非情な仕打ち、曹操の決断
会場は騒然としていた。視察のために試合を見に来ていた他校の生徒達も口をつぐんだ。趙雲は青紅の剣を鞘に入れると、そのまま夏候恩から離れて行った。
「ま、待て、私はまだやれる」
夏候恩は立ち上がろうとするが、すぐに前のめりに倒れてしまう。
「無駄よ。陰を使って気を無くした状態で、私の攻撃をもろに受けたのだから。しばらくは立てない」
「うるさいわよ。まだ闘えるのよ」
「元々は、あなたが私と自分の武器を賭けて闘おうと誘って来たのが原因よね。だからこの剣を返す気はないし、もうあなたは私に負けている」
夏候恩はまだ諦めておらず、矛を杖代わりにして立ち上がろうとしたが、それをベンチで見ていた曹操が止めた。何と彼女は審判に合図を送り、彼女を強引に降参させてしまったのだ。
「あ、部長?」
納得がいかない夏候恩は、フラフラの体を引き摺って、曹操のいるベンチに歩いて行ったが、曹操は取り合うのも無駄とばかりに、ベンチから立ち上がった。
「夏候恩、あなたの負けね。その上、あんなに無様な姿を晒すなんて、許昌の恥だわ。今日を持って、夏候恩のレギュラーの任を解く」
曹操は指を鳴らした。すると、後ろに控えていた一人の巨漢の女子生徒が腰を上げて、夏候恩の前に立ちはだかった。
「うう、来るな、私に触るなああああ」
暴れる夏候恩を抑えつけると、そのまま彼女の着ていた青いレギュラージャージを脱がせて、黒のスポーツブラ一枚にしてしまった。
「許緒ご苦労」
許緒と呼ばれた生徒は、100キロを超えているであろう重い体躯を引き摺りながら、脱がしたジャージを畳んでしまった。
「さて、次の試合よね。こちらからは夏候惇あんたが出なさい」
「はっ」
奥に控えていた眼帯の女子生徒が立ち上がり、刀を握り締めると、そのままグラウンドの方にスタスタと歩いて行った。彼女は許昌のナンバー2で知られている猛者だ。
「うちからは劉備、お前だ」
「え、ちょ・・・・」
劉備は予想外の人選に目を丸くしていた。しかし、周りの痛い視線が自分に注がれていることに気が付くと、仕方なく自分もグラウンドの方に出て行った。
夏候惇は青く長い髪に、筋肉質な体とは裏腹に、女性特有の膨らみも中々の大きさだった。
「おいおい、眼帯に巨乳って、マニアックすぎる属性だぜ」
劉備はやれやれと半ば呆れたように言うと、突然、夏候惇は眼帯を右手で押さえて、体をくの字に曲げた。
「うう・・・・」
「おい、どうした。大丈夫か。ものもらいか、結膜炎か?」
「右目が・・・・」
試合前に彼女は何と闘っているのだろう。劉備が困惑していると、夏候惇は眼帯を押さえながら劉備を睨み付けた。
「右目が疼く・・・・」
「こ、これは厨二病か?」
「私の右目を目覚めさせる前に、この闘いを終わりにしよう」
夏候惇は刀を振り上げると、早くも戦闘態勢に入っていた。




