命中率100%
試合開始の銅鑼が叩かれ、同時に華雄は槍を振り回して、黄忠に向かって走って行った。黄忠の武器は遠距離型の弓であるから、華雄の行動は当然なのだが、問題は、黄忠の方だった。彼女は突然、右目を手で押さえると、ガクッと頭を垂れてしまった。
「何だ、ふざけるな」
華雄は槍の先端を黄忠に向けた。その瞬間、黄忠の右目が赤く発光した。そしてボソッと低い声で呟いた。
「トレースアイ」
華雄の体に赤い斑点がいくつも浮かび上がった。黄忠はそのまま矢をつがえた。
矢はブンッという音を立てて、真っ直ぐ華雄に向かって放たれた。しかし黄忠もさることながら、華雄も決して弱くはない。体を捻って矢を避けると、黄忠の脇腹を槍の先端で殴った。
「く・・・・」
黄忠は背後に跳ぶと、打たれた脇腹を押さえながら、不敵にほほ笑んだ。
「何がおかしい?」
「うふふ、後ろよ」
華雄が背後を振り向くと、先程避けたはずの矢が、空中で静止していた。そして吸い込まれるように、華雄の方に軌道を変えて飛んで行った。
「あ・・・・」
矢は華雄の右肩の赤い斑点に突き刺さった。
「あうう」
華雄は右肩を押さえたまま蹲った。そして槍を強く握ると、再び黄忠に向かって走った。
「見てなさい」
黄忠は矢をいっぺんに三本放った。それらは華雄の両脇を抜けて、ベンチにいる呂布の目の前で止まると、再び軌道を変えて、華雄の背中に三本とも突き刺さった。
「勝負あったわね」
「あ、あぐ・・・・」
華雄は口をパクパクとさせると、そのままうつ伏せに倒れた。誰もが勝負あったと思った。しかし、黄忠の表情から緊張は抜けていない。華雄は槍を地面に突き刺し立ち上がると、ゆっくりと深呼吸した。
「ふう、やるな。無傷であたしを追い詰めるなんて。しかし、あたしも負けるわけにはいかない」
華雄は眼を閉じて、槍をグルグルと回転させ、そこから生じた真空波で黄忠の右肩を切り裂いた。
「・・・・」
黄忠の右肩に着けていたサポーターが割れて、衣服ごと皮膚を縦に切り裂いた。しかし、問題は眼に見えるようなシンプルなものでは無かった。
「嘘・・・・」
黄忠は右手に持っていた大弓を落とすと、突然。立ったままフラフラと何かを探しているかのように、周りを見回した。
「嘘でしょ。右腕が無い・・・・」
黄忠は額に脂汗を滲ませて、バランスを崩してして倒れた。まるで眼を回しているかのようにも見える。




