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オレンジ赤坂  作者: 雅弌
番外小話
51/60

相生と


8月17日。


今日は久しぶりに相生の家に遊びに行った。

最近は身体があかみん化したり、バイト探したりで忙しかったのだ。


特にバイト探しが大変で…男のオレとあかみんとでは見た目も性別も違うものだから、身体が変わるとバイトに出られない。

しかも自分では制御できないのだから…突然休むバイト。しかも度々なんてクビにされるのが目に見えている。


何気なしにりーちゃんにメールで愚痴ったら何故かりーちゃんパパからの返信があり、バイト先にアテがあるから連絡を待てと返事があった。

アテ…ねえ。流石に変な実験で身体と脳が云々なんてあまり言いふらせないのだが大丈夫だろうか。



大人だし、信頼したいのだが直後に『お父さんなんか嫌い!勝手にメール見るし、いつも―――』とりーちゃんからメールの返信があった。

少なくとも娘からの信頼は得ていないっぽいが。



りーちゃんのメールは口にするのと違って途切れないから見やすい。

けど、たまにはりーちゃんの声を聴きたいのだが電話はダメです!と断られた。


自分の途切れ口調、気にしてるみたいだからな。

そういえば旅行の終わりにりーちゃんママが言ってた監視ってどうなったんだ?全然監視されてる気配もないし、エー君も気が付いていない。


まだ準備中で監視されていないとかならともかく、エー君も気が付けない監視だったら怖すぎる。




…と、今はりーちゃん一家やバイト、監視の事より相生だ。

一番親しい友人でオレとは違い落ち着いた男。


赤いフレームのメガネが印象の、アイドル好きの趣味の合うヤツだ。



けど、相生がアイドル好きって印象は見た目からは伝わってこないよな。

どちらかというと委員長タイプでクラシックとか聞いてそうなイメージ。


けど、それは見た目だけで根っこからのアイドル好きで掲示板等でもアンチに対して激しく言い争うほどの信者っぷりを見せる。




「お待たせ、レモンティーでイイよね?あ。この間NBEのライブDVD買ったんだけど見る?」


「お、おぅ。そうだな」




レモンティー…。エー君が拒絶反応で頭痛を起こすから最近は飲んでないが元はオレの好物。

最近はあかみん化で黒井家に世話になりっぱなしだが、その前はよく相生の家に遊びに来ていた。なのでオレの好きな飲み物が相生の家に常備されている。


ライブDVDも…オレが見たいけど金がなくて買えないとぼやいていた物だ。

相生なら元々買っていたとは思うが真っ先にそれを話題に出す辺り気遣いのできるヤツで…ほんと、オレには良すぎる友人だ。



そして…何も言ってこない。

相生からしてみれば最近のオレはあきらかに様子がおかしい。


それでもオレからは何も言わず、けれどいつも通りに接してくる。


サッカー部の連中のように薄情なのではない。

敢えて何も聞かず、オレに都合の良い日常を提供してくれるのだ。





「なぁ…相生」


「なんだい篠崎くん?あ、DVD見終わったら久しぶりに格ゲーやろう!なかなか遊びにきてくれないから使用キャラが増えちゃって対人で試したかったトコロなんだ」




相生はにこやかに言って…楽しそうだ。

ちょっとばかり心にグサリと来る事を言われたが、オレを歓迎してくれている。


だとしたらオレは…どうすればイイんだ?


オレやあかみん達の事情を説明するワケにはいかない。

だからってこんなにイイ友人を騙すような、誤魔化すような事をしているのが心苦しくなる。




「…いや、何でもない。オレも格ゲーで使用キャラ増えたんだ。今日はとことん楽しむぞ!」




何でなにも聞かないんだ?とか気を遣わせてスマンとか…何でもいいから一言いいたかったが言葉に出ない。

オレは何がしたくて相生の家に来たんだろうな。


相変わらず考えなしだなと、あかみんとエー君が呆れている気がする。















ライブDVDを相生宅のリビングのある42型の大きいTVで、音量大きめにして視聴する。

相生の両親は仕事だ。だから近所迷惑にならない程度に大音量。


オレも相生もソファーに並んで飲み物や菓子を机に広げて視聴する。




「コレ―独り言なん――どさ」




隣に座る相生が喋りだす。

しかしライブDVDは一番盛り上がって歌っているところだし、音量が大きすぎるせいでしっかりと伝わってこない。


いや、伝わらせるつもりがないのだろう。




「まっ―く、篠崎く―は心配ばかりか―るよね。――部活は辞めるし、夢の――だったあかみんと付き合――るとか…。しか――僕は見てい―いけど実在し――まに街中で見かけ――たいだし」




やっぱ…心配かけるよな。

けれどこんな風にしか言えないなんて、相生も意外と不器用なんだな。




「僕―とって友人は間違―を正してあげ――じゃなくて、一緒に間違え――げる物だと思っ――るんだ。間違いを正す――親や教師といった人――役目だと思うから」




相生の言葉は大きすぎる音量のせいで伝わってこない。

けれど…オレにはできすぎる程の友人の気持ちはしっかり伝わってくる。




「だから、もし君が――ってたり大変な――あっていても僕は――言わない。薄情かな?けど――分、僕は絶対に友――を見捨てない――。君が僕を切り捨――い限り…いや、切り捨て――ても君の友人で――続けようと思うよ」





ライブの音楽が収まり、次の曲のイントロが入る。

さっきまでと比べて静かだ。今なら言葉が途切れさせられる事なく会話ができるだろう。




「…ん?どうしたんだい、篠崎くん?」


「いや…」





オレの周囲の人間はどいつもこいつも優しい。

いつだっていろんな人に支えられながら生きている。


けど、相生がここまで不器用だとは思わなかった。

苦笑が漏れて、止まらない。




「変な篠崎くんだね。あ、この曲でセンターを結城ちゃんがやるんだけど――」




再びライブに歌が響き部屋も音量でいっぱいになる。

相生の言葉は再び遠くなる。

けれど今度はしっかりと、聞こえて来た。




「けど、心配してる事に違いはないんだ。終わった後に笑い話としてで良いから聞かせてほしいね」





そうだな。いろんな事にケリがついたら相生には全部を話そう。

誤魔化しも何もなく、感じた事から何まで全部。



ただ、たまには格ゲーで手加減してくれよな。

ライブDVD見終わった後の格ゲー大会では、オレはエー君の反射でかなりパワーアップしたはずなのにHPゲージが半分も減らせなかった。


エー君は驚きプライドを刺激されたのか三位一体するぞとか言いたげにして、あかみんに男って馬鹿ねと呆れて。


いつかオレの友人たち全員揃って遊びたいな。

どいつもこいつも、オレ以上にお人好しで優しい連中だからきっと仲良くできるはずだ。



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