神速対決
馬超と張遼は互いに向かい合い、握手を交わすと、銅鑼の音とともに、互いに武器を構えて打ち合った。
張遼の武器は関羽と同じ偃月刀だ。対して馬超は槍である。同じ長い柄の武器だが、性質は互いに大きく異なるようだ。
「せや」
「はああああ」
互いの武器がぶつかり合い、金属音を鳴らしながら、何度もぶつかったり、離れたりを繰り返している。張遼と馬超はいわゆる同じタイプの選手だった。身軽さを生かしたスピードタイプ。互いに残像を残しながら、激しい一騎打ちを続けた。
「ひやあああ、すげえ」
劉備は身を乗り出して試合に夢中になっていた。しかしそれは、彼だけではない。その会場にいる全員が見惚れていた。そんな中で、信じられないような現象が発生した。
「何だよ、あれ・・・・」
最初に気付いたのは、他校の視察に来ていた生徒達だった。何と、馬超の体が三体に増えているのである。分身の術とでも言うのだろうか。
対する張遼も同じように、三体に分裂すると、分裂した体同士で打ち合いをしていた。実力者同士の試合とはこんなにもハイレベルなものなのか。そこにいる誰もがそう思っていた矢先、馬超の体に異変が起きた。
「くううう・・・・」
張遼の偃月刀による一撃を顔面に受けて、馬超は体のバランスを崩すと、そのまま脇腹にも一撃受け、錐揉み状になりながら、地面の上を転がって行った。
「げほげほ・・・・」
いつの間にか槍を手放して、投げ出されるような形で馬超は倒れていた。
馬超は砂埃に塗れながら立ち上がると、足元に落ちている槍を拾おうとした。
「勝負あったな」
関羽は馬超の反対側を向いて、フェンスに背中を付けて寄り掛かった。諸葛亮は少しだけ頬を膨らませて関羽を睨み付けた。
「ちょっと、酷いじゃないですか。まだ試合は始まったばかりですよ」
「あれは、そう、クリティカルヒットだ。あの連続攻撃は致命的だ。馬超も分かっているだろう。上級者同士の戦いは、一度の油断が命取りとなる。勝てる試合だった。しかし馬超は油断した。当然の結果だ」
関羽は悔しそうに言うと、そのままベンチを去ってしまった。そして去り際に劉備を見た。
「劉備、次の試合に勝て。勝ったらお前の望みを一個聞いてやる」
「ま、マジすか」
劉備は小躍りしていた。すると、隣にいた諸葛亮が恨めしそうな顔で劉備の顔を覗いた。
「ちょっと劉備さん。馬超さんが負けそうだというのに、よくそんなに、欲望を丸出しにした下衆な顔を公衆の面前に晒せますね」
「おいおい、言いすぎだぜ諸葛ちゃん。部長程の美人を好き放題にできるんだぜ。そりゃ、喜ぶだろ。寧ろ、それこそが男の証」
「はあ・・・・」
劉備は自分の半分ほどしか身長がない諸葛亮の頭を軽く叩いた。
「心配するな。馬超は負けたが、次があるだろ。ここで無理して怪我する方が馬鹿だぜ。俺が勝つからよ」
劉備はニコッと微笑むと、自分もベンチを後にした。
その後、試合は関羽の予想通り、馬超の敗北で終わった。今の時点で、成都高校と洛陽学園は一勝一敗、互角の展開となっていた。




