第1話:前向きハタカ君
はじめましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
ここ最近はゲームやら、『ノクターン』での連載ばかりしていましたが、久しぶりに『なろう』でギャグ作品の連載を始めることとなりました♪
この物語はとにかく前向きでお花畑な登場人物たちが織り成す噛み合っているのかいないのか分からないギャグ作品です。
好みが分かれると思いますが、読んでみて面白いと思えば期待してください。
では、どうぞ。
あるところに世界中、古今東西のあらゆる魔法を極めた大魔法使いを倒したことで、新たな大魔法使いを名乗る男がおったそうな。
その大魔法使いはその名に恥じぬ強靭な肉体も持っていたため、自給自足生活をしながら小さな村で弟子の育成に励んでいた。
ある日は弟子に大岩を担がせて3000メートル級の山を登らせ、またある時は修行と称して弟子で薬物実験を行ったりもした。
だがその弟子は、師匠の嫌がらせのような修行の数々を、師匠以上の才能で乗り越え、全てを自分の力として身につけていった。
そんな感じで鍛えられた弟子が、師匠である大魔法使いを凌駕する存在へと変貌したのは弟子入りして一年もしないうちだったのだからその才能は人智の及ぶものではなかったのだろう。
「師匠! 今日の修行は一体何をするのですか♪」
期待に目を輝かせるひとりの少年。
背は低く、年相応なのだが高い声とハツラツとした表情で元気いっぱいである。
師匠が脳筋だからか、「弟子入りするなら髪は短く切れ!」と言われてバリカンで刈り上げたいがぐり頭はまるで野球少年めいている。
そしてその身に纏う魔力は圧巻の一言に尽きる。
小柄な体躯といがぐり頭、宇宙の真理を宿したかのようなキラキラした瞳。
この魔力絶大の少年こそ、大魔法使いの弟子、ハタカである。
実直勤勉にして何事にもポジティブ過ぎる、お花畑すら超越した牧歌的聖人君子然とした思考の魔法使い。
見る者に邪な心を欠片も抱かせぬキラキラと輝く瞳をした少年。それがハタカだ!
繰り返すが、キラキラした瞳はハタカ少年の心の清らかさを示すかのように、誰が見てもキラキラと輝いているのだ!!
「うむ、ハタカも魔法使いとしては大魔法使いの儂を超えたからのぅ。
ちょっと妬ましいから異世界へと行ってもらおうと思っての」
「異世界ですか?」
ハタカは首をかしげて師匠の言葉の続きを待つ。この動作一つ取ってもとても愛くるしい少年なのだが、そのキラキラが唯一通じないのが彼の師匠である。
ちなみにこの大魔法使いはハタカの師匠、名前はアラワカ。
身長211センチ、体重120キロ。筋肉ムキムキ、マッチョマンの体型をしており、「ジャガイモの皮向き」魔法しか使えない大魔法使いだ。
ハタカのキラキラした瞳が唯一通じない僻みっぽい男である。
「お前は儂がくれてやった教本を全て暗記し、改良し、もはや『ジャガイモの皮向き』魔法しか使えない儂以上の実力と知識じゃ。
そんなお前が邪魔になったから消えてもらおうとい言うとるのじゃ!」
すると大魔法使いアラワカの転移魔法(戦士職でも使える巻物を使用)が発動する。
ハタカ少年は驚きつつも、これも師匠からの修行に違いないと考え、流れに身を任せるように異世界へと旅立った。
「くっくっくっ。
儂もこの巨体と筋肉で世界中の有名どころの魔法使いを物理的に倒して回ったことで“大魔法使い”と呼ばれているとはいえ、この称号はハタカのような天賦の才を持った努力家が名乗るべきもの。
ならば、その天才の努力家さえいなければ、今後も儂が世界最強でいられるというものじゃ♪」
こうしてノリで弟子入りさせたハタカが、たったの三日で魔法使いとしても肉体的にも自分を超越したことへの嫉妬により、世界から追い出した大魔法使いアラワカ。
最初の三日で師匠超えを成したというのに、ハタカはとても真面目にアラワカ師匠の身の回りの世話をしていた。
御近所の町内会への出席なども面倒くさがりの師匠に代わって出席し、近所のオバさま方からも抜群に慕われていたので次期“大魔法使い”になるのはもう時間の問題だったのだ。
アラワカの称号が奪われる心配も、あながち間違ってはいないだろう。と言うか、すでに周囲の者たちはアラワカを軽んじ始めている。
憎き弟子を異世界に飛ばし、晴れ晴れとした気持ちで一人酒でお祝いし、ベッドへと倒れ込むようにして豪快に眠りに就いたアラワカだが、
人間というのはほんの少し先のことさえ予想ができないものである。
その次の日、目を覚ましたアラワカは、前の晩に浮かれて食べて投げ捨てたバナナの皮で滑って転んで豆腐の角に頭をぶつけてあっさりと死んでしまった。
はてさて、こんな師匠に鍛えられた天賦の才を持った努力家の少年は、異世界で一体、どのような冒険をするのだろうか?
嫉妬で送られ、期待でキラキラと瞳を輝かせて旅立ったハタカの旅はここから始まるのだ!!
連載初日は二話同時更新がマイルール。
続きもどうぞ♪