劉備誘惑作戦
魏延と馬良が試合をしている同じ時、南陽高校と呼ばれる武芸界では無名の学校があった。去年まで弱小校の一つとされていたが、今年になって突然、力を付け始めたのだ。
「ああ、どうしよう。次の対戦相手は成都高校だ。噂では許昌高校を破ったそうじゃないか」
ここに部長の張繍という生徒がいた。彼は今時七三分けの時代遅れの髪形をしており、そこの厚い眼鏡を掛けていた。見るからに頼りなさそうな部長である。劉備同様、人口の8割が女性で構成されていると言われる、武芸の中では珍しい男子部員である。
「にゃは、大丈夫ですよ部長。私が付いてます」
張繍の背後には、赤い髪の毛を後ろで一本に結んだ少女が、岩の上に腰掛けていた。瞳は大きく、声は静かな囀りのようであった。その美少女の名は賈詡という。彼女がこの学校に転校して以来、南陽高校は瞬く間に力を付けた。
「しかし、奴らは洛陽学園を破っている」
「だ・か・ら。正攻法では負けますよ」
賈詡は指をクルクルと回すと、怯えている張繍の額を軽く突いた。
「ではどうしたら・・・・」
「私に任せてください。恐らく優勝は無理でしょうけど、南陽の名を他校に知らしめるぐらいのことはしますから。少なくとも成都高校には負けませんよ。私達を倒せるのは許昌高校ぐらいです」
賈詡は幼顔とは裏腹に妖艶な笑みを浮かべると、岩から飛び降りて、そのままスキップしながら校舎の中に入って行った。
「ああ、正しく天使だ」
張繍は賈詡の後ろ姿に見惚れたまま立ち尽くしていた。
「さ~てと」
賈詡は扉の裏にいる巨漢の女子生徒の方を見て、ニコッと微笑んだ。
「胡車児さん。見てたの。エッチ・・・・」
「部長・・・・何・・・・言った?」
胡車児と呼ばれた生徒は、賈詡の何倍も背が高く、まるで巨人だった。校舎内でも下を向かなければ、天井に頭をぶつけてしまうのだ。
「負けるって言ってたわ。まあ、部長のネガティブは慣れっこよね。それよりさ。胡車児ちゃん。私の作戦に協力してくれる?」
「作戦・・・・?」
「あそこの主力は劉備玄徳という一年生よ。彼を籠絡するの。その名も劉備誘惑大作戦。ポロリもあるかも編」
「ちょっと・・・・どこまで・・・・名前?」
「ああん、気にしなくて良いわよん。とにかく、私はこれから成都高校に行くから、あなたは部長を見張っておいて。あの人、私がいないとすぐにビビッて棄権しようとか言い出すから」
「招致」
胡車児は巨体を揺らしながら、張繍の元へと近付いて行った。
賈詡はそのまま校門を出ると、真っ直ぐ成都高校へと走って行った。




