新谷 浩太
「あの、君!ちょっとイイかな!?」
「!?」
罪悪感に打ちひしがれていたら、背後に人が寄って来たのに気が付かなかった。
…けど、この声は聴きなれた声だ。振り返らなくても分かる。
確認するまでもなかったが振り返ってみれば、やはり予想通り。
爽やかな黒髪の短髪にイケメンスマイル。服装は見慣れたウチの学校のジャージで、オレが着ると何故かニナは不機嫌になるが、イケメンはジャージでもカッコイイ。
…予想できたかもしれないが、そう。この人こそ我がサッカー部のキャプテン。新谷 浩太さんだ。
「お、おぉう…!」
「えっと…」
「…あぁ、すまない!篠崎という男を探せてしているのだが知らないか!?あ、それだけじゃ分からんか!この集合写真のこの男が篠崎だ!」
何故かコウさんはオレを見て言葉に詰まったが…あぁ、ハーフなあかみんを見慣れてなくえ少しビックリしたのか。
普通に街中で赤い髪とかしてる人みたら、変にド派手な日本人だと思うもんな。
けど、それ以外は普段通り。
ニナに会った時も勢いが凄いと思ったが、この人の勢いも大概に凄い。
勢いの意味も違ってくるな。
ニナの場合は相手を観察して、畳みかけるような勢いがあるのだがコウさんは…常に爆発してるような感じだ。
しかしただの落ち着きのない人とは思うなかれ。
サッカーをやっている時だけは人が変わる。
見た目的にはいつも通り爆発しているのだが、的確なパスや指示。シュートも決める司令塔なMF…ミッドフィルダーだ。
本来MFなんて地味とか一番走り回るだけと言われてしまう事もあるが、この人のMFは漫画みたいに凄い。
特にパスが凄くて、敵に囲まれた時も咄嗟に素晴らしいパスを出してくれる。
…ついこの間までオレはそのパスに反応できなくて、せっかくのパスが無駄になってばかりで準レギュラーだったワケだが。
「…今日は見てないかも」
「む?篠崎の知り合いか!?」
オレの台詞は嘘ではない。
写真で指差されたオレの顔は普段から見慣れた顔だが、今日は朝から鏡でもあかみんの顔しか見ていないからな。
「何か篠崎が困ったそぶりとか見なかったか!?何かしら問題に巻き込まれているのは確かなのに気が付いてやれなかったなんてオレはキャプテン、仲間として失格だ!」
「も、問題?」
「うむ!先程、相生という篠崎の友人にあって確かめたのだが篠崎が学校や部活を休んだ日、アイツの顔を見た者が誰もいないのだ!」
「………!」
ヤバい、そんな事まで調べられたのか…!
でも、相生からは何の連絡もないな。
…あいつもオレには不釣り合いなくらいできた友人だからな。
むしろ前々から何かおかしいと気が付いてはいたがオレが何か言うまで黙っててくれようとしているのかもしれない。
「部活内でも学校外で彼女ができて浮かれているのではないかとの声もあった。確かに部活後に彼女とデートした場面を見た者…実際、俺も見かけたが部活を休んだ日はそれすらも見かけないのは何かおかしい!」
…彼女?もしかしてニナの事か?
アイツは友人で、日頃から世話になってて頭が上がらないから普段もアイツの呼び出しにかけつけていたりしただけなのだが…。
「しかし篠崎は最近休む事があったり部活後残る事がなくなった分、練習時間内の頑張りっぷりが凄かった!その成果もあってか俺のパスも通るようになりレギュラーとなった!明日からはせっかくの大会なのに問題をかかえてサッカーに専念できないとは可哀想だ!」
くぅ…!その純粋な信頼と心配が心にグサグサと槍が突き刺さるように痛い…!
パスが通るようになったのもぶっちゃけあかみんやエー君のおかげだし、正直ズルみたいな物だ。
流石に3人の脳を同時に動かしての全てがスローモーションに見えるヤツとかは使っていないが…。
それでも、ズルはズルしている気がする。
だってオレは2人を受け入れた事で生活や感覚が変わったが…オレ自身が成長したワケではない。
「オレばかり喋ってしまったが、何か知っている事はないか!?何でもイイから知っている事があったら教えてくれ!」
コウさんはいつも純粋にオレを信頼し、心配してくれる。
その信頼に答えられないのは…今も前も変わらないな。
コウさんのパスが取れなかった時も、それでも準レギュラーに置いて試合に出させてくれた信頼に答えきれなくてモヤモヤしたものだ。
…だけど、コウさんからの変わらない信頼を身をもって感じた事で決心がついた。
それでいいんだね?それでいいんだな?それでいいんだよ。
オレ自身は何も変わっていない。あかみんボディ化も関係なく、オレはコウさんの信頼に…答える事ができないのだから。




