劉備覚醒
「成都高校対江東高校、第四回戦開始」
審判の号令とともに、劉備と孫権は真っ直ぐと互いに向き合い対峙した。言い知れぬプレッシャーが劉備の肩に重くのしかかる。この試合で勝てば、とりあえずは成都高校の予選通過である。しかし、それゆえに、周りの真剣な眼差しが、彼には恐ろしかった。
「さあ、来なよ」
「へへ、あんまりゴリラ女は好きじゃないんだけどよ。運動で鍛えたムッチリした体も嫌いじゃないぜ」
劉備は剣を抜くと、孫権の元に向かって走った。
「悪いけど、あたしだって、あんたなんか嫌いよ」
孫権はポケットから鉄の玉を取り出した。それは手の平に丁度収まる大きさで、彼女はそれを地面に向かって放り投げた。
鉄の玉は地面の上でベーゴマのように回転していた。劉備にはそれが何を意味しているのか分からなかったが、何か恐ろしい謎めいた力を秘めていることが、本能で理解できた。
「何だよそれ・・・・」
「見てのお楽しみ」
鉄の玉はそのまま回転を強めて行くと、突然地面を凄まじい勢いで掘り出した。そして地中に埋まると、そのまま地面の下を回転しながら進んで行った。
「左目は閉じておいた方が良い」
「え?」
次の瞬間、地中から鉄の玉が飛び出して来た。そして劉備の顔面に向かって飛んで行くと、そのまま彼の左目に激突し、さらにグルグルと回転を続けていた。
「ぐあああ」
左目から火が出そうだった。鉄の玉は凄まじい勢いで回転するため、劉備の左目の皮は剥がれ、摩擦により熱を帯びている。彼は回転している玉を右手で眼から引き抜くと、それを地面に向かって投げつけた。
「はあ・・・・はあ・・・・」
鉄の玉は地面に落ちると、そのまま真っ二つに割れて動かなくなった。
劉備の身に起きた異様な光景に関羽達は呆然としていた。黄忠も張飛も何も言わない。しかし関羽だけは何かを知っているようで、静かに様子を見守っていた。
「げほ、クソ・・・・」
「あははは、どうやら練習の成果はあったみたいね。お姉さまの言うとおりだ」
「あん?」
「あんたは知らないようね。ならばこの勝負は私の勝ちよ」
関羽は劉備から視線を離すと、静かに眼を閉じて語り始めた。
「あれは「気」の力だ。まさか孫策以外に使い手いたとはな」
「気?」
「ああ、一応私も使えるが、まさか部長クラスの人間以外で使い手がいたとはな」
劉備は剣を握り締めると、再び孫権に向かって走った。
「無駄ね」
孫権は再び鉄の玉を地面に向かって投げた。鉄の玉は先程同様に、地面の中に潜り込むと、そのまま劉備の顔面に向かって飛び出して来た。
「この俺が同じ手を喰うかよ」
劉備は剣を野球のバットのように持つと、鉄の玉に剣の根元部分をぶつけた。
「うおりゃああああ」
鉄の玉は剣に弾かれると、孫権の体に当たった。バリバリという音とともに、孫権の着ていたユニフォームが破れてしまった。
「ひあああああ」
素っ裸になった孫権は両手で胸を押さえて蹲った。小麦色の肌に、ブラとパンツの部分だけが黄色くなっていた。
「俺の勝ちだな」
「勝者、成都高校、劉備選手」
それは成都高校の優勝が確定した瞬間だった。




