コンラート
雷を帯びた刀が斜め下から振り上げられる。
オレがもう動けないからって、大振りだな。
けれどオレを…エー君をなめるな!
『………!?がっ!?』
オレにとっては夢だからコートの男の声がしっかりと入ってこない。まるで受話器を通した音声電話みたいな音で耳に入ってくる。
コートの男は…長刀を、身体を反らされる事で避けられ更には靴を脱いだ右の素足で蹴り上げられる。
そのままオレは左足の靴を脱ぎ、地面に足をつくと凍らせる可能性があるので棒を突き足場の変わりにして、そこから飛ぶ。
そのまま屋上の扉横の壁に張り付き、棒を魔法弓へと変換させる。
そして魔法矢を――――放つ!
コートの男は後ろに跳び下がり、矢は当たらない。
しかし目的はコートの男ではなく…床。
魔法で広がった水と凍りを魔法矢で吹き飛ばす。少なくともコレで一時的には床に水気がなくなり地面に足をつく事ができる。
地面に足をつけたオレは再び魔法矢を放つ。
しかし、魔法矢はコートの男の斬撃…風魔法に飲み込まれ消え去る。
それどころかこっちに向かって襲ってくるが…遅い!
エー君が風魔法の動きを把握し、どう動けばイイかオレが足に伝える。
風魔法と床のギリギリの隙間。
そこをスライディングで避けながら一気にコートの男との距離を縮める。
そのまま勢いに任せ起き上がり、魔法弓を棒に戻し横凪ぎに打ち付ける。
けれど相手も流石、とんでもない速さで長刀を振りかざして弾き返してきた。
そのままオレはバランスを崩すが、崩した体制のまま棒を再び魔法弓に。
そして魔法矢を放つ。3本ほど連続して矢を放ち、2本が弾かれるが1本が顔に…右目の付近に当たる。
『ぐぁっ!?』
コートの男が苦痛に声を絞り上げる。
そのまま間合いを詰めて、魔法矢の短剣でトドメを…!
ターン!
………。
………………。
静かな銃声が、屋上に響き渡る。
オレは腹部に手をやると、ドロっとした気持ち悪い液体が流れていた。
身体を捻って背後を見れば…相変わらず顔は見えないが白衣を着て、体格から女だと分かるヤツがいた。
女博士の手にしたリボルバー銃から煙が上がり、こちらに銃口が向かれている。
…そうか、オレたちは撃たれたのか。
痛みに意識が飛びそうになり、そのまま仰向けに倒れる。
身体を捻った状態で倒れたので足が変な方向を向いているが。
『コンラート。貴方ほどの人が追い込まれるなんてね。カレ、強かった?』
『…どう考えてもカレ、で表現できる男ではないだろう。反射神経、魔法弓。そしてそれをまとめ上げる存在。少なくとも3人、後から入っている』
『入っている?このカレにはあの実験をほどこしてはいないわよ?それに実験自体は成功例が…』
『知らん。オレは科学者ではない。この状況を調べるのはお前たちの仕事だろう』
『…そう。けれどカレはここで殺さなくちゃいけない。そう命令が下っているの』
『ふん…。まぁオレは実験なんてどうでもイイ。殺せと言えば殺す。捕まえろと言われれば捕まえる』
足音が近づいてくる。
動けないオレの視界に右目を押さえたコートの男…多分名前はコンラート、が現れた。
『目に物理的怪我はない。しかし魔法の影響か視力が奪われている』
何故それをオレに言う?
『術者を殺せばオレの視力は戻るだろう。しかしお前たちはここにいて、ここにいない』
コンラートは目から手を離すと両手で長刀を持ちオレの額に…脳の前に刃を向けた。
『お前たちを殺す。視力が戻ったとしてもオレのプライドが戻らん。3人とも必ず殺す。覚悟しておけ』
オレたちは負けた。後ろからの不意打ちがあったとはいえ負けた。
オレたちは、名前も知らないオレを助けてやる事ができなかった。
人生が生きるか死ぬかで勝ち負けが決まるなら、あきらかな負け。
『…オイ』
『………?』
口が動いた。しのやんだ。
『オレはお前たちを許さない。実験も、オレを殺す事も…なにもかもだ』
『そうか。…で?』
『実験も、お前も潰してやる。だから…覚悟しておけ』
…相変わらずの考えなしだなぁ。特に何をするか決めたワケでもないのに、覚悟だけ先に決める。
『ハハハ、面白い!どちらが先に潰されるか勝負といった所か!』
それ以上の会話はない。頭に刀を突きさされた。
痛い。吐きそうだ。頭痛が激しい。熱い。溶けそうだ。
そのままオレたちの意識は熱にうなされながら闇へと消えていく。




