表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/57

強化合宿ですよ

 夏休み、学生だけの特権である。実際には宿題に追われて面倒な毎日を過ごすことになるが、それも中学生までだ。高校生にもなると、宿題は早々出ない。ただし、部活動をする者、特に運動部の場合は、夏休みは絶好の練習期間となる。例によって例のごとく、関羽率いる成都高校の武芸部員達は、熱中症必死の中、朝から学校で朝練をしていた。


「全国大会は1週間後だ。それまでに鍛えられるだけ鍛えるぞ」

 全国大会で浮かれていられるのも最初の内だけだった。すぐに全国大会に向けてのハードな練習が始まっていたのだ。

「マネージャー、例のモノを」

 関羽が手を叩くと、成都高校の知恵袋こと諸葛亮が、脚にローラーの付いた巨大な木箱をガラガラと押してグラウンドに姿を現した。


「何だ?」

 部員達は訝しい顔でそれを見守っていたが、すぐに諸葛亮が説明を始めた。

「これは私が造った連弩という物です。ちょっと劉備さん、ここに来て下さい」

「あいよ」

 劉備は諸葛亮に言われた通り、連弩の前に立った。その時である。突然、連弩が音を立てて左右に揺れ出した。同時に箱の中心部に空いていた小さな無数の穴から、花火に使うような細い棒状の物体が飛び出し、劉備の額に突き刺さった。


「うぎゃああああ」

 額から流血しながら劉備は転げ回った。何と弓矢が飛び出して来たのだ。

「耐久力を付けるためのトレーニング器具です。そしてもう一つ、こんな物が」

 諸葛亮は木で造られた牛の模型を運んで来た。

「これは木牛です。これを担いでグラウンドを周れば、体力が付きます」

 諸葛亮の用意したトレーニング器具は、部員達を怯えさせるのに十分だった。それを関羽が褒めるものだから、より手に負えない。


「良いぞ、皆練習だ。この器具を使って優勝するぞ」

 関羽の言葉に賛同する者はいなかった。戸惑う生徒達の中から、一際背の低い張飛が飛び出して来た。

「やい、部長、そんな試合もしたことの無い病弱マネージャーの造った物なんか使いたくありません」

「張飛か、お前が諸葛亮を認めていないのは分かるが、彼女のトレーニングメニューをこなして来たからこそ、地区大会を1位通過できたんだ」

「それはそうだろうけど、あたしは嫌です」

「黙れ、皆の足を引っ張るな」


 張飛は手に持っている蛇矛を地面に投げつけると、地団太踏みながらさらに食い下がった。

「部長、あたしらは地区大会を1位通解しているんですよ。ちょっとぐらい油断したって・・・・」

「馬鹿、それがダメなんだ。良いか、全国大会には他のブロックの地区大会を優勝した連中も参加しているんだ。私達はシード枠で、他よりも1試合少なく決勝戦に行けるからって油断は禁物だ・・・・」

 関羽は顔を赤くしながら怒鳴ると、水筒をグイッと飲み干して、さらに演説を続けた。


「私達が知っている範疇でも、例えば2位の許昌高校は絶対にレギュラーを総入れ替えして、より強い人選で臨んでくるはずだ。それに江東高校だって油断できない。しかし、私が最も恐れているのは、洛陽学園だ。彼女らは5位とはいえ、地区大会では精鋭メンバーを欠いていた。聞けば、全国では正真正銘の精鋭メンバーで挑んで来るらしい」

「精鋭?」

 流石の張飛も唾を呑みこんだ。


「部長の呂布はもちろん、高順や華雄、そして何より、今年から入ったという一年生レギュラーに張遼という生徒がいる。彼女こそ、私が最も気を付けている人物だ。実力主義の許昌高校とは違って、年功序列の洛陽学園のことだ。一年生でレギュラーだなんて早々あることじゃない」

 関羽はそれだけ言うと、張飛を置いてスタスタと歩いて行ってしまった。張飛は足元の石を蹴飛ばすと、落とした蛇矛を広い、仕方無く、木牛を抱えて歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ