夏の大会
翌日。オレの身体はあかみんのままだった。
旅行の準備は…元々黒井家にお世話になりっぱなしな事もあり私物が散乱していたので用意はすぐできた。
日程も一泊二日だしな。それほど荷物はいらないし、細かい準備はニナにまかせて…。
オレは、サッカー大会の試合会場に足を運んでいた。
別に未練があったワケじゃない。
けどオレのオレたちのだ選択から捨てた物とはいえ、世話になり仲間ともいえる存在だったヤツらの勇姿を見たかった。
ちなみに我らが学校のサッカー部の強さは…どちらかといえば強いっていう程度の物だった。正直な評価としてな。
市内大会では準優勝と優勝を交互に繰り返すが夏の大会ではだいたい…3回か4回勝って終わる。
だが決して弱いワケではない。だからこそ部員も今年こそはと気合十分だ。オレもその一人だったしな。
…と、見つけた。会場はサッカーの他に陸上やテニスのコートもある広い場所だが元々試合場所は聞いていたし問題なく発見だ。
それにしても、暑い…。サッカーやってる時は少しは気が紛れたが見学は辛いな。
恰好はせめて涼しげにといつも通りだがショートパンツにあかみんマイブームな肩無しのパーカー。露出が多くて涼しいね。
色は思い入れのある、紫のヤツだ。
あかみん本体が最後に着ていたヤツで、同じ物を発見した時はなんとも言えない気持ちになったが前とは違うんだと決意表明の意味もありで購入した。
ある意味…勝負服でもあるかもな。
あ、そういえばちゃんと日焼け止めもしてきたよ。あかみんの白く綺麗な生足が黒くなるの嫌だったし。やはりあかみんのためなら面倒な事も我慢して気を遣えるぜ。
「篠崎の病気は大会に間に合わなかった!けど、アイツがいつ戻ってきても大丈夫なように勝ち残るぞ!」
「「「おお!!!」」」
コウさんの…いつも通りな大きく高い声が響き渡って聞こえてきた。
試合の前から気温の暑さで汗をかいているがそれでもカッコイイ。やはりイケメンはずるい。
…それはともかく、オレの事は部員に伝えなかったのか。
試合直前にするような話しでもないし、コウさんの胸にだけ秘めて。
昨日はアレから結局連絡もなかったし、どうなるかと思ったが…。
「ま、最近休みがちなのにレギュラーやアレってのもなー」
「いくら動きがよくなって、コウさんの推薦もあったからってなー」
そんな事を言っている連中も、いる。
やはり陰口は聞いてて気分が良くないな。
けどさ、お前ら。ここにいないヤツの事を考えるよりもっと大切な事に気が付けよ。
陰口が大嫌いで、どんな最悪なヤツの事でも「そんな事言うな!」と爆発するように騒ぎたてる人が今日は静かで様子がおかしいじゃねーか。
オレと違ってお前らはそこに立っているんだから気が付けよ。なんで気が付かないんだよ。
そんな事を考えていたら適当に周囲を見回していたコウさんと目が合ってしまった。
「おや、あなたは昨日の!」
「ど、どうも…」
「せっかく見に来てくださってんですが、残念ながら篠崎はいないんですよ!…もしかして、何か知っていたんですか?」
小走りで近寄ってきたコウさんの言葉は、後半だけコウさんらしかぬ小声だった。
…オレのせいだろうけど、やっぱ今日はコウさんらしくないよな。
変に影響しなければ良いのだけど。
「まぁ…様子が変というかこうなるかも的な?今日はなんとなく見学に来たんです。…私、サッカー好きですから」
どうにか、それだけは答える。
いつも通り誤魔化してるところがあるが、せめて嘘はつかずに。
「そうなんですか!是非楽しんで見て行ってくださいね、俺達頑張りますんで!」
「はい…。アイツの分も頑張って暴れてください」
コウさんは再び小走りでオレの側から離れる。
…やっぱ、無理してる感じがなんとなく伝わってくるな。
あまり変わんないように見えるけど、さ。
そこまでオレなんかを信頼してくれていたのか…?
けど、他の部員はコウさんの事を全く気にしておらず…。
「やべ、あの子可愛くね?」「コウさんの彼女?」「篠崎がどうって…」「なんとなくフリーっぽいな」「つーかハーフなのかな?髪綺麗じゃん」
オレを見てそんな事ばかり言ってやがる。
てめーらオレ達のあかみんを厭らしい目で見てるんじゃねーよ。しのやんはどうなのスミマセン人の事言えなかったかも厭らしい目で見てたの!?
自分の身体だが自分の言葉に少し悪寒というか心配になってきて身をよじりたくなった。
そんな感じの事がありながら時間がすぎて試合開始となった。
やはりというか、少しは予想していたがコウさんの動きが悪い。
チームの司令塔で中心でもあるコウさんの動きが悪いとチーム全体も悪くなる。
けど、誰もコウさんのフォローをしない、できない。
コウさんが凄いプレイヤーが故に、崩れるのを想定されていない。
そのまま試合はぐだぐだと進み…。
ウチのサッカー部は1回戦で敗退した。




