遅れて来た女
呂布はベンチで華雄と黄忠の試合を見ていたが、ふと、立ち上がると、そのまま部員達を置いて中庭の方に行ってしまった。
「んん・・・・」
大木に腰掛けている、眠れる森の少女がいた。彼女は偃月刀を別の木に立て掛けたまま、涎を垂らして眠っていた。よほど、気持ちが良いのか、まるで猫のような羽の伸ばし方だ。
「おい」
快適な睡眠を妨害しに、呂布が方天戟を引っ提げて少女の前に現れた。少女の眼に黒い影が映っている。呂布は深く溜息を吐くと、方天戟の柄で少女の後頭部を殴った。
「ひぎゃああああ」
劈くような悲鳴とともに、少女はガバッと起き上がった。後頭部にはコロネのようなアホ毛が乗っており、瞳は大きく、水晶のようだった。
「何ですか・・・・ふああああ」
少女は口に手を当てて欠伸をすると、涙目のまま呂布を見た。視界がぼやけていて、顔が良く見えなかった。
「呆れたぞ張遼。せっかくの晴れ舞台だと言うのに、お前はサボりか」
「違いますよ。充電ですってば。一日10時間の睡眠で過ごす人の身にもなって下さい」
「ふん、ツッコまないからな。それより、華雄が負けた。次は貴様の出番だ」
「え、もう試合が終わったんですか?」
呂布は張遼の槍を、彼女に手渡すと深く溜息を吐いた。
「いいや、だが、恐らく負けるだろう。忌々しいが、成都高校には人材が揃っている。まさか気の使い手がいたとはな。それにあの様子だと、まだ気の使い手はたくさんいる。あんな奴を先鋒に持って来るわけないからな」
「ふうん、それで私が次出番なんですか?」
「自分の順番ぐらい覚えておけ。お前の対戦相手は馬超だ。奴は対して強くない。気の使い手のお前ならば勝てるだろう」
「へえ・・・・」
張遼は興味無さそうに言うと、立ち上がって偃月刀を軽く振り回した。
「でも、私は関羽部長と闘いたいな。だって、この偃月刀だって、関羽先輩の真似をして使ってるんだし、サインも欲しいし・・・・」
「呑気なものだな」
呂布と張遼は次の試合のために、再びグラウンドに戻って来た。試合は予想通り、すでに終わっており、華雄が敗退していた。特に驚くことではない。予想通りのことだ。
「さあ、張遼行け」
「はい」
張遼は眠そうに返事をすると、偃月刀を空中に投げて、それを器用に片手でキャッチした。対戦相手の馬超は、すでにグラウンドに出ていた。
「へえ、あんたが馬超先輩か」
「そういう君は見ない顔だね。悪いけど、僕負けないよ」
馬超は槍を指先でクルクルと回していた。




