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オレンジ赤坂  作者: 雅弌
番外小話
52/60

りーちゃんと①


「お向かいに引っ越してきた者です。家族共々よろしくおねがいします」




8月20日。

オレの家の道路を挟んだ向かいに住んでいた人達がいつの間にか引っ越していて、新たな入居者がいた。

ここで再びコンラートこと諏訪部 慶介との再会だったらオレは発狂して家族の前で三位一体し、本当に戦争おこしていたね。家族の喧嘩で表現してる戦争なんかとは違う方の。


けれど新たな入居者は30半ばくらいの夫婦と、ウェーブのかかった可愛らしい髪型をした小学生くらいの女の子の3人家族。


旦那さんは怒っているのか拗ねているのか分からない感じの愛想のない人だし、女の子は言葉が途切れ途切れで人見知りの印象を与える。印象だけで実は強い子なのはよく分かっているけども。


初対面で人が好さそうなのは奥さんくらいで、穏やかな雰囲気がにじみ出ている。



ウチの母さんも引っ越してくた奥さんを一目で気に入ったのか「あらあらご丁寧に」と返して近所付き合いは良くなりそうだ。

てかすでにオバサン同士の長い話しが始まって玄関を塞いでやがる。



オレは今からコンビニに行くつもりだったのだが道を阻まれ…あ。女の子と目が合った。





「…よぅ、りーちゃん。突然だからビックリだよ」


「えへへ。驚かせ、たくて…。私たち、お兄さんの…監視として、来ました…」





はにかんだ笑顔が可愛らしく、背の低さから小動物みたいに感じる。

青峰さん、ウチの暴力姉ちゃんとそちらの小動物ちゃんを交換しませんか。

本気で相談したいです。






















もみもみ。もみもみ。

かなりくすぐったい。


けれど真剣な表情でもみしだかれ、止めろとは声高には言いづらい。




「そういや、りーちゃんの前であかみんになったのははじめてだったな」


「………」





青峰宅のリビング。オレはあかみんとなって、毎度黒井家のお世話になるのもアレだったので青峰さん家にお世話になる事に。


ニナからは「…あっそ」と冷たく返され、美菜子には「遠慮しなくていいのに」とにこやかに言われたが、今回はりーちゃんに是非来てくださいと誘われたので来た。


いやはや、一方的にお世話になるというのに黒井家も青峰家も嫌な顔一つせず受け入れてくれてありがたい。


…ほんと、何かお礼したいが何も思いつかない。




なんて事考えながらも状況を説明すると、今オレはりーちゃんに膝の上に腰かけられながら無言で胸を揉まれまくっている。


突然りーちゃんが膝の上に座っていいですか?と可愛らしく上目遣いで聞いてきて、ロリコン気のないはずの人間でも迷わずロリコンに走りたくなるような甘えられ方をされたら断れるはずもない。



身体はあかみんでも、変わらずオレを慕ってくれるとか嬉しくて仕方ないね。


しかし、りーちゃんがオレの膝に座り…頭の上にオレの胸が乗っかってしまったのだが、そこで態度が豹変する。

最初はビシャァッ!と雷が落ちたみたいにりーちゃんの身体が硬直し、その後怖い表情をしながら身体を横に向けてオレの胸を揉みしだく。


…まぁ、アレだよな。

ニナと一緒だ。


あかみんの胸のせいで自分の胸にコンプレックスを抱いてしまったんじゃないだろうか…。




「…お兄さん、はお兄さん…なのに、この胸は…ズルイ、です…」


「いやまぁ、オレであってオレではないんだが…」


「私は、こんなにも…アレ、ですのに…」





自分の胸元を覗き、どこか悲しそうに言うりーちゃん。


何気なく聞いたのだが、りーちゃんの年齢は10歳。成長期もまだなのだから仕方ないと思うのだが…そういう問題ではないのか?





「と、とにかくりーちゃん!何かして遊ぼうぜ!何かやりたい事とか…なんだったら買い物とかに外行ってもイイし!」


「あ…」





このままではもげるまで胸を揉まれていそうだったので無理やりにでも話題を変えようとする。


するとりーちゃんは何かを思い出したようにオレの膝から立ち上がり、TV横にある棚から一つのケースを取り出した。


………おいおい、マジか!?





「あ、あの…コレ、で勝負…しま、せんか…?」


「なぁなぁりーちゃん、勝負するのはイイんだが、そのチョイスは…」


「え…な、なにか、おかしい…でしょうか…」





りーちゃんは心底不思議そうな顔をしているが、彼女の手にしているケースは…クラスに一人はいる洋ゲーマニアの家で見かけた事のある対象年齢の場所にR-18Gと描かれたゲーム。

グロさでR-18をとるFPS。主人公視点で銃を持って相手を殺害していくゲームだった。



………小動物のようだと思っていた女の子の中身は獅子をも喰らいつくしそうな肉食動物だったよ。





「その、他にゲームないかなーって。何だったらオレの家…は今あかみんだから無理としてもニナの家から借りて来てもイイし…」


「わ、わたし…コレ、で勝負…したい、です…。それ、にこの…ゲーム…ドバー、とか…グバァー、って…面白い、ですよ…?」




そのドバーって血でグバァーって妙にリアルな悲鳴だよね?撃たれたタイミングや部位で悲鳴が変わる様が妙にリアルってクラスにいる洋ゲーマニアが語ってたぞ…。


しかし今そのゲームを誘ってきているのが小動物ことりーちゃん。

オレが乗り気じゃないのを見ると、凄く寂しそうな表情に上目遣いで見つめてくる。


いやしかしな、そのゲームはR-18でりーちゃんの歳ではやってはイケない規制がかかっているゲームなんだ。

そりゃ、オレもニナの家では未成年でもビール飲んだりしているけどりーちゃんはまだ10歳。


これからのりーちゃんのためを思えば、自分の事を棚に上げてでも心を鬼にして年上らしく叱ってやらねばなるまい。


例え涙目で『ダメですか…?』と上目遣いで懇願されても絶対に…!





「…よし、りーちゃん。友人の家で少しはやった事あるからオレはそう簡単に負けないぞ?」


「は、はい…!」





凄く嬉しそうに微笑むりーちゃんの笑顔。この笑顔を見るためだったらオレは何だってしてしまうかもしれない。



ちょっとしのやんダメダメじゃん!年上らしさは何処に行った!?

うっせー!りーちゃんの上目遣いに勝てるならサッカー部の野郎共を怒鳴った時みたいに表出ろや!





「あ、あの…。じ、自信あるなら…賭け、しません…か…?」


「賭け?」


「負けた方が、何でも…いう事を、聞く…とか…」






ふむ。りーちゃんもそういう賭けとかするのか。

けど、こちらには大人気もなく実践的な訓練を受けたエー君がいる。


スパイなエージェントと言うからには射撃訓練も受けているだろうし、記憶喪失のくせに銃の名前は覚えていたりするようなヤツだからかなり強いはずだ。


三位一体ほどにないにしろ、エー君の補正を受けるオレはそれなりに強いだろう。

しかも相生の家でやったような格ゲーとは違い、妙にリアルなFPSだ。



しかし年下のりーちゃんから賭け勝負を申し込まれたのに無下にするのもアレだ。


かといって一方的な勝負になるのもアレだから、それなりに加減しなければ。




しのやんさっきからアレアレって子供っぽい。まぁ言いたい事が分からんでもないが。


りーちゃんにそれだけ気を遣ってるって事さ。



オーケイ。やろう、と返事し市販ではあまり見かけないゲーム機のコントローラーを握った。




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