必殺の逆回転
馬超は立ち上がると、不敵な笑みを浮かべている于禁を見て、彼女も同じように笑った。それは、于禁の陰鬱なものとは違って、快活な勝負を楽しもうとする前向きな表情だった。
「痛たた、痛いけど、強い人と闘えるのは好きかな」
馬超は槍を振り回すと、于禁の方に走って行った。
「おいおい、馬超先輩、少年漫画の主人公張りに、楽しんでいるけど、あれ防げるのか?」
劉備は半ば呆れ気味に言うと、突然、背後からポカッと頭を叩かれた。
「痛て」
「馬超が頑張っているんだから応援しろ」
劉備を叩いたのは、病院から戻って来た関羽だった。彼女は趙雲と一緒に劉備の後ろから試合を観戦していた。
「ふふふ・・・・」
「如何しました。曹操様?」
曹操は馬超の姿を見て笑っていた。何がそんなに可笑しいのか、彼女をよく理解しているはずの部員達さえ、不思議そうに彼女を見守っていた。
「今分かったのよ。馬超は于禁には勝てない」
曹操は得意気に言うと、そのまま立ち上がって何処かに行ってしまった。見るまでも無いとでも言うのだろうか。少なくとも、曹操以外の部員達は、怖くて試合から眼を離すことなどできなかった。
「せやあああ」
馬超と于禁が何度もぶつかり合い、汗を迸らせている。馬超は戦闘中は非常に表情豊かで、喜怒哀楽というものを感じさせていたが、于禁は逆に、無表情のまま沈黙を保っていた。
「・・・・」
于禁の体が再び渦巻き状に回転し、馬超をフェンスに激突させた。彼女の必殺技、冷徹な微笑が炸裂したのである。
「あう・・・・」
馬超はうつ伏せに倒れると、砂まみれになった髪を振り乱しながら、何の躊躇いも無く、于禁の元へと走って行った。
「く・・・・」
于禁の頬に汗が垂れていた。何度吹き飛ばしてもゾンビのごとく蘇って来る馬超に、恐怖感を覚えていたのだ。
(私は負けるわけにはいかない)
于禁の心の中にはそれしか無かった。この試合で無様な結果を残せば、自分は部活を去らなければならないだろう。部長の性格からして、次は無い。本来は一回目の敗北の時点で、自分の選手生命は終わっていたのだ。そう考えると、彼女としては意地でもこの一勝は手に入れたい。
「ねえ」
「ん?」
互いに打ち合っている最中、馬超が突然于禁に話し掛けた。
「冷徹な微笑だっけ。あれもう使わない方が良いよ。うん」
「何?」
使うなとはどういう意味だろうか。于禁は考えた。
「怖いのか?」
「ううん、これは警告だよ。け・い・こ・く」
馬超は槍の柄で于禁の腹を突いた。
「ちっ」
于禁は再び冷徹な微笑の構えを取った。すると馬超も同じような姿勢で槍を構えた。
「言っておくけど。本当に警告しているんだからね」
「私の技を破れないので、脅して使わせないつもりだな。その手は喰わない」
于禁の体が再び渦巻き状に回転した。その瞬間、馬超の顔付きが変わった。何と、馬超の体も回転を始めたのだ。それも、于禁とは逆方向に回転を始めた。




