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気力の勝負

 張飛は許緒に上空に投げ飛ばされると、そのまま真っ逆さまに地面に落下した。しかし、直前で許緒が受け止めると、再び張飛を空に向けて投げ飛ばした。


「な、何をしているんでしょう」

 諸葛亮は不思議そうに許緒の姿を見ていた。関羽はフェンスを乱暴に掴むと、歯痒そうに舌打ちをした。

「マズイな。このまま何度も投げられ続けたら、張飛は体力をどんどん消耗してしまう」

 関羽の不安は的中していた。許緒は張飛を投げ、落下して来た彼女を受け止めて、再び投げる。これを何度も繰り返していくうち、張飛の四肢の力が抜けて行くのが、眼に見えて分かった。許緒はこのまま張飛の体力が限界に達するのを待っているのだろう。


「うぐ・・・・」

 張飛の体は一瞬、ビクッと金魚のように跳ねると、そのまま硬直して動かなくなった。どうやら意識を失ったらしい。許緒はそれを見て、自身の瞳を思い切り開いた。そして落下してくる張飛を、今度は受け止めることなく横に逸れた。


 張飛の体は地面に激突すると、砂埃を立てて、そのまま大の字に倒れてしまった。


「げほ、げほ・・・・」

 張飛は落下の衝撃で目を覚ましたらしく、ふらつきながらも立ち上がろうとした。

「止めろ、張飛」

 背後から関羽が叫んだ。しかし張飛には聞こえていないのか、彼女の方を振り向きもせずに、再び蛇矛を構えた。


「ほう・・・・」

 曹操は敵ながら張飛の姿に感銘を覚えていた。何故、こんな素晴らしい人材が成都高校にはいるのか、彼女は不思議でならなかった。


「はあ・・・・はあ・・・・」

 張飛は蛇矛を振り回して、許緒に斬り掛かった。しかし、石に躓いたのか、そのまま体のバランスを崩して、地面の上に顔をぶつけてしまう。

「うう・・・・」

 鼻血を流しながらも、張飛は尚も立ち上がった。その姿に、周りの生徒達は恐怖すら覚えていた。現在、成都高校は二勝しており、この試合を落としたとしても、その優勢は変わらない。しかし、張飛は是が非でも自分の手で勝利を決めたかった。


 すでに許緒に戦意はない。今の張飛の状態を客観的に見て、最早、闘う必要が無いことを悟ったのか、急に肩の力を抜いてしまった。


「この・・・・野郎・・・・」

 張飛は蛇矛を槍投げのようにして、許緒目掛けて飛ばした。いや、飛ばしたつもりだった。張飛の蛇矛は、許緒の頬を掠めることも無く、全く見当違いの方向に飛んで行ってしまったのだ。同時に、関羽は審判に手で合図をした。降参を示すジェスチャーをしたのだ。


「試合終了」

 審判は急いで銅鑼を鳴らすと、大声で叫んだ。

「・・・・」

 許緒は張飛に背を向けると、そのまま曹操の元に歩いて行った。

「ま、待て」

 張飛は素手で許緒に背後からのしかかると、何とか彼女との試合を再開しようと、必死にもがいていた。短気で負けず嫌いな、彼女の悪い癖が出たのだ。これには敵はおろか、関羽や趙雲といった輩も呆れてしまった。



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