天翔趙雲
いよいよ地区大会決勝戦が始まった。関羽率いる成都高校と、曹操率いる許昌高校の二校の対決である。許昌高校は昨年、全国大会にまで進出しているので、周りから期待されているのはもちろんのこと、まだまだ無名の成都高校にも、本大会のブラックホース足りえるか、同じく期待されていた。
「部長、最初は私が出ます」
青紅の剣を携えて趙雲が現れた。あまり自分の意見を面に出さない彼女が、直談判に来るなど珍しいと、関羽は何故か感心していた。もちろん、彼女が先鋒を務めたいと言うのには理由があった。
「あちらの先鋒は夏候恩らしいです。彼女と私には因縁があります。是非闘わせて下さい」
「分かったよ。でも油断するなよ」
「私が油断?」
趙雲は関羽のことを鋭い目で睨み付けた。品行方正な彼女らしからぬ好戦的な姿勢に、やはりこの大会は、彼女にとっても大きな意義のある大会であることを改めて知った関羽であった。
同じ頃、許昌高校のベンチでも作戦会議が行われていた。曹操の周りには、レギュラー、非レギュラー含めて、成都高校の軽く3倍近くの生徒達が集まっており、いわゆる曹操ファンクラブのようなものが出来上がっていた。
「部長、行って参ります」
「うん、全力で潰して来なさい。うちの部の鉄則は知っているわよね?」
「愚問ですよ。敗者に語る口無し。負けたらその場でレギュラーを抜けます」
「よし」
許昌高校が何故強いのか、その理由は様々であるが、最も大きな理由は、この高校では試合に負けた者は、即刻レギュラーから抜けることになっている。つまり、必然的に強い者だけが残り、弱い者は淘汰されていくのだ。その上、豊富な部員が控えており、前述した鉄則の影響もあって、レギュラーの入れ替わりが激しい。言い換えれば、相手から対策を取られにくいという大きな強みがある。しょっちゅうメンバーが変わるので、闘う選手のデータを取ることも容易ではない。それこそが許昌高校の強さの所以である。
「趙雲、今日こそはあんたを倒す」
一足先にグラウンドにいた夏候恩は、趙雲の持っている青紅の剣をじっと見ていた。
「ふん、もし、この勝負に勝てたら、この剣はあなたに返すわ」
「当然よ」
「あの時、あなたが賭け試合を申し込んで来なければ、こんなことにはならなかったのにね」
趙雲の発言に、夏候恩の眉がピクッと動いた。どうやら彼女の琴線に触れてしまったらしい。
「ぶっ殺す」
夏候恩は矛を片手に、趙雲に向かって走って行った。鼻息を荒くしている夏候恩とは裏腹に、趙雲はとても爽やかな表情をしていた。涼しそうに髪を掻き揚げると、急に眼を見開いて、青紅の剣を輝かせた。
「悪いけど、私強いよ・・・・」
趙雲は青紅の剣を構えた。
「良く見ておけよ劉備、趙雲が何をするのか」
「はへ?」
劉備は試合を見ていなかったが、関羽に言われて、仕方なく趙雲の方を見た。
「ポロリもチラリも無しですか」
「趙雲は気を武器に込めている。あれは何だ?」
「いや分かりませんけど」
「教えただろ。気には四つの使い方がある。趙雲はそのうち「撃」を使っている。つまり、武器を気で覆い頑丈にしているんだ。対して夏候恩は「陰」を使っている」
関羽が言い終わると、夏候恩の体が透明になった。
「あ、あれは・・・・」
「陰を使って自身の気配を消した。気がゼロになってしまうので、攻撃されたら防御できず致命傷になるが、並みの相手ならば、彼女の姿を見ることなど不可能だろう。劉備、お前は見えるか?」
「微かにですけど」
「ならよし」
夏候恩の矛による一撃が趙雲の頭部目掛けて放たれた。瞬間、趙雲の顔付きが変わった。
「あ・・・・え・・・・?」
驚いたのは夏候恩だった。趙雲は青紅の剣で空を薙ぎ払うと、次の瞬間、夏候恩の体は地面に横になっていた。




