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力比べ

 許昌高校の最重量級選手と言われている許緒が、その巨体を震わせながら、グラウンドに姿を現した。対する成都高校からの出場者は、最も軽量の選手、張飛である。


「やい、デカブツ。掛かって来なよ」

 張飛は必殺の蛇矛を肩にひっさげて、許緒を挑発した。しかし、彼女は言葉の意味を理解していないのか、首を傾げているだけで、どんよりとした瞳で、張飛をじっと見つめている。


「なんだか変な奴だな」

 関羽は腕を組んだまま唸っていた。隣にいた劉備と諸葛亮は互いに顔を見合わせると、諸葛亮の方が深刻そうな顔をしていた。

「心配ですね」

「ああ?」

「心配だって言ったんです。張飛さんは、私が言うのも何ですけど、背だって低いし、確かに力は学校一番かも知れませんけど、許緒さんの巨体に弾き飛ばされないか心配で・・・・」

「ううむ、確かにリョナシーンとしては、メスゴリラに犯される美少女の図の方が絵になるな。女子プロで悪役レスラーにアイドルレスラーがボコボコにされる感じ・・・・」

「ちょっと、言っていることが理解しかねますけど・・・・」


 呆れる諸葛亮をよそに、今度は黄忠が現れて、心配そうに張飛を見守っていた。


「あら、黄忠さん珍しいですね。自分がレギュラーじゃない試合には興味が無いって、いつも来ないのに」

「たまには登場しないと忘れられそうだからね。それに、うふふ、あんな巨体と闘ったら、張飛、怪我して次の試合に出れないかもね」

 言いながら黄忠は、関羽の方をチラチラと見ていた。要するに、今日は自分を売り込みに来たらしい。ギリギリまで、レギュラーとして地区大会に出るはずの彼女だったが、その数日前に、突然現れた劉備によって、その座を奪われてしまったので、彼女が不貞腐れるのも無理はない。


「三人ともうるさいぞ」

 試合が始まろうというこの時に、あまりに緊迫感に欠ける三人を見て、ついに部長関羽もキレた。吐き捨てるように怒鳴りつけると、プイッとフェンス越しから張飛の方に顔を向けて、劉備達を視界からフェードアウトさせた。


 試合開始の銅鑼が叩かれた。許緒と比べると、張飛の小ささが、より鮮明に見えてしまう。しかし小さいゆえのメリットもある。それはスピードである。張飛は早速蛇矛を振り回して、許緒に先制攻撃を仕掛けた。


「せやああああ」

 凛とした少女の声が青空にまで響き渡る。張飛は蛇矛の先で、許緒の腹を思い切り突き刺した。狙った部分に見事、クリーンヒットしたのだ。

「・・・・」

 許緒はビクともしない。それどころか、攻撃に成功したはずの張飛の方が、額に汗を滲ませて、呼吸を荒くしていた。


「な、どうしたんだ。張飛の奴」

「何だか様子がおかしいな」

 関羽と劉備は不安そうに張飛の後ろ姿を見ていた。彼女の体がピクリとも動かない。しかし全身は汗で濡れており、何かに力を込めているように見える。



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