禁断の奥義
馬超は龐徳の全身からただならぬ殺気を感じていた。彼は何かを企んでいる。そして彼の両目がクワッと開かれた時、彼女は自分の感じていた殺気が気のせいで無いことに気が付いた。
「狂乱甲」
龐徳はぼそりと唱えると、突然彼女の腕の筋肉が脈打ち立ち、どんどん膨張していった。
「ぬあああああ」
「な、何・・・・?」
馬超は一歩下がると、手にした槍を両手で握り締め、ゴクッと唾を呑んだ。
「行くっすよ。先輩」
フェンス越しに試合を見ていた関羽の顔が曇った。明らかな不快感を帯び、それを見守っている。隣にいた諸葛亮がその異変に気付くのに、大した時間は掛からない。
「どうしました?」
「あの選手、まずいぞ」
関羽は爪を噛みながら、両手でフェンスを叩いた。その異様な行動に、周りの生徒らの視線が一斉に彼女に注がれた。
「誰が命じたのか知らないが、このまま試合を続けていたら、彼女が危険だ。馬超に早々に決着を着けてもらうしかない」
「何がやばいんですか?」
「あれは筋肉に負担を掛ける技だ。その気になれば、私でも趙雲でも、誰でも使えるようになるだろう。しかし、選手生命を失うかも知れないリスクが常に付き纏う、あの技をチョイスする馬鹿はいない。思うに、彼女は自分の状況を全く理解していないのだろう」
関羽の不安はさておき、試合はまだ続いている。龐徳の異様な殺気に圧され気味の馬超は、中々仕掛けられずにいた。
「先輩、逃げるんすか?」
「そんな筋肉女出たら、誰だって逃げるでしょうが」
龐徳の両腕はゴリラのように変形しており、中々に酷い光景だった。
「幻影陣で決める」
馬超の体が一瞬にして三体に増えた。実際には速すぎるがゆえの残像に過ぎないのだが、ただでさえ動きが鈍くなっている龐徳には、非常に脅威だった。
「はああああ」
馬超の槍が龐徳の額を思い切り突いた。彼女はバランスを崩してそのまま後ろに倒れると、そのまま苦しそうに呻いていた。体が重いせいか、一度でも倒れると自力では起き上がれないという欠点があった。
数分後、いくら努力しても自力で立ち上がることができなかったために、この試合は馬超の勝利に終わった。続く第三試合も、最早二敗して、士気も最悪な聖・五米学院は、そのまま敗退した。すなわち、成都高校の勝利に終わったのである。
その次の試合、別の他校との試合にも勝利した成都高校は、いよいよ地区大会決勝戦、許昌高校との決戦へと進んで行った。




