温まって来た~
劉備は高順と向かい合うと、いつになく真剣な眼差しをしていた。
「やばいな。負けちまうかもな」
「ふん、驚いたわね。私の攻撃を三回も耐えるなんて。あなた凄いわよ。でもね。次で終わる。次の一撃はさらに強い」
「なあ、一つだけ質問がある。なんで攻撃のたびに強くなるんだ?」
「ふふ、正式には攻撃のたびに強くなってはいない。私は闘いで本気になるまで時間が掛かるの。よくいるでしょ。寝起きが悪くて。朝が弱かったり、午前中は力を発揮できなかったりする人が。私の場合、勝負の時にエンジンが掛かるまでに時間が必要なの。でも、温まって来たわ」
高順の体が再び消えた。そしてあっという間に劉備の目の前まで現れると、彼の額目掛けて剣撃を放った。
「せやあああああ」
劉備は突然大声で叫ぶと、剣を乱暴に持ち替えて、高順目掛けて叩き付けた。これには彼女も驚いた。彼は全身の気を剣に込めたのだ。そうすることで、RPGの補助魔法のように、攻撃力を爆発的に高めることには成功したが、代わりに体を守るための気が無いため。ダメージも痛みも数倍になってしまう。
「何て勇気と覚悟」
高順は劉備の覚悟に驚きながら、四発目を劉備の体に喰らわせた。
「四つ」
「うおおおおお」
同時に、高順の体に劉備の剣が炸裂する。200キロの豪速球を打つ凄腕バッターのように、彼女の体を大きく吹き飛ばすと、同時に持っていた剣の刃が真っ二つに折れた。どうやら、彼の攻撃に剣の耐久力が持たなかったらしい。
「がはあああ」
劉備は体を大きく捻じると、そのまま先の折れた剣を持ったまま、地面にうつ伏せに崩れ落ちた。同時に、高順もフェンスに突っ込むと、そのままガクッと頭を垂れてしまった。
両者ノックアウト。しかし試合は終わらない。何故ならば、劉備が両足で立っているからだ。彼はまだ闘う余力を残していた。
「げほげほ、最悪だぜ。あばらが折れたかもな。しかも、息するたびに痛いぜ」
劉備は血の混じった痰を足元に吐くと。高順の方にゆっくりと近付いた。
「おい、立ちなよ。まだやれるだろ。あんたの服をひん剥いて裸にしないと、勝負は終わらないぜ」
「はあ・・・・はあ・・・・」
高順は荒い呼吸で答えると、フラフラと立ち上がった。そして再び腰を深く落とした。
「来るかい?」
「もちろん」
大会始まって以来の壮絶な試合に、敵も味方も関係なく、誰もが息を呑んでそれを見ていた。
「五つ」
高順の体が消えた。劉備は折れて短くなった剣を強く握ると、自分も同じように腰を深く落とした。それは高順の使用していた技と全く同じものだった。恐ろしいことに、彼はこの試合中で、高順の技を覚えてしまったのだ。
「一つ」
劉備の体も消え、両者はグラウンドの真ん中で大きく火花を散らし合った。




