未来が映るテレビ
太郎は電子回路に詳しい。いろいろな電気製品を組み立てたり、修理したりする能力を持っている。また、物理学に関しても並みの大学教授以上に知識がある。
最近手に入れた壊れた真空管のカラーテレビを修理している際に、真空管内でタキオンと電子が相互作用を持つことを発見した。
「やった、これで『未来テレビ』を作ることができる!」
太郎は興奮しながら、全く新しい能力を持つテレビを作り上げた。何と、未来を映すことのできるテレビである。
まずは30年後の自分の部屋を映してみた。そこには、見たこともない薄型のテレビが映っていた。
「やっぱり、オレの予測通り、今のように厚みのあるブラウン管を使ったテレビではなく、壁に掛けることができるような薄型のテレビが普及するんだな」
ただ、部屋の様子からは、どう見ても女性が住んでいるようである。
「まあ、30年後だから、オレも結婚して、娘の部屋になっているかもしれないな。あるいはオレたちは引っ越して誰か別人が住むことになるのかも」
太郎の父は彼が幼い頃に事故死し、その後、母が女手一つで最愛の一人息子である太郎を育て上げた。太郎は母に深く感謝しており、大切にしてあげたいと考えている。
「まずは、お母さんの心臓病を治してあげなければ」
太郎の母は重い心臓病を患っており、完治させるためには莫大な手術費用がかかる。
未来テレビが映すことのできる場所に普通の真空管テレビを置いた。その普通のテレビに映る画面を未来テレビで見ることによって、未来の情報を得ることができる。
「よし、これで株の動き、競馬の結果があらかじめ手に取るようにわかる。お母さんの手術費用もすぐに稼げるぞ」
早速10分後の未来を映してみた。
今、11時50分であるが、未来テレビに映っている普通のテレビの画面はちょうど正午の時報を鳴らしていた。
その時、未来テレビの画面の中の普通のテレビの脇にあるドアから、太郎の母が入ってきて、何かを見て非常に驚き、ショック死してしまった画像が映った。
1分後。
2分後。
3分後。
..略..
10分後。
太郎の母が彼の部屋に入ってきて見たのは、何かを見て非常に驚き、ショック死してしまった太郎の姿であった。