炎の江東高校
成都高校と江東高校の試合が始まった。江東高校は去年の優勝校である。その実力は正しく本物で、成都高校は第一試合に敗北、続く第二試合は何とか勝利し、現在一勝一敗だった。
「次は僕みたいだね」
成都高校の馬超が立ち上がった。彼女は成都高校の二年生である。真紅の短い髪を風に靡かせながら、自慢の槍を持って、校庭に出た。スラリと伸びた脚と引き締まった身体が美しく、所謂モデル体型だった。その割に胸は大きく、歩くたびに揺れるので、目のやり場に困るものがある。
対する江東高校からは三年生の程普が出ることとなった。彼女は小柄で人形のようであったが、手には大きな戦斧が握られており、一体この体のどこにこれを支えるほどの筋力が秘められているのか、誰もが疑問に思っていた。
「行け、程普」
部長の孫策は、白衣を身に纏い、眼鏡を掛けた知的な女性だった。これで同じ高校生だと言われても、にわかに信じ難いが、彼女は立派な江東高校の三年生である。その隣には、白い肌をした彼女とは正反対の、日に焼けた褐色肌に、黒い陸上部のユニフォームに身を包んだ、妹の孫権がベンチに座っていた。
「第一試合、始め」
審判の号令とともに、試合開始のゴングが鳴った。
「程普先輩、今回は僕達が勝つからね」
「御託は私の戦斧を受けてから言いなさい」
程普は自身の体よりも大きな戦斧を振り上げると、それを馬超の体目掛けて薙ぎ払った。
「うう・・・・」
馬超は手に持っていた槍を投げ捨てると、戦斧の先端を脇に挟んで受け止めた。
「え?」
程普は戦斧で馬超を薙ぎ払おうとするが、彼女の前で戦斧の刃が止まってしまい。ピクリとも動かない。馬超の口元がニヤリと歪んでいた。
「悪いけど、去年みたいにはならないよ」
「う、嘘でしょ?」
戸惑う程普を背後から見て、孫策は笑っていた。そして手に持っているメモ帳に、何かを素早く書き込んでいた。
「これは凄い。貴重なサンプルが取れそうだ。江東一番の力持ちである程普の攻撃を受け止めるなんて、彼女は純粋な力だけなら、私にも匹敵するというのに」
程普は戦斧を握り締めたまま、ズルズルと後ろに下がって行った。もちろん彼女の意思では無い。馬超の力がそうさせているのだ。
「や、止め・・・・」
次の瞬間、程普の体が宙に浮いた。馬超は程普の斧を奪うと、地面に向かって落下して来る程普の体を戦斧で弾き飛ばした。
「ぎにゃああああ」
眼を渦巻き状にグルグルと回しながら、程普は孫策の足元にまで吹き飛んで行った。
「程普選手ノックアウト。第三試合は馬超選手の勝利」
その瞬間、成都高校の生徒達は歓声を上げた。試合時間は僅か一分。あまりにも呆気ない幕切れであった。
「ふん、程普が敗れたか。しかし、次の第四試合には孫権がいる。行って来なさい」
「はい、お姉さま」
孫権は立ち上がると、次の対戦相手である劉備の顔をじっと睨み付けていた。