表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/57

うっかりマネージャー登場

 成都高校、そこは全寮制の学校である。生徒数は少ないが、誰もが個性に溢れており、ある意味では理想の学園とも言える。


「あ~あ、かったるいな。武芸は楽しいけどよ。学校の授業はつまらないからな」

 劉備はフラフラと廊下を歩いていた。前方からは、両手に一杯の弁当箱を抱えた少女が近付いて来ている。

「あ~あ、部屋に戻りたいな」

「あ、危ないです」

「え?」


 突然、劉備の視界が真っ暗になった。四角く固い入れ物が、雨のように彼の頭上に降り注いだからである。そして眼を開けると、目の前には尻もちを突いた少女がいた。


「おい、大丈夫かよ」

「は、はい、大丈夫ですぅ。それよりも、大事なお弁当が」

「おっと、悪い」

 劉備は床に落ちた弁当箱を全て拾い上げると、そのうちの半分を持ってやることにした。

「あの、ありがとうなのです」

「気にすんなよ。それより、君可愛いね」

「あの、私、一年生の武芸部マネージャーですけど」

「え、マジで?」


 影が薄くて気が付かなかったなどとは口が裂けても言えない。少女は黒いロングヘヤーをしており、左目の下に泣きぼくろがあった。黒髪のロングと言えば、関羽が思い浮かぶところだが、彼女は体付きが華奢であったし、自身無さそうな表情をしていたので、似ていると言っても、関羽とは全く違うタイプに見えた。


「この弁当は?」

「部の人達を元気付けたいと思いまして」

「へえ、じゃあ俺ももらえるのかな?」

「は、はいもちろん」

 先程まで暗かった少女の顔がパッと明るくなった。


「おい、その弁当気を付けろよ。毒が入っているかも知れないぜ」

 突然、劉備の肩を叩きながら、一人の男子生徒が現れた。彼は少女を見下ろしながら、意地悪そうに弁当箱を足で蹴った。


 弁当箱はフタが取れて、床の上に中身がぶちまけられてしまった。

「あ・・・・」

 少女は慌てて弁当箱の方に駆け寄るが、それよりも早く、その男子生徒は弁当箱を足で踏み付けた。

「けけ、こんなもん持って来てんじゃねえ・・・・ぐはあ」

 語尾がおかしかったのは、劉備の拳が男子生徒の口に炸裂したからである。


「おい、こら、ウチの仲間に何してくれてんだ?」

「テ、テメーのために言ってやったんだぞ」

「どういうことだ?」

「孔明の罠だよ。こいつはな、頭が良いから、きっと弁当箱にも何かを入れているに違いねえ」

「あのな、脳みそが馬鹿か。仲間に毒を盛る奴がいるか」


 劉備は男性生徒の胸倉を掴むと、強引に自分の方に顔を引き寄せた。

「おい、テメー名前は?」

「ほ、法正だ。二組の・・・・」

「そうかい」

 劉備は法正の顔面を思い切り殴り飛ばすと、床に落ちたエビフライは一本取って、自分の口に放り込んだ。


「美味いじゃねーか」

 劉備は倒れた法正を蹴ると、そのまま落ちた弁当箱を拾って、教室に戻ってしまった。

「劉備さん・・・・」

 少女は劉備の後ろ姿をいつまでも見つめていた。


 屋上


 劉備は屋上で弁当箱を開けると、一緒に入っていた割り箸を割って、一人で黙々と食べ始めた。

「美味いな。うんうん」

「おい、劉備」

「ああ?」

 劉備の隣に関羽が現れた。彼女は凛とした切れ長の目で劉備を見つめている。

「何すか?」

「その弁当はどうした?」

「ああ、さっき下にいたマネージャーからもらったんすよ」


 劉備の言葉に、関羽は眼を閉じて溜息を吐いた。

「劉備、それは食べない方が良い」

「んだと、お前まで、そんなこと言うのかよ」

「違う、それは諸葛亮の作った弁当だろう。止めておけ」

「見損なったぜ、あんたまで孔明の罠だなんて言うのか」

「罠じゃない。それは天然だ」

「わけ分かんねえよ」


 関羽は興奮している劉備にゆっくりと事情を説明した。


「諸葛亮の部を思う気持ちは本物だ。しかしだ。彼女は料理が致命的に下手なのだ」

「美味いけど?」

「そうか、なら良かった。しかし後で腹が緩くなっても、彼女を恨むなよ」

「ああ、もち・・・・」

 言い掛けたところで、劉備の顔が真っ青になった。そして割り箸を手から落とすと、フラフラと立ち上がった。


「何処へ行く?」

「少し、トイレに・・・・」

「飯の途中にトイレとはけしからんな」

「いや、急ぎだから・・・・」

「急ぎだと。それならばどうして歩いているんだ?」

「こ、これはだなあ。走ったら漏れてしまうんだよ」

「ほほう」

 劉備は勢いで取った行動を深く反省した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ