地区予選始まる
劉備がこの世界に来てからまだ三日しか経っていないが、今日は成都高校武芸部にとっては非常に大事な日である。今日は地区大会予選の組み合わせが発表されるため、武芸部の生徒達は全員、赤壁海岸に集まっていた。
「さて、地区予選は全部で四校の参加ですね。それでは組み合わせを発表します。まずは第一ブロック、荊州高校対江東学園。そして第二ブロック、成都高校対河北大学付属河北高校です」
生徒達はざわついていた。特に騒ぐようなことは無いのであるが、大会が始まると思うと、いやがうえにもテンションが上がってしまうものだ。
「成都高校集合」
関羽が散らばっている成都高校の武芸部員達を呼んだ。ただでさえ堅物の彼女だが、今日は特にそれを強く感じる。
「最初の試合は荊州高校と江東学園だな。奴らの強さを計る意味でも、この試合は見逃すな」
「はい」
レギュラーでは無い者も含めて、全員とも元気よく返事をする。一人だけ声を上げずに欠伸をしている劉備の首筋を、何か固い物が突いた。
「痛て」
慌てて振り向くと、そこには暗い顔をした黄忠が立っていた。
「黄忠先輩」
「何欠伸しているのよ。あなたは私からレギュラーの座を奪ったのよ。もっとちゃんとして」
「へいへい」
地区大会予選第一回戦が始まった。ちなみに今回の闘いの舞台は、成都高校の校庭である。
「部長、俺トイレ行って来ます」
「ああ・・・・」
フラフラとその場を立ち去る劉備を、関羽は訝しそうに見ていた。この間の抜けた男が果たして何処まで成都高校の勝利に貢献するのか、彼女自身心配だった。
気になる試合展開だが、荊州高校は大将戦まで行くこと無く、江東学園の前に散った。江東学園自体は元々、去年は全国大会まで上り詰めているので、優勝候補として名前が挙がっていたが、まさかここまで圧倒的だとは誰も予想しなかった。
「ふう、よく出たぜ」
「おい、劉備、試合だ行くぞ」
「へ?」
「だから、試合だ」
「俺達は第二ブロックのはずじゃ」
「終わったんだよ。第一ブロックが」
「にゃに?」
すでに校庭には成都高校と河北大付属の生徒達が並んでいた。劉備も慌ててその中に加わる。両者とも向かい合って一礼する。大会は五人の出場選手で構成されており、先に三勝した方が勝ちとなる。先鋒は張飛VS王門の闘いである。
「両者見合って、勝負開始」
始まりの号令とともに、張飛が必殺の蛇矛を持って突進した。猪突猛進は彼女の座右の銘である。
「ひいいいい」
対する王門は怯えていた。可哀想に、彼女は体も華奢でブルブルと子犬のように震えていた。勝利は言うまでも無く張飛である。
「イエーイ」
「良くやったぞ張飛」
勝利した張飛を関羽が出迎えた。張飛は余裕そうに手でVサインしていた。
続く第二回戦は成都高校の槍使い馬超と河北大付属の厳網との試合だったが、これも馬超の圧勝に終わった。
そして何の盛り上がりも見せないまま、いよいよ三回戦になった。成都高校からは劉備が、河北大付属からは、部長の公孫瓉が出場した。
「おいおい、中堅に部長かよ」
ビビる劉備の肩を関羽が叩いた。
「頑張れ、これで勝てば一回戦は勝ちだ」
「あまりプレッシャーは掛けないで下さいよ」
劉備は校庭に出ると、公孫瓉と真っ直ぐに対峙した。公孫瓉は青い涼しそうなショートヘヤーをしており、雰囲気は関羽に近い。どこか中性的な外見をしていた。
「やってやる」
(まあ、美人さんが相手でラッキーだけどよ)
「よろしく」
公孫瓉は手を差し出して握手を求めた。劉備もそれに応じて手を出した。
「隙あり」
公孫瓉は劉備の手首を掴むと、突然彼を投げ飛ばした。
「うおお?」
劉備は空中でクルクルと回転しながら地面に着地した。
「卑怯だぞ」
「ふん、馬鹿め。勝てば良いのだ」
「テ、テメー綺麗だからって調子に乗りやがって」
公孫瓉はいわゆる残念な美人だった。