところは保安部隊の馬小屋でも借りて、明日にでもこの子達の牧場を作りましょうか♪」
「うん♪ 一緒に作ろうねハタカ♪」
ジュリアの頭の中では牧場を経営してキャロッシェルの触手液を牛乳のように販売して左団扇で右ハタカというよく分からない古典的な金持ちの絵面が浮かんでいるのだった。
「(てゆうかコレ、ハタカとのローションプレイにも使えるかも♪)」
ジュリアの妄想は後に、ローションプレイをさらに楽しむ画期的な発想としてアイバスの街のみならず世界中に浸透していくのだが、それはまだ先の話。
こうして二人は野生のキャロッシェルをみんな捕まえて意気揚々と街へと帰っていったのだとさ♪
◆ ◆ ◆
「おい、居たか!?」
「こっちは居ないぞ!」
「こうなったらこの辺一帯を更地に変えちまおう!」
ハタカ&ジュリアの救助隊は入れ違いとなり、適当に目に付いたモンスターを討伐しまくったため、狩場の地形も大きく変わり、あとでギルドマスターにこってり怒られたのだとさ。
お読みいただき、ありがとうございます。




